世界各国の企業が集まるサプライチェーン博覧会が中国・北京で開催され、今年はAI関連の展示に力が入れられている。現地の状況について、ANN中国総局の尾崎圭朗記者が解説した。
そもそもサプライチェーンとは、製品の原材料の調達から消費者の手元に届くまでの一連の流れ(供給網)を指す。この供給網の強化を図るべく、中国政府系団体が2023年から毎年開催しているのが同博覧会だ。
背景には、米国が経済安全保障を理由に進める「デカップリング(切り離し)」に対抗し、米国企業なども参加させることで国際的な供給網を維持したいという中国側の思惑があるとされる。年々参加規模は拡大しており、今年は85の国、地域、国際機関から670以上の企業や団体が出展し、関連企業を含めると1200以上に上る。今年新設された「AI特設コーナー」には、米半導体大手のインテルやエヌビディアといった企業のブースもあり、米国企業を取り込みたい中国側の狙いがうかがえる。
中国企業の中でも特に注目を集めたのが、会場の至る所で見られたAIロボット関連企業だ。来場者にコーヒーを注ぐロボットや、床に寝転んで周囲を和ませるパンダ型ロボットなどが展示されていたが、中でも目を引いたのはユニツリー(Unitree)社が製造したボクシングを行う人型ロボットである。パンチを繰り出す姿や、1歩ずつ近づいてから距離を保つ様子など人間の動きを忠実に再現。連続でパンチを受けると時にダウンするが、すぐに起き上がれる仕様となっている。機体の胸部には試行錯誤の跡としてパンチを受けた傷がボロボロに残されており、電力が供給される限り動き続ける。
また、不審者確保やパトロールを目的とした犬型ロボットも展示された。AIなどで不審者を特定し、網(ネット)を発射するシステムを搭載している。この網の発射システムには、航空母艦から航空機を発射する「電磁式カタパルト」の技術が応用されており、タイヤ式の足で位置を定めると、網を発射して1〜2秒足らずで対象者を捕まえる。網は強力で、一度かかると大人数人がかりでも取り外しに時間を要する。担当者によると、中国国内の一部警察などで既に実用化されているという。中国ではこうしたロボットの進化や実生活への浸透スピードが年々加速しており、北京市内では稀に犬型ロボットを散歩させる光景も見られる。
日本からも、日本貿易振興機構(JETRO)が25社を取りまとめて出展したほか、パナソニックや住友電工などが個別ブースを構えた。住友電工のブースでは、髪の毛ほどの太さ(0.125ミリメートル)の最先端光ファイバーを展示。現在は北米のAIデータセンターで展開されているが、今後は中国のAIデータセンターでの展開も目指しており、現地でも好反応を得ているという。冷え込む両国関係の中、中国市場に食い込もうとする日本企業の姿が見られた。
博覧会を視察した自民党の橋本岳衆議院議員は、日中関係の緊張が続く中であっても、今回の博覧会のような経済イベントを通じてスムーズに交流やビジネスができるようになることが重要だと指摘した。一方で、現地の日系企業関係者の間では、中国によるレアアースの輸出規制強化への不安が広がる中、日本の大手電機メーカーの日本人社員2名が中国当局に拘束されたニュースに動揺が走っている。複数の関係筋によると、この日本人社員の拘束を巡っては、中国が輸出規制を強化している「レアアース」を含む製品を国外に輸出しようとしたことが問題視された可能性が指摘されており、輸出規制への抵触が今回の日本人拘束という事態に繋がっている可能性があるという。
今回の博覧会は、外資系企業の中で米国からの参加が最も多かった。しかし中国政府は、博覧会が開幕した22日に特定の米企業への輸出規制追加や政府調達禁止を発表している。厳しい規制と厚遇という「アメとムチ」の措置を使い分けることで、サプライチェーンにおける世界の主導権を握りたいという中国側の思惑が背景からはみえてくる。
(ABEMA/ニュース企画)

