なぜ今?発射実験をした目的は…中国軍が原子力潜水艦からミサイル発射

なぜ今?発射実験をした目的は…中国軍が原子力潜水艦からミサイル発射
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中国の新華社通信は日本時間6日午後1時、原子力潜水艦が戦略ミサイルを発射して、太平洋の公海上に着弾させたと報じました。日本政府の関係者によりますと、ミサイルの発射は2つのパターン存在していたとみられ、日本の近くを飛ばす恐れもあったということです。

【画像】日本に近い飛翔ルートも存在か

日本への通知は1時間半前か

中国国営メディアが公開した写真。海からまっすぐ空にのびていく、1発のミサイルを捉えたものです。スカートのような台形の形をして噴射されている炎は、固体燃料エンジンにみられる特徴です。姿は確認できませんが、海中には原子力潜水艦がいるものとみられます。

中国軍のSNS
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中国軍のSNS
「戦略原子力潜水艦が太平洋の公海海域に向けて戦略ミサイル1発を発射し、予定海域に正確に着弾させた」

海保などへの取材を基に作成
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発射は日本時間午後1時1分。その1時間半前、中国は日本に対して弾道ミサイル発射を通知していました。中国側が出してきたのは4地点の座標。フィリピン沖に1つ、ソロモン諸島の近くに2つ、そしてもう1つが和歌山県の南端から370キロの沖合。一画が日本の排他的経済水域にかかっています。

EEZ(排他的経済水域)
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中国側は5日、海上保安庁に対して「宇宙ゴミ落下に伴う区域」だと通知していることから、ミサイルから切り離されたブースターの落下地点を指しているものとみられます。ただ中国は、6日に潜水艦から発射されたミサイルは太平洋の公海上に着弾したと言っているだけで、それが通知された地点を指すのかどうかは分かりません。中国外務省の会見でも多くが語られることはありませんでした。

中国外務省 毛寧報道局長
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中国外務省 毛寧報道局長
「これは中国の年間軍事訓練の通例の計画で、国際法と国際慣行に合致しており、特定の国や目標を対象としていません」

日本に近い飛翔ルートも存在か

しかし、中国が通知した落下地点から起こり得る事態として考えておかなければいけないことがあります。

2カ所
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中国では5日、国内向けに落下の危険箇所を2カ所通知していました。1カ所は遼寧省沖・渤海を含む北側の海域、もう1カ所は広東省沖の南側の海域でした。この2つの地点から日本に通知した地点を結ぶと、ほぼ直線でつながることに。中国付近で1段目のブースター、少し離れたところに2段目のブースターを落下させると考えると、つじつまがあいます。もしかすると、中国は2発のミサイルを用意し、そのうち1発は日本上空を越えていくものだったということでしょうか。

この渤海周辺は、6日から中国とロシアが合同演習をしている場所でもあります。日本政府関係者は、ミサイルは日本からかなり離れた太平洋上に落下したとみていて、2パターンのミサイルのうち、日本に近い方は飛ばさなかったとの見方を示しています。

木原稔官房長官
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木原稔官房長官
「午前、在北京日本大使館は、中国国防部から本件通報に関し、弾道ミサイルを発射するとの説明を受けた。これに対しては、中国の軍事活動が活発化してることへの深刻な懸念を伝達したところ」

“対米戦力”向上をアピール

新型SLBM
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中国は近年、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発展に力を入れてきています。去年のパレードで初めて公開された最新型のSLBMは、中国近海からでもアメリカ本土のほぼ全てを射程に収めると言われています。探知困難な原子力潜水艦からの反撃。敵の先制攻撃に対する備えとして、中国が長年かけて完成を目指しているものです。ここ40年近く、中国は原子力潜水艦からのSLBMの発射を公に発表したことは一度もありません。6日の発射は、一歩悲願に近づいたことを示しているのかもしれません。

ミサイル発射
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またBBCは、ミサイルの発射は、オーストラリアとフィジーが相互防衛を定めた同盟条約を締結した数時間後だったと指摘しています。当初、中国は「弾道ミサイルの発射期間」は6日から3日間を通知していました。ところが、夕方になって突然、海上保安庁に“警報取り消し”の連絡が来たといいます。中国政府のサイトでも日本時間7日午前1時に解除と発表されました。

発射実験の“経緯と狙い”

中国の外交・安全保障政策に詳しい、防衛研究所・増田雅之さんに聞きます。

(Q.中国のミサイル発射をどう受け止めましたか)
増田雅之さん
「淡々とやっているんだろうなと。去年の軍事パレードで陸海空それぞれが発射する核の3本柱を初めて見せました。そうしたところから、アメリカにチャレンジする核戦力を作りたいという意思を明確にしていました。2024年にもICBM、陸上発射の実験を44年ぶりに実施していましたから、ついに潜水艦発射のミサイルを見せたのだろうと思います」

(Q.今回発射されたミサイルはどんなミサイルですか)
増田雅之さん
「潜水艦発射型の弾道ミサイルということですが、中国が今持っているのは『巨浪2』もしくは『巨浪3』の2つです。『巨浪2』の射程が8000キロ程度と言われていて、太平洋のど真ん中に出ない限りはアメリカ本土に届かない。今回ここまでアピールしていることを考えると、射程1万2000キロくらい行くと思われる『巨浪3』だった可能性が高いと思います」

(Q.『巨浪3』はアメリカ本土にも届きますか)
増田雅之さん
「南シナ海の中から撃ってもアメリカ本土に届きます」

“米国本土を射程”アピールか

(Q.アメリカを強く意識したミサイルですか)
増田雅之さん
「アメリカに対して軍事的、あるいは核戦力の面でも、より対等な形で物を申す戦力を見せるという強い意志を感じます」

(Q.弾頭に核兵器を積むミサイルが前提ですか)
増田雅之さん
「今回は模擬弾だと中国も発表していますが、原子力潜水艦からミサイルを撃ったことを公にするのは今回が初めてだと思います。通常動力の潜水艦から撃ったことは、香港メディアによると1982年以来ということで、1歩も2歩も進んだものを見せている気はします」

(Q.去年の軍事パレードで“陸上から発射するICBM”、爆撃機に乗せる“空から発射するミサイル”を見せました。そこに新たに今回“原子力潜水艦から発射する弾道ミサイル”を実際に見せたことになりますね)
増田雅之さん
「陸上から発射するミサイルはサイロも隠さずに見えています。その数はアメリカが計算してもかなりの数になっています。最終的に海に潜って、さらには原子力潜水艦という静粛性が高いもの、潜水時間が長いものになると、中国の核ミサイルは残存性を高めます。“第2撃能力”と言いますが、アメリカに攻撃されても反撃できる能力を高めることになります」

(Q.中国はアメリカに対して優位性があると示したいのでしょうか)
増田雅之さん
「アメリカ優位が前提ではないと強く見せたいということです」

“挑発”続く?米中関係の展望

(Q.首脳会談も行われ、米中関係は比較的良好なイメージがありますが、なぜ中国は挑発行為を行うのでしょうか)
増田雅之さん
「中国からすると、アメリカに対して低姿勢に甘んじることが良好な関係ではなくて、より対等な、特にアジアにおいては自らが主導的な立ち位置に立つことを目指していて、核戦力を中心とする軍事力は、対等性をもたらす中核にある手段だということです」

(Q.今回のミサイル発射もあるべくしてあった動きですか)
増田雅之さん
「予定通り。来年には『人民解放軍創建100年』を迎えますし、党大会もあります。そうしたタイムスケジュールも頭のどこかにはあったのでしょう。成果をアピールする形に使われると思います」

(Q.外交は外交、安全保障政策ではお互いの誇示のし合いが続きますか)
増田雅之さん
「外交で米中が何らかの安定を求めているとしても、あるべき安定は、中国が尊重され、アメリカに対して対等に物を申せることが前提だと思います」

日本への“シグナル”は…

(Q.発表された海域の1つに、日本の排他的経済水域にかかるものもありました。日本へのメッセージは考えられますか)
増田雅之さん
「今回は日本というよりも、アメリカに対するメッセージが強いと思います。中国の核戦力の増強によって、アメリカへの被害も想定される時代に入ってきた。そうなると、アメリカと同盟を結ぶ日本に対して『アメリカは本当に頼りになるのか』という論調を作っていきたいんだと思います」

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