
山火事を巡り、カナダ批判を強めるトランプ大統領が、追加関税を発表。貿易戦争の火種になるのか。国内では「イスラエルのネタニヤフ首相の拘束を検討する」とした、ニューヨークのマムダニ市長と対立を深めている。
【画像】躍進する「民主社会主義者」とは? マムダニNY市長が自称
カナダ山火事で米東部に深刻影響
まずは、カナダの山火事の影響を見ていく。まだまだ収まる気配はなさそうだ。
カナダ森林火災対策センターによると、熱波と強風によりカナダ東部オンタリオ州を中心に発生した山火事は上図左上の地図で、赤い丸が「制御不能の火災」、黄色い丸が「延焼はしていない火災」、青い丸が「管理下、制御できている火災」だという。赤い丸が多いため、なかなか制御ができていない状況だ。
現在もおよそ900カ所で燃えていて、年初来、焼失した面積は300万ヘクタールで、関東地方のおよそ9割にも及ぶ広さだという。
カナダとアメリカの一部が写っている上図右上の衛星画像を見ると、煙(ピンクや茶色の部分)はカナダの国境を越えてニューヨークにも及び、CNNはアメリカの1億人以上が大気汚染の警報の対象となったと報じている。
このことを受け、共和党関係者からカナダへの批判が相次いでいる。
トランプ大統領の政治顧問を務めたケイティ・ミラー氏はSNSに山火事による大気汚染の記事を引用し、山火事を制御できていないカナダに対し、「これこそがカナダが51番目の州になるべき理由だ」と投稿した。
また、共和党のトム・バレット下院議員はSNSに「カナダが山火事を抑え込むまで(アメリカとカナダを結ぶ)開通間近のゴーディ・ハウ国際橋の開通を延期すべきではないか」と投稿している。
山火事巡る両国首脳の応酬は
こうした批判にカナダは反論していて、両国首脳の応酬に発展している。
カナダのカーニー首相はアメリカ側によるカナダ批判に対して、「気候変動の責任はアメリカを含む私たち全員にある」とした上で、「アメリカは国際社会の気候変動対策への関与を縮小している」と気候変動対策に消極的なトランプ政権を批判した。
これに黙っていなかったのがトランプ大統領。自身のSNSで「カナダが森林や下草を適切に管理していない結果、アメリカは汚染された。これは故意の怠慢だ」とカナダを批判し、「アメリカに数十億ドルの損失を与えており、この汚染対策コストはカナダが現在支払っている関税に上乗せされるべき」と投稿している。
米カナダで貿易戦争再燃?
対立が深まる中、トランプ政権はカナダへの追加関税を発表し、貿易戦争の再燃が懸念されている。
20日、トランプ大統領は「カナダがアメリカの輸出品を差別的に扱っている」として、カナダからの輸入品の一部に50%の追加関税を課す布告に署名したと発表した。
対象となるのは、ワインやアイスホッケーのスティック、セメントなどで、関税の規模はおよそ3兆1000億円相当で、来月19日に発効予定だという。
CNNによると、この追加関税は議会の承認なしに最大50%の関税を課すことを大統領に認めている「通商法338条」に基づく措置だといい、発動されれば初となる。
アメリカのニュースサイト・アクシオスによると、政府高官は今回の関税について「山火事を踏まえた措置ではない」としている。
こうしたトランプ政権の動きに対して、カナダのカーニー首相は「アメリカの一方的な措置だ」として「カナダ・アメリカ・メキシコ協定に違反する」ものだと批判している。
ネタニヤフ首相NYで拘束?
カナダとの緊張が高まる中、国内では「イスラエルのネタニヤフ首相の拘束を検討する」と発言したニューヨークのマムダニ市長との対立を深めている。
ニューヨークのマムダニ市長が、イスラエルのネタニヤフ首相の拘束を検討すると言及した。どういうことなのか?
ICC(国際司法裁判所)は2024年11月、パレスチナ自治区ガザでの住民殺害を巡り戦争犯罪と人道に対する罪の疑いで、イスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を発行している。
日本を含む加盟国には容疑者逮捕に協力する義務があるが、アメリカやイスラエルはICCに加盟していないため、逮捕に協力する義務はない。
そもそも、ICCについてトランプ政権は解体すべきと主張している。
ルビオ国務長官は13日、ICCがアメリカ軍の戦争犯罪疑惑の捜査を試みたことなどを理由に「ICCはアメリカの主権を脅かしている」と主張し、ICC関係者への制裁強化やビザ発給停止などを検討していると明らかにした。
一方で、ニューヨークのマムダニ市長はニューヨーク・タイムズのインタビューで、9月にニューヨークで開かれる国連総会にネタニヤフ首相が出席する場合、拘束できるかどうかを検討していると発言した。
民主党のマムダニ氏は「民主社会主義者」を自称している(民主社会主義者ついては後ほど詳しく説明)。
そんなマムダニ氏は去年11月のニューヨーク市長選に勝利。これまでもイスラエルによるガザ地区への攻撃などを批判してきた人物として知られている。
マムダニ市長の発言を受けて、トランプ大統領は自身のSNSで、ネタニヤフ首相について「アメリカに滞在する間はどんな形や状況であれ、逮捕されることはない」としている。
躍進の民主社会主義者とは
中間選挙に向けた民主党内の予備選で、マムダニ氏が支援する「民主社会主義者」に追い風が吹いているという。
資本主義の国アメリカで今、躍進している「民主社会主義者」とは、どのような存在なのか?
“民主党内の急進左派”とも位置付けられているDSA(アメリカ民主社会主義者)というグループは、国民皆保険制度の実現や富裕層への増税、企業に対する規制の強化などを掲げ、「行き過ぎた資本主義の是正」を主張している。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、DSAは2016年の大統領選に向けた民主党内の予備選で急進左派のサンダース氏を支援し善戦したことで勢いをつけ、2018年の中間選挙では「国民皆保険の実現」を主張したオカシオコルテス氏を支持し勝利を収めたという。
また、11月の中間選挙に向けた予備選でも各地で勝利しているという。
先月のニューヨーク州の下院予備選では、民主社会主義者のマムダニ氏が支持した3人が現職議員らを破り勝利し、今月行われたコロラド州の下院予備選でも民主社会主義者のキロス氏が29年間にわたって議席を維持してきた現職議員を破り勝利するなど、党内で民主社会主義を掲げるグループが存在感を増しているという。
CNNによると、民主党で主流派のある下院議員は「彼ら(民主社会主義者)に党を乗っ取らせていいのか」として、過激な政策が「共和党の攻撃材料になる」と懸念しているという。
また、トランプ大統領もSNSで「(民主社会主義者は)神を持たない共産主義者だ」と批判するなど、強い危機感を示している。
(2026年7月22日放送分より)
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