
あいまいとされてきた危険運転について、21日から「数値の基準」が導入され明確化されました。数値の根拠を社会部記者が解説します。
きょうから数値基準
およそ2年前、埼玉県川口市で発生した自動車事故。中国籍の男が飲酒したうえ、一方通行の道を時速125キロで逆走し、衝突された男性が死亡しました。
この事故の裁判で成立が認められた「危険運転致死罪」。その条件が、21日から大幅に変わります。
平口法務大臣
「自動車運転死傷処罰法等改正法が施行されることとなります」
新たに設けられたのは、危険運転致死傷罪を適用する際の数値基準です。
速度については、最高速度が時速60キロ以下の道路はその速度を50キロ以上超えた場合、最高速度が時速60キロを超える道路はその速度を60キロ以上超えた場合、危険運転致死傷罪が適用されます。
つまり、最高速度が時速40キロの一般道では90キロ以上、時速100キロの高速道路では160キロ以上が対象です。
飲酒運転については、アルコール濃度が呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上で適用。これは、体重およそ60キロの人が大瓶のビールを2本程度飲んで30分ほど経った後に検出される量にあたるそうです。
社会部 司法担当
小牧薫子記者
「今回の法改正で“危険な運転”かどうかが明確化される。危険で悪質な走行に対して厳格な対応ができるようになる」
これまでの適用条件は?
そもそも、危険運転致死傷罪ができたのは2001年。
近年も、実際に適用されたケースがあります。例えば、おととし、群馬県伊勢崎市で家族3人が亡くなった衝突事故。こちらは一審で、危険運転致死傷罪が適用され、酒を飲みトラックを運転していた被告に対し、懲役20年の判決が言い渡されています。
このように、危険運転致死傷罪では「最大20年の拘禁刑」が科されます。過失運転致死傷罪の「最大7年の拘禁刑」の比べ、大幅に重くなりました。
ただ、これまでの適用条件は…。
これまでの条文
「進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」
2021年に大分市で起きた事故では、当時19歳の男が法定速度60キロの道を時速194キロで走行。交差点を右折していた車と衝突し、運転していた男性が死亡しましたが、福岡高裁は…。
「進行を制御することが困難な高速度に該当するとは評価し得ない」
危険運転致死罪の成立を否定しました。
被害者の遺族
「法定速度の2倍、3倍超えるこの速度が“過失”なわけがない。この速度をまだ“過失”と言う人がいるのかなという気持ちでいる」
小牧記者
「そもそも危険運転致傷罪を巡っては改正前は『正常な運転が困難な状態』など適用の基準が抽象的でした。基準が抽象的で危険運転の適用が認められず、苦しんできた遺族や関係者の声にこたえるため改正された」
“明確な根拠”とは
実は、今回具体的に示されたこの数値、しっかりした根拠があるといいます。
小牧記者
「政府は研究機関と協力して、『最高の性能を持つ自動車』を『最高の技能を持つドライバー』が運転しても回避できなくなる“限界の速度”を算出。その速度をもとに今回の速度基準を設ける」
一方で“1キロ数値に達していない”など“危険な運転”でも、基準を満たさなければ危険運転致死傷罪は適用されないのでしょうか?
小牧記者
「あくまで数値基準にすぎません。“重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度”で運転する行為は、(速度基準を下回っても)危険運転致死傷罪の対象となります。速度・アルコール度数の基準を明確にし、危険運転自体を減らすことが法改正の趣旨。政府関係者は『事故件数自体が減ることを期待している』と話していました」
(2026年7月21日放送分より)
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