2月、南鳥島沖の水深約6000メートルの海底から回収された泥に、希少なレアアースが含まれていたことが先週明らかになった。長年望まれてきた「国産レアアース」の実現に向けて大きな期待が高まる中、これが日本経済や国際情勢にどのような影響を与えるのかについて、テレビ朝日経済部の平山明秀記者が解説した。
【映像】水深6000メートルから引き上げた「スラリー」(実際の様子)
レアアースは、スマートフォンやEVなどのハイテク製品から、医療機器、ミサイルや戦闘機といった軍事用途に至るまで、現代産業に不可欠な素材である。たとえば米軍のF35戦闘機1機には約400キログラムものレアアースが使用されている。
しかし現状、世界のレアアース生産は中国が7割を占め、市場を圧倒的に支配している。中国はトランプ米政権による関税措置への対抗などを背景に、去年4月から希少な重レアアースを中心とする7種類の輸出規制を開始し、輸出時の事前許可申請を義務付けるなど世界への影響力を強めている。こうした中国への過度な依存に対し、高市総理はSNS等でサプライチェーンの強靭化に向け官民で取り組む姿勢を表明した。日本政府も成長戦略の中で、開発から加工に至るプロセスを同志国と連携して確保する方針を打ち出しており、オーストラリアからの輸入やフランスでの生産計画など調達先の多角化が進められている。
そうした中で注目を集めているのが、今回発見された南鳥島沖の「レアアース泥」だ。この海域には、約3000万年前の気候変動で大量発生した魚などの死骸が堆積し、その骨に近くの海底火山から湧き出たレアアースが付着したという仮説が立てられている。2026年1月から2月にかけて、海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」が南鳥島沖で回収実験を実施した。水深約6000メートルの海底にある粘土状の泥を専用機器で海水と混ぜ合わせ、液体状の「スラリー」にして汲み上げる独自システムを開発し、世界で初めて引き上げに成功した。わずか3日間で50トンもの泥を回収し、分析の結果、半数以上が極めて希少価値の高い重レアアースや中レアアースで占められていることが判明した。具体的には、半導体製造装置やLED、戦闘機エンジン等に使われるイットリウムのほか、強靭な磁石の耐熱性を高めるジスプロシウムなどが含まれている。さらに、強力な永久磁石の主原料となる軽レアアースのネオジムも豊富に確認された。
今回の発見と回収成功は世界的に見ても貴重な成果だが、そのまま「国産レアアースの本格活用」へ直結するわけではない。最大の課題は採算性、すなわちコストの問題である。中国の陸上鉱山での採掘に比べ、水深6000メートルの深海から泥を引き上げる作業には膨大な費用がかかるうえ、泥に含まれる具体的なレアアースの濃度は未発表であり、民間企業が単体で参入するにはリスクが高い。そのため当面は、政府主導の備蓄にとどまるのではという声も聞かれる。
本格的な商業化・実用化の判断に向け、来年(2027年)2月には大規模な実証実験が計画されている。この実験では、1日あたり換算で350トンの泥を回収し、これを1カ月間継続する。回収した泥は南鳥島へ運んで水分を抜く脱水処理を行い、「マッドケーキ」と呼ばれる土の塊状にして本州へ輸送、そこでレアアース成分を分離・製錬する大掛かりなオペレーションが組まれる予定だ。政府および関係機関は、この実験を経て再来年にあたる2028年3月までに経済性評価を出すとしており、自民党内から出ている専用採掘船の建造要求も含め、事業化の成否はこの結果にかかっている。日本経済が中国リスクを克服し、自前の資源を確保できるかどうかの試金石として今後の検証に大きな注目が集まっている。
(ニュース企画/ABEMA)

