
中国が海洋覇権のさらなる拡大を目指しているのだろうか。フィリピン北部の島々を巡り、新たな対立が生まれている。さらに、中国の習近平国家主席はAI=人工知能の分野で、世界を主導しようと意欲を見せている。
中国・フィリピンに新たな火種か?
まずは、さらなる海洋覇権の拡大を目指す、中国の動きについて見ていく。中国とフィリピンの新たな火種となるのだろうか。
中国とフィリピンは、南シナ海で長年にわたって領有権を争っているが、新たにフィリピン最北部に位置するバタン諸島でも、領有権を巡る争いが起きる可能性があるという。
バタン諸島とは、大小10以上の島々からなる人口およそ2万人。「風の故郷」と呼ばれるほど台風の通り道になっている。
また、台湾からはおよそ200キロと近い場所に位置し、その間にある「バシー海峡」という南シナ海と太平洋を結ぶ海上交通の要衝がすぐ北に位置している。
「バタン諸島は中国領」という主張も?
このパタン諸島に関して「この場所は中国領だ」という主張も出ている。
5月にフィリピンのマルコス大統領が訪日した際、台湾の東側で重なっている日本とフィリピンのEEZ=排他的経済水域の未確定部分に関し、国連海洋法条約などに従い、「海洋境界の画定交渉の開始を決定」した。
これに中国が反発。6月2日、中国外務省は「中国を迂回(うかい)して、一方的に交渉を始め、国際法と国際関係の基本原則に著しく違反した」と批判した。
こうしたなかで、中国共産党機関紙が6月15日、こんな動画を公開した。
高市早苗総理大臣とみられる人物とフィリピンのマルコス大統領とみられる人物が、海上でダンスをしている。「危険な2人のダンス」という文字とともに、「日本とフィリピンの『海洋境界画定』は完全に違法だ」という文字も。また、「日本とフィリピンの共謀は、地域の平和と安全を壊している」とも記されている。こうして、日本とフィリピンを批判した。
6月末、中国の政府系研究機関や大学の学者らがシンポジウムを開き、バタン諸島に関して「台湾本島の自然な地理的延長にある」「明や清の時代に台湾の管轄下にあった」として「バタン諸島は中国領」と主張した。
ただこれはあくまでシンポジウムの中での主張ということで、中国政府はバタン諸島の領有権を公言したことはないとみられる。
これに対して、フィリピンの国防相は「根拠がなく、ばかげている」と批判。また、フィリピン政府は「中国に領土拡張の意図があるのではないか」と警戒を強めている。
なぜ日本のEEZ内で中国軍が実弾演習?
日本近海でも、中国の動きが活発化している。中国軍が日本のEEZ=排他的経済水域内で実弾演習を行った。一体、なぜなのか。
先週末、中国とロシアが日本周辺海域で共同航行作戦を実施した。さらに、中国は沖ノ鳥島の南西およそ180キロの日本のEEZ内で駆逐艦の実弾演習を行った。
これには、日本側から外交ルートを通じて申し入れを実施。しかし、中国外務省は「沖ノ鳥島は島ではなく岩で、EEZや大陸棚を主張することはできない」としたうえで、「(訓練は)公海上の活動で合法だ」と反発した。
沖ノ鳥島とは、東京都心から南へおよそ1700キロの太平洋上に位置し、「東小島」「北小島」の2つの小島で構成されている。
日本政府は国連海洋法条約第121条第1項において、「島とは自然に形成された陸地で、高潮時においても水面上にあるもの」という定義から、条約上の「島」に該当するという見解。
一方、中国側は同じ第121条第3項の「人間の居住又は経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」という規定から「岩」と主張している。
こうしたなか、2012年には、国連の大陸棚限界委員会が沖ノ鳥島を「島」だと認める内容の決定を行っている。
中国 AI分野でも世界を主導しようと意欲
中国の習主席はAIの分野で、世界を主導しようと意欲を見せている。
16日、中国・上海でAIを巡る協力枠組み、WAICO=世界AI協力機構の設立協定の署名式を実施。これは、AIの国際標準規格の作成やAIインフラ整備、デジタル格差の解消などで連携するもので、本部は上海に置くという。
参加国は、ロシアや習主席が旗を振る広域経済圏構想「一帯一路」に関わるカザフスタン、インドネシア、パキスタンなど29カ国。
17日、上海で開かれた世界AI大会で習主席は「AI分野で自国の安全保障を他国の安全保障よりも優先させる姿勢に共同で反対すべきだ」と主張した。
ロイター通信によると、中国を新たな世界的AI秩序の旗手とし、アメリカに代わる選択肢として、中国を売り込む狙いがあるという。
国連がAI分野で中国に歩み寄り?
そんな中国に、国連が歩み寄りを見せているという。
中国・上海で17日から20日にかけて開催された世界AI大会に合わせ、上海を訪問したのが国連のグテーレス事務総長。WAICOの署名式にも出席し、習主席とも会談を行った。
会談の席で習主席は「国際情勢において変化と混乱の側面がより顕著になっており、国連の地位と役割を活性化させる必要がある」と主張した。
また、グテーレス事務総長は「国連は今後とも中国との協力を強化し、国際社会の共通の利益を守っていく」と発言し、中国との良好な関係を強調した。
さらに、グテーレス事務総長は中国メディア(CCTV)のインタビューで「国連はAIがすべての人々に資するものになるよう、各方面がAIガバナンス=AIの世界的なルールづくりに幅広く参加することを望む」と述べ、習主席が提案した「グローバルAIガバナンス」を支持すると表明した。
アメリカ側はどう見ているのか。CSIS=アメリカ戦略国際問題研究所は、中国は国連を中心としたAIガバナンスがアメリカのAI主導権を弱め、中国のソフトパワーを高める機会と見ていると指摘。
さらに、アメリカが国連中心のAIガバナンスに距離を置くことで、中国がその空白を埋める構図になり得ると分析している。
(2026年7月23日放送分より)
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