
日本で開発されたブランドフルーツなど約50品種が中国や韓国に流出した可能性があることが農林水産省の調査で分かりました。最近では愛媛県が開発した高級柑橘(かんきつ)の「紅プリンセス」が中国に流出した可能性があります。
中国で苗木販売!?
中国の通販サイトでは、中国語で『紅プリンセス』と書かれた苗木がたくさん売られています。
愛媛県が開発した高級柑橘「紅プリンセス」。ゼリーのようにとろける果肉が最大の特徴で、希少性が高く、1個400円で販売されることも。
なめらかな食感の「紅まどんな」と、濃厚な甘みを持つ「甘平」を組み合わせて生まれた、まさに“いいとこ取り”の味わいが楽しめる柑橘王国・愛媛の自信作です。
2022年に登録された新しい品種で、愛媛県でしか栽培が許可されていません。
開発までに17年、ようやく去年から本格出荷が始まったばかりの愛媛県オリジナルのブランドフルーツの苗木が、なぜ中国の通販サイトで売られているのでしょうか?
SNSに紹介動画多数
中国のSNSを調べてみると、鮮やかなオレンジ色をした柑橘「紅プリンセス」を紹介する動画が多く投稿されています。
中国のSNSから ※現在は削除されています
「これがうちの愛媛48号、紅プリンセスです。初めて(中国)東北の瀋陽に来ました。中身をお見せしましょう。奇跡の瞬間ですよ。これが果肉の色です。味見します。甘くて酸味はありません。口溶けが良い品種が、この紅プリンセスです」
こちらの動画では、「紅プリンセス」の果汁をしぼったり、特徴や栽培について説明する様子も。
「この品種は実がやや平たく、1個あたり約300グラムあります。皮は赤みを帯びて非常に薄く、むきやすい」
さらに中国のネット上では、「紅プリンセス」の苗木を出品する通販サイトも存在。愛媛県でしか栽培が許可されていないはずの苗が1年物で、約830円(35元)で販売されています。
通販サイトの説明文には、「当店が販売する苗はすべて本物」「偽物の苗にご注意下さい。値段相応の品質で商品は確かなものです!」といった記載があります。
中には、品種登録(2022年)よりも前にあたる8年物の苗を販売している業者もいます。
業者を取材
「紅プリンセス」を販売している業者に連絡をしてみました。
「(Q.そちらでは紅プリンセスの苗を売っていますか?)あります。ポット付きなら1本80元(約1900円)です」
「(Q.これは本物の紅プリンセスなんですよね?)品種は保証します」
この業者は紅プリンセスの苗木を3、4年前から販売してきたといいます。一体苗木をどこから手に入れたのか、さらに取材を進めると…。
「うちも最初はよそから入れたものです。入れたのはかなり前で、もう7年になります」
「(Q.それはどこから買ったんですか?)浙江省です。たしか象山のあたりです」
中国 栽培農家を直撃
苗木を手に入れたのは、浙江省象山県という証言が。取材班が向かうと驚くべき光景が広がっていました。
こちらの目立つ看板には「紅美人」とあります。元々は日本の「紅まどんな」のことです。その「発祥の地」と大きく書かれています。
さらに、広場にそびえ立つのは「紅まどんな」を模したと思われる巨大なオブジェ。村の至る所に掲げられた看板にも「紅まどんな」の文字が並びます。
しかし「紅まどんな」は「紅プリンセス」の親にあたる品種。愛媛で開発され品種登録された果物にもかかわらず、まるでこの地で生まれた特産品であるかのような扱いです。
このエリアで柑橘類を栽培している農家に話を聞きました。
「村全体で『紅まどんな』の栽培を行っていますが、うちが早くから始めていました。もう9年近く栽培しています」
「(Q.最近は『紅まどんな』以外に『紅プリンセス』など愛媛系(柑橘)があると聞きましたが?)こちらも愛媛系ですよ。新しい品種は珍しいので価値がありますよね。『紅まどんな』も最初は少なくてとても良かったです。でも今は象山県全体もそうですし、四川省などでも栽培されるようになりました。以前ほどは良くないですね」
農家は「紅プリンセス」については「よく分からない」と答えました。これらの品種が日本で開発されたものだという認識はあるのでしょうか?
「(Q.どうやって中国に入ってきた?)はっきりとは分かりません。覚えていないですね。いくつかの品種が組み合わさっているので」
豪雨乗り越え開発
愛媛県のみかんの栽培は、江戸時代の終わりごろから始まったといわれています。
これは、1965年、昭和40年ごろのみかん畑の様子です。温暖で晴れる日が多い愛媛県は、みかん作りに適した環境であったため、栽培する農家はどんどん増えました。
ロープウェーのような装置を使って、標高の高い段々畑から積み下ろすなど、さまざまな工夫を重ね収穫。愛媛県産のみかんは全国で販売されるようになりました。
しかし2018年に西日本豪雨によって、多くのみかん畑に甚大な被害が発生しました。
当時、のちの「紅プリンセス」となる新品種を開発していた「みかん研究所」も大きな被害を受けました。
愛媛県みかん研究所
菊地毅洋所長
「育成中の新品種だとか、栽培試験を行っている木もですね、流されちゃったりしてダメージを受けたということになります。この紅プリンセスに関しては、奇跡的に難を逃れまして。苗木の試験をしている所は奇跡的に被害が少なかった」
そして、西日本豪雨の翌年、2019年に品種登録を申請。その柑橘を「紅プリンセス」と名付けました。
新たな品種開発を成功させた裏側には、並々ならぬ苦労があったといいます。
「毎年2000種類ぐらいの交配、掛け合わせを行っています。ただ、2000種類行っているんですけども、最終的に果実を評価できるのはずっと少なくなって。愛媛の新しいブランドとして登録した確率は1万5000分の1。(紅プリンセスは)形もよくておいしいものができたので、私たちが想定した、期待以上のものができた」
農家困惑「遅かれ早かれ」
17年の歳月をかけて生み出した「紅プリンセス」は、2022年に品種登録されました。それからわずか4年、早くも海外流出の可能性が持ち上がったのです。今回の事態を受け、愛媛県宇和島市のみかん農家はこのように話します。
“紅プリンセス”を生産している
河野雄哉さん(41)
「これだけおいしいものだし、県も力を入れてPRしている。メジャーになるのがもう分かっているとなったところで、これはお金になるなと思う人は絶対少なからずいるはずなので。正直遅かれ早かれ盗まれるんじゃないかなという気持ちはありました」
みかん農家歴約16年。10種類以上の柑橘類を育てているという河野さんは、4年前に紅プリンセスの苗木を植え、去年初めて収穫しました。
「みんな『うまい』『あれもう一度食べたい』と言って、それだけうまい品種なんだなと実感しましたので」
これから柑橘王国・愛媛の主力となりうる品種が、海外に持ち出されたかもしれないという現実に、愛媛の生産農家はこのように話します。
「悔しいですよね。僕らの所で生まれた品種が簡単によそで作られて、同じものですよって売られているとなったら」
地元農家だけではなく、愛媛県・中村時広知事も憤りを隠せません。
「十数年の月日、愛媛県庁のみかん研究所の職員が『最高品種を必ず作り出すんだ』という強い思いで、1人の担当者の時代で作ったわけではなくて、いろんな世代がバトンタッチしながらたどり着いた最高傑作だと思います」
「『復興を乗り越えた先に紅プリンセスの栽培が始まるんだ』というのが本当に大きな力になっていましたので、それゆえに、悔しいという思いが特別強くなったという背景があります」
先月22日、知事は農水省を訪れ、流出の実態解明などに向けた協力を要請しました。
鈴木憲和農水大臣
「今後こういった事態が二度と起こらないように、いかに対応できるかということがまさにこれからの私達の正念場なんだと思っております」
(2026年7月2日放送分より)
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