
全国で今、田植えが始まっています。去年はコメ不足で田植えの前から買い付けが殺到し、コメの価格が高騰しました。では、今年の新米価格はどうなるのでしょうか。
【画像】天井まで届きそうなコメ袋の山 岐阜市の卸売業者倉庫に保管された在庫
今も3000円台 コメ異変
東京・板橋区にあるスーパー「マルヤス高島平店」では、コメ袋が山積みとなっていました。銘柄米は税込み3000円台となっています。
客
「3000円超えていると高いと思うけど、それくらいでしか売っていないので買っている」
客
「(高い時は)買っていなかった。控えたりとか安いの探していた。(3000円台なら)まだどうにかって感じ。(新米については)買いやすくなると良いけどね」
「令和のコメ騒動」から2年。現在、スーパーでの平均価格は3796円と、2年前の倍近い高い水準が続いています。
今年の新米価格はどうなるのか。田植えシーズンを迎えている産地では、ある異変が起きていました。
去年から一転 連絡が…
国内有数のコメどころ、新潟県上越市。去年の同じ時期、コメ農家の保坂一八さん(グリーンファーム清里・会長)のもとには、新米を求める問い合わせが殺到していました。
「今まで取引のなかったおコメ屋さんから『コメあったら何とかなりませんか』という問い合わせはありました。個人の1年に2俵か3俵、5俵程度のお客さんならいいけども」
田植え前の茶色い田んぼのころから来ていた、新米を買い取りたいという問い合わせ。しかし、今年は一変、そうした連絡はピタリとやんだといいます。
一体なぜか?それはコメ余りの状況が続いているからです。
「国や農業再生協議会からは、おコメが余っているので、主食用以外のおコメに転換してくださいと」
保坂さんの会社が保有する200ヘクタールの田んぼのうち、去年は190ヘクタールを主食用米、残りを飼料用米にしましたが、今年は主食用米の作付けを減らし、飼料用米や酒米の生産を増やしています。
増産を巡り二転三転の政治
石破茂総理大臣(当時)
「生産量の不足があったことを真摯に受け止め、今後の需給逼迫(ひっぱく)に柔軟かつ総合的に対応」(去年8月)
猛暑などでコメの生産量が減少したことや、農林水産省の需要見通しの誤りなどから始まったコメ価格の高騰。
「『コメを作るな』ではなく、増産に前向きに取り組める支援に転換を致します」
去年8月、当時の石破政権は農業政策の歴史的な大転換をし、コメを増産することで価格を下げる方針を示しました。
しかし、その2カ月後…。
鈴木憲和農水大臣
「マーケットの中で不足感があれば、現場で増産をする。そして供給過剰であれば、逆に生産を抑制していく。これが需要に応じた生産だと思います」(去年10月)
鈴木農水大臣が就任すると、石破前総理が掲げた増産から一転、需要に応じた生産を基本とする考えを強調しました。
生産者が感じるコメ余り
保坂さんは去年「需要に応じた生産」にしなければ、コメ余りに陥ると予想していました。
「日本中のコメ農家が、じゃあ目いっぱい作ろうとなった時に“コメ余り”になってしまうようなことも考えられます。経営の安定性がなかなか取れない」(去年5月)
現在の状況は…。
「政府のほうがコメが足りないから備蓄米を放出しますというような形だったんですが、よくよく見てみたら、平年通りに取れていたと。この6月末には、今までにないようなコメがだぶつく、余るという状況ですよね」
コメの在庫が多くある中、保坂さんの懸念は新米の価格です。
例年、保坂さんは作る分の販売契約を作付け前に済ませていますが、価格は決めていません。
「東京都内のおコメ屋さんに納品させてもらったり、あと県内の卸さんに入れたり、1月に品種と数量については契約しています。ただ、値段については決めていない。お互いの信用の中で、ここ10年20年やってきていますので」
農協が出す価格を見て決めるといいますが、そこには在庫量も影響してきます。
「(今年の新米価格は)たぶん暴落するんじゃないか」
一方、イラン情勢などの影響で、生産コストは上がっています。
「すべからく上がっているんですよ。人件費もそうですし、コメを入れる袋から始まって、肥料だとか農薬、そして機械等々。おコメ1俵あたり2万円前後は当然経費でかかっている。経営的には心配の種が尽きない」
コメ在庫 過去10年で最大
さらに、新米が出る秋を待たずにコメの価格が下がる可能性もあります。
天井まで届きそうなコメ袋の山。これは卸売業者の倉庫に保管されているコメの在庫です。
コメの民間在庫量はここ10年ほどで最大の277万トンになっています。
卸売業者「ギフライス」 恩田喜弘社長
「高いコメは売れていきませんので、少しずつ残ってくる。4月末では(在庫が)4万3000俵くらい」
高値で仕入れたコメが売れず、去年の同じ時期と比べ、在庫は2倍ほどに。価格も暴落しています。
「(60キロ)3万8000円ぐらいだったものが今、2万円前後になっている。損をして安くしない限りは売れないですね」
新米が出る秋までに在庫を減らそうと、今年に入りすでに損を覚悟で販売。その結果、1月から3月の間で約1億5000万円の赤字に。
「損してでも、高い(令和)7年産を少しでも早く消費(販売)したい」
大規模増産に踏み切るワケ
一方で、コメの増産に力を入れる大規模農家もいます。
秋田・大潟村で90人の農家と共にコメ作りをしている涌井徹さん(大潟村あきたこまち生産者協会・会長)です。
「去年足りた、今年余ったで農業政策を決めるのではなくて、明らかに増産に向けたかじを切らないと」
コメ余りによる価格の下落も考えられる今、なぜ増産に踏み切っているのでしょうか。
「東西1000メートル、南北700メートル、約70ヘクタールが去年から開墾した所。大きな小屋のこっち側ですね。去年と今年(拡大した)」
100ヘクタールだった農地を倍に迫る170ヘクタールに増やした涌井さん。その増やした農地で今年から本格的に始めたのが…。
「これはね“じかまき”なんですね」
「(Q.これ植えてあるんですか?)そうそうそう」
これは「乾田直播(かんでんちょくは)」と呼ばれ、水を張らない乾いた田んぼに直接、種と肥料をまく栽培方法です。
さらに、ビニールハウスで育てられていたのは、水田用の苗です。
「これが密苗のあきたこまち。これが普通の苗のあきたこまち。(苗の量が)倍は違う。普通の苗が1箱120~130グラムまきます。密苗は1箱250グラム以上まく」
従来の2倍の密度で苗を育てる「密苗」という方法です。箱の量が半分で済むため、田植え時間を短縮、より広い面積を作付けできるようになります。
さらに、本来は苗を増やすのに新たな育苗ハウスを建設する必要がありますが…。
「例えば全部やるのにこのハウス21棟ありますね。これを半分で済むわけ。全面積これ(密苗)に切り替えると、ハウスが半分に。箱苗を運ぶことも半分、植えることも半分に済む」
世界と競争できる価格へ
涌井さんがここまで増産に取り組むのには、ある理由があるといいます。
「2030年、今から4年後になりますよね。55万人が25万人になって平均年齢が74歳。(4年後)平均年齢74歳は農業してませんから、もっと減るわけ」
農水省の資料を元に涌井さんが作成した資料。2025年に55万人だったコメ農家がわずか5年で、半分の25万人に減少するという予測です。
涌井さんは今年のコメの価格だけを見るのではなく、5年後を見据えて、今生産をできるだけ増やすことが重要だといいます。
同時にこの5年の間で、世界と競争できる価格を実現し、販路の拡大を目指す方針です。
「需要とは作るもの。需要とは創造するもの。待っていても来ない」
需要はどのように拡大するのでしょうか。
「これがサキホコレで秋田県の一押しのコメで、パックライスです。海外の場合は炊飯器はなくても電子レンジはありますから、海外にいたらなおさらおコメを炊飯で食べるっていう工程がめんどくさいから、パックご飯で電子レンジでチンして食べられる状況を作りたい」
(2026年5月11日放送分より)
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