先月、アメリカとイランの間で戦闘終結に向けた14項目の覚書が交わされたが、現在、両国は再び激しい戦闘を再開している。なぜ、再び戦火が交えられているのか。激化するイラン情勢の背景と、その裏で注目を集めるトランプ大統領の動向について、テレビ朝日外報部の大原武蔵記者が解説した。
大原記者によると、現状は「はっきりと決裂したとは言えない状況」ながらも、覚書の各項目は完全に棚上げ状態にあるという。第1条に掲げられた停戦は履行されず、第5条のホルムズ海峡の再開どころか、イラン側が「再びアメリカから攻撃を受ければ海峡を完全封鎖する」と警告していたにもかかわらず、既にアメリカ側からの攻撃がなされた。さらに、第6条に定められたイランの石油・石油化学製品の制裁一時停止についても、米財務省がその方針を取り消して近く制裁を再開する発表を行うなど、超えてはならない一線(レッドライン)に触れかねない危機的な状況が続いている。
一連の攻撃の応酬は、イランによる民間船舶への攻撃がきっかけだった。イギリスの船舶航行監視機関によると、今月6日から7日にかけて3隻の商船がドローンなどによる攻撃の被害を受けた。そのうち1隻のカタール関連船舶に対し、イラン側は「警告を無視してアメリカ軍の支援を受け、オマーン側の南側航路を通過しようとした」として7日に攻撃を実施した。この商船の位置を監視する AIS(自動識別装置)のレーダーを発していなかったとされ、イランの怒りを買ったとみられる。
これに対し、アメリカ軍が即座に報復に動いた。8日未明、アメリカ中央軍はイラン国内の防空システムなど80以上の目標を攻撃し、イラン側兵士ら8人が死亡した。イランもすぐさま反撃し、周辺国のクウェートやバーレーンにある米軍基地など85の目標を攻撃した。さらに翌9日の朝5時頃にも、米軍はイランへの再攻撃を開始。軍事物流インフラである鉄道の橋などへの攻撃を7時間にわたって行い、攻撃規模をエスカレートさせている。
こうした緊迫した情勢の中、外交の舞台ではトランプ大統領の「致命的な言い間違い」が大きな波紋を呼んでいる。トルコのアンカラで開催されたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議の席で、トランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領との2者会談に臨んだ。そこでトランプ氏は、イランの指導部を「頭がおかしい」「くず」などと強い言葉で非難した。その際、イランの正式名称である「イラン・イスラム共和国」を表現しようとしたところ、なぜか「ジャパン」とはっきりと口にし、SNSを中心に大きな話題となった。
さらに言い間違いは続き、隣にゼレンスキー氏が座っているにもかかわらず、同氏のことを「プーチン大統領」と呼び、「プーチン大統領への質問をくれ」と発言した。誰に対して何を指しているのか分からない迷走ぶりを露呈し、周囲を困惑させた。
トランプ氏はイランとの覚書について「私としては終わった、もう関わりたくない」と不満を漏らす一方、米側の交渉担当者は「話し合いたいなら話してもいい」としており、外交ルートが完全に閉ざされたわけではない。イラン側では現在、ハメネイ前最高指導者の国葬が執り行われており、仲介国からは「国葬が終わる9日以降に交渉が早期再開される」との見方も出ている。
しかし、イランのアラグチ外相が「アメリカの脅迫が続く限り最終合意に向けた交渉は再開しない」と自身のXで牽制している通り、対話のテーブルに戻るための課題は山積している。中間選挙を控え、国内からの厳しい突き上げも予想されるトランプ氏が、今後どのような選択を下すのか、事態の収束に向けて世界中が注視している。
(ABEMA/ニュース企画)

