
これまで日本の名字ランキング60位までの由来や歴史を紹介してきた『Good!いちおし』の名字企画。
日本人の名字のヒミツ大解剖 天皇家に名字がない理由&佐藤・鈴木がツートップになった理由は?
「山崎」の由来は山のとんがり 名字ランキング30位まで解説 意外なルーツ&ナゾ追跡
【名字ランキング31~40位を深掘り】斉藤や長谷川ほか 坂本が坂上より多い理由は?
【名字ランキング41位~50位のルーツ】 中川や中野…頼朝由来や難読名字も
今回は、61位以降の身近な名字のルーツを紹介します。
ランキング61位以降も“地形”や“田んぼ”が由来
ランキング61位は「森田」さんです。
名字研究家 森岡浩さん
「森と田んぼは両方とも日本によくあるものですが、森と田んぼなのですけど、さすがに森の中に田んぼはないと思うので、意味的に森の近くの田んぼとかそういう意味が中心だろうと思います」
「森田」には「盛田」という表記もありますが、森岡さんによりますと、特に違いはなく、元々「森田」という言葉が先にでき、どちらの漢字を当てたかということが多いといいます。続く62位は「原」さん。こちらも地形が由来の名字です。
森岡さん
「原によく似た言葉で野という言葉があります。原とどこが違うのかっていうと、両方とも平地なんですね。平地なんですけど水田になっているところを野って言って、水田になっていないところを原っていう風に昔は区別していたようです」
今では「原」と「野」は同じような意味で使われることもありますが、昔は区別されていたといいます。そうした場所に住んだ人が名乗ったため、原さんは全国に満遍なく分布しています。そのなかでも、島根県だけは少し飛び抜けて多いといいます。特に出雲地方には原さんが多く、島根県のなかでも平地が広がる場所であることが関係しているとみられています。63位は「柴田」さん。こちらも「田」が付く名字ですが、由来はどんな田んぼなのでしょうか。
森岡さん
「山に生えている雑木、あれを柴って言いますね。おじいさんが山へ柴刈りに行くっていうのは雑木の枝とか、小さいのを狩ってくるんですね。それを持ってくるのも柴刈りって言います。じゃあ刈ってきた柴どうするんだよってなるんですけど、まず一つは柴を使って垣根を作るんです。もう一つ重要な使い道があって、何かって言うと昔は化学肥料がないですから、この柴を切ったものを田んぼに肥料として入れるんですね。ですからこの芝を練り込んだ田んぼっていうのは堆肥が入っている田んぼ、つまり実りがいい良い田んぼなんです。柴田って言うと堆肥が入って実りのいい良い田んぼだよっていうことで、それを持っているのが柴田さんになります」
田んぼが大事だった時代には、実りの良い田んぼにという願いを込めた「吉田」さんや、福をもたらす田んぼの「福田」さんなど、所有する田んぼに縁起の良い漢字を当てていたということです。
「酒井」は酒造りではなく地名由来 「工藤」は藤原氏の流れ
64位は「酒井」さんです。「井」が付くことから水に関係し、水がきれいな場所でおいしい酒を作っていた人に由来するようにも思えますが、森岡さんは「実はこれ違ってまして、ほとんどが地名由来なんですよ」と話します。
森岡さん
「実は酒井という地名昔から全国各地にたくさんあります。じゃあその地名の由来は何なのって話になると当て字なんですね」
酒井という地名は、とてもおいしい水が取れる場所などに「酒」という縁起の良い漢字を当てたとみられるといいます。正月のおとそや、神社での御神酒(おみき)など、酒は縁起の良いものとして捉えられていたためです。「酒井」で知られる歴史上の人物には、「徳川四天王」の一人、酒井忠次がいます。
森岡さん
「これはもう昔からずっと徳川家、昔は松平家ですけど。先祖から代々仕えてきた譜代の家老の一族です。この酒井何かってやっぱり地名で、愛知県に酒井っていう地名があって。そこに住んだ一族が名乗った名字です。大名だけでもかなり何家もありますから。他にも旗本も含めて名家の酒井さんたくさんあります」
続いて65位は「工藤」さん。「藤」が付くことから、藤原氏に由来する名字です。「藤(とう)」が付く名字は、佐藤さんや斎藤さんのように、権力を持ち増えすぎた藤原さんを区別するため、役職や住んだ場所を掛け合わせたものだといいます。では、工藤さんの場合はどうなのでしょうか。
森岡さん
「朝廷に木工寮っていう朝廷の修繕とかする部署があるんですね。木工って書いて「もく」って読みます。大工というか、そういうことを管轄する部署ですね。そこの木工寮の次官に「木工助」という役職があって、木工助になった藤原さんが木工助の「工」と藤原の「藤」をつなげて「工藤」って名乗ったのが始まりです」
工藤さんは地域差にも特色があります。特に多いのは青森県で、青森県では県で最も多い名字が「工藤」さんだといいます。
森岡さん
「青森は独特で工藤が一番多いという県は青森だけなので。ですから逆にこのランキングを見て65位に工藤っていうので結構意外と思っている方多いかもしれないですね。偏りが激しいので」
なぜ青森に工藤さんが多いのでしょうか。藤原氏の繁栄をもたらした不比等の息子たちが創設したそれぞれの藤原家を探ると分かるそうです。
森岡さん
「佐藤さんの藤原は藤原北家っていう藤原の中心の一族なんですけど、工藤さんは藤原南家って言って、ちょっと分家に近いような家の子孫になります。藤原南家ってどちらかというと武士になった家が多いんですが、平安時代になると今の伊豆の方に行ってそこで頼朝に仕えます。最初から仕えたんで鎌倉時代には頼朝の有力家臣になって鎌倉時代に東北の方にかなりたくさん領地もらうんです。一族が東北へドーッと移っていってそこで広がっていくんですね」
そのため、今でも青森県には工藤さんが多いということです。
難読名字「一尺八寸」「部田」「雲母」 読めますか?
ここで恒例の難読名字クイズです。「一尺八寸」と書く名字は、何と読むのでしょうか。森岡さんによりますと、漢字と読みが全くかみ合っていないタイプの名字だといいます。「一尺八寸」は長さで、55センチぐらいの物の名前がヒントです。
森岡さん
「正解は『かまつか』さんです。鎌も刃があって持つところが鎌の柄なんですね」
「かまつか」は静岡県にある地名で、通常は「鎌塚」と書きます。
森岡さん
「そこに住んで鎌塚一族ってのが、やっぱり静岡県にいたんですね。これ普通の漢字書きます。昔は分家すると名字を漢字を変えるってことをよくやりましたので、鎌塚さんが漢字を変えるときに鎌塚って他の漢字で書こうとして思いついた方がいるんですね。当時は鎌の柄って一尺八寸って多分常識だったんでしょうね」
続いては、「部」に「田」と書く「部田」。これは何と読むのでしょうか。ヒントは「服部」さんです。服部で「はっとり」と読むなら、「部」は「とり」と読んでもよいだろうと考えた人がいたとみられるといいます。
森岡さん
「これ多分元々は普通の鳥田さん、バードの鳥に田んぼで鳥田さんっていう一族がいたんだと思います。服部でハットリだったら、部はとりって読んでもいいだろうなって思った人がいて、トリタさんの鳥にこの部を持ってきちゃったんですね」
正解は「トリタ」さんです。服部さんの先祖は、朝廷の機織りを職業とする服織部(はたおりべ)に勤めていた人たちで、そこから「はたおりべ」は次第に「はっとりべ」に変化したといいます。
