一方の中村八段は、深浦九段の先手雁木を予想しつつ、チームメイトとの相談で「そこまで(時間を)使いたくない」と方針を固めていた。「すごく(時間を)節約されたら嫌だな(笑)」と言いつつも、「1か2か…いや、屋敷(伸之)先生を見習って2で行こう」とわずか2秒を提示。結果として、中村八段の2秒に対し、深浦九段の1分2秒となり、九州の控室はこの絶妙な駆け引きに大盛り上がりとなった。先手番を獲得した深浦九段だったが、対局開始時から持ち時間にちょうど1分もの大差がついてしまったことに、やや複雑な表情を見せていた。
対局後、中村八段は「相手がどれくらいの秒数で入札するかを広瀬(章人)九段にアドバイスいただいたところですね。結構な秒数を自分が先手番を得るには入札する必要がありそうだということに思い至りまして。まあそこまでして先手番を得るよりも、0秒とか2秒とかそれぐらいで、後手番で時間がしっかりあった状態で戦った方がいいのではないかという、攻めた後手番でいきました」 と、作戦の意図を明かした。
実際の対局は、深浦九段が得意の雁木を志向する展開に。作戦家の深浦九段が中村八段の得意形を巧みに避ける組み立てを見せ、序盤から激しい主導権争いとなった。持ち時間のビハインドを背負う深浦九段だったが、「やっぱり年齢が上の方なので、切羽詰まるとかなり慌ててしまうので、ちょっと時間に余裕を持ってっていうことを心がけました」 と、ベテランらしい落ち着きで闘志あふれる指し回しを展開。後手の堅陣を力強く破壊し、一気に流れを引き寄せて177手にも及ぶ大熱戦を見事に制した。深浦九段の執念とチームの結束力が光ったこの一局は、九州サザンフェニックスの予選突破を大きく引き寄せる決定打となった。
◆JEMTCスペシャルABEMA地域トーナメント2026 超早指しの『ABEMAトーナメント』と『地域対抗戦』が融合した新シリーズ。全国を6つの地域ブロックに分け、全8チームによって競う団体戦。各チームは監督1名とドラフト会議で指名された棋士4名の計5名で構成される。予選は4チームずつ2リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出。試合は5本先取の9本勝負で、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。今大会より「先手番入札制度」を採用。対局開始前に持ち時間を「競り」にかけ、提示した時間がそのまま対局時の持ち時間からマイナスされる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)


