
ある施策で観光客が急増したシャッター商店街があります。
商店街まるごとホテル
下町情緒残る東大阪市の「布施商店街」。長さ1.8キロにわたって、青果店や総菜店などが軒を連ねる昔ながらの商店街です。
その一角にある店舗に、大きな荷物を抱えた人たちが次々と入っていきます。
昭和の雰囲気を感じるレトロな外観。「レディースショップキヨシマ」と書かれた看板をくぐると、一転、モダンなカフェのような空間が。実はここ…。
スタッフ
「このホテルは商店街をまるごとホテルに見立てた“街ごとホテル”でございます」
もとは婦人服店だった店舗を、当時の外観をいかしつつ、ホテルのフロントに改装しました。
「こんな家に住みたい」
この日、やってきたのは関西に住む50代の仲良し3人組です。
フロントで説明を受け、早速、中の客室に案内されるのかと思いきや、いったん外へ。周りの店はシャッターが閉ざされ、まるで時が止まったかのよう。案内されたのは、シャッター商店街とは趣の違う「ナンバー9」と書かれたおしゃれな建物です。
中へ入ると…ホテルの客室です。実は、商店街の空き店舗をリノベーションし、客室として活用しています。
化粧品店や雑貨店だったお店は、アースグリーンの鉄板やモルタルなどを使い、おしゃれな町工場をイメージした客室に様変わりしました。
宿泊客 延原明子さん
「かわいい。こんな家に住みたい」
宿泊客 金澤幸代さん
「ここらへんの物も町工場っぽいけど、中見たら色もオシャレだし、なんか上手にしてるな」
この部屋は、66平方メートルのワンルームで、1人1泊7000円から宿泊できます。
金澤さん
「布施に商店街丸ごとホテルができたと聞いたので、すごく興味があって」
延原さん
「商店街なのに、こんなオシャレな感じがトントントンとあるのがすごく面白いなと思って。それが融合されていて」
空き店舗や空き家を改修した客室は、全23室。築33年、かつての呉服店は、広々としたスペースが家族連れに人気の客室になりました。
築55年、菓子店だったお店は、元々あった梁(はり)をいかしたシックなデザイン。窓から見下ろす商店街ビューが売りです。
喫茶店が朝食会場に
商店街をまるごとホテルにした仕掛けは、客室だけではありません。
店員
「朝食引換券をお持ちですか?お預かりします」
実は商店街にある喫茶店が、ホテルの朝食会場の役割を担っています。
朝食は、3種類のモーニングセットから選択。仲良し3人組は、エビグラタンがのったトーストに、サラダやゆで卵が付いたセットを注文しました。
ホテルの機能を担う場所は、他にもあります。
昭和33年創業の銭湯が、ホテルの大浴場に。昔から変わらず、まきでお湯を沸かし、サウナは旅の疲れを癒やしてくれます。
宿泊客で地域活性化
ホテルでは、宿泊客に商店街の地図を「館内マップ」として配布。ホテルと提携している店舗では、宿泊客に特典があります。
創業100年以上の老舗パン店「金太郎パン」では、500円以上買うと100円引きになります。
地元の人々の日常に溶け込み、商店街を散策できるのも楽しみの一つです。
金澤さん
「コロッケ3つ」
店員
「今食べるんですかね?」
金澤さん
「はい」
昭和28年創業の老舗精肉店「肉のやまじん」では、1日に3000個を売り上げる商店街名物のコロッケに舌鼓。
延原さん
「おいしい!お肉屋さんのコロッケっていう感じ」
金澤さん
「甘いやつ」
延原さん
「めっちゃ甘い」
他にも…。
金澤さん
「え?え?え?何でこんな安いの?」
宿泊客 波多野正枝さん
「私、桃買おうかな」
青果店で見つけたのは、3個で200円の桃や、2個で100円のキウイフルーツなどの激安フルーツ。
ホテルと提携していない店舗でも宿泊客が買い物するなど、商店街の活性化につながっています。
波多野さん
「宝探しみたいに探していくのも楽しかった。発見とかもあって、色々なお店を教えてくれたから」
「寂れた」商店街再生
戦前から東大阪市最大の商店街として栄えた「布施商店街」。最盛期には780もの店舗が軒を連ね、多くの人でにぎわっていました。しかし…。
地元の人
「今は(夜の)7時、8時になったら暗いもん。それくらい寂れてもうた」
和菓子店 店主
「商売できないからと辞める人もいるし、継ぐ人もいない」
「(Q.布施商店街の現状は?)死んでいると思いますよ」
高齢化や大型商業施設の進出で、商店街の店舗数は約400店にまで激減しました。
空き店舗が目立つようになった布施商店街に目を付けたのが、使われていない建物をリノベーションし、民泊施設として活用する事業を手掛ける大阪の不動産会社です。
セカイホテル大阪布施 北川茉莉さん
「ザ・大阪、下町の商店街がまさに体現されている商店街がこの布施だと思いました。(空き店舗を)リノベーションすることで、魅力的な宿泊施設に変えることができる」
難波まで電車で11分、梅田にも30分ほどとアクセスがよいことに加え、商店街という「旅先の日常」を体験できることで、他の民泊との差別化を図れると見込んだのです。
2018年、地域と連携して商店街をホテル化しオープンしたのが、この「セカイホテル大阪布施」です。
外国人観光客にも人気
商店街に泊まれるというコンセプトの目新しさや、昭和レトロを体験できることから、若者を中心に人気に。さらに…。
外国人観光客のSNS
「日本でシャッター商店街が増えているのをご存じですか?この問題を解決するため商店街全体をホテルにしました」
外国人インフルエンサーの投稿が、10万以上の「いいね!」を集めました。
ニュージーランドからの観光客
「今まではいつも大きなホテルに宿泊していましたから、小さな空き店舗に宿泊するのはとても楽しいです」
台湾からの観光客
「日本人にとって古いな、寂しいなという感じがあるけど、外国人にとってめっちゃ新しい。日本のアニメとかドラマで見られる場所」
SNSを通じて、“商店街まるごとホテル”の取り組みが世界に広がり、外国人観光客が泊まりに来ています。
ニュージーランドからの観光客
「金太郎パンへ行って、モモヤへ行こう」
ニュージーランドとシンガポールから来た観光客は、「館内マップ」を片手に商店街を散策。ホテルの食べ歩きプランで受け取ったチケットを、フルーツ大福と交換しました。
ニュージーランドからの観光客
「とってもフルーティーで新鮮だよ」
他にも、たこ焼きやコロッケ、あんパンなど、商店街グルメを少しずつつまみ食いできると好評です。
子どもと商店街を結ぶ場へ
商店街と宿泊客をつなぐだけでなく、ホテルが今、地域交流の場になっています。
北川さん
「きょうはセカイホテルのスタッフになってみようというお仕事体験」
月に1度、地元の子どもたちを招き、職業体験などのイベントを開催しています。
子どもたちはスタッフと一緒にシーツをかけます。
イベントに参加した子
「シワを伸ばすところが難しくて手が入らなかった」
イベントに参加した子の母
「一緒に遊べる環境とか、学べる環境があるのはすごくありがたい」
“商店街まるごとホテル”が、地域の子どもたちと商店街とを結ぶ場所になっています。
大浴場 戒湯 和田裕之さん
「初めは半信半疑だった。宿泊の建物をいろいろ増やされて頑張っている。うちもその分お客さんが増えている」
朝食会場 FUJICAFE
藤井浩史さん
「元気がなかった商店街をすごい盛り上げてくれる施設が新しくできたなと思っている。地域活性化としてはすごく良いこと」
去年、年間の宿泊客は大台の1万人を突破。海外からも44カ国・1500人以上もの観光客が「布施商店街」を訪れています。
北川さん
「街ごとホテルの核は、その街の日常を体験することが楽しいよね、面白いよね、と思ってもらえていること。各街に魅力がありさえすれば、どの街でも街ごとホテルは実現できる」
(2026年7月21日放送分より)
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