28日、政府は、悪質なストーカー加害者へのGPS機器装着義務化の検討などを盛り込んだ対策を取りまとめるため、「犯罪対策閣僚会議」を開催した。悪質なストーカー事件が相次ぐ中、政府が打ち出した対策について、テレビ朝日政治部の奥住憲史記者が解説した。
犯罪対策閣僚会議は、内閣総理大臣をトップに関係閣僚が集まり、政府横断で治安対策を議論する枠組みとして2003年に設置された。今回の会議では、繰り返されるストーカー被害を食い止めるための「切り札」として、悪質な加害者へのGPS装着義務化が浮上した。加害者が被害者に接近した場合にリアルタイムで被害者へ通知が届く仕組みなどを検討している。背景には、今年3月に東京・池袋のポケモンセンターで起きたストーカー殺人事件がある。当時、加害者は接近禁止命令を受けていたものの事件を防げなかったことから、政府・与党内で実効性のある対策強化へ向けた動きが加速した。
警察庁のデータによると、ストーカーの相談件数は年間およそ2万3000件近くに上り、依然として高止まり傾向にある。被害者の約9割は女性だが1割超は男性であり、年代も10代から70代以上まで幅広く、誰にとっても身近な犯罪といえる。ストーカー規制法はこれまで計4回改正されてきたが、従来の「違反した後に取り締まる」法体系から、今回は「重大事件になる前に物理的に防ぐ」方針へ大きく舵を切った点が従来と大きく異なる。リアルタイムで加害者の接近を把握・通知し、これまでの制度的空白を埋めることが狙いとされる。
先行事例として、韓国ではストーカー対策として3年前に足首へ装着するリング型のGPS端末を導入している。特殊金属製で重さ180グラム以下の防水仕様となっており、裁判所の命令で最長30年間装着される。被害者は専用アプリで加害者の位置や移動経路を把握でき、2キロ圏内に接近した場合は警報が鳴って警察が即座に出動する仕組みが構築されている。韓国では導入後、ストーカーの再犯率が20分の1に激減したというデータもあり、厳しい性犯罪対策の文化も相まって国民的理解が得られているという。
一方で、日本での制度設計には多くの課題が残されている。端末の形状については常時装着する足首型だけでなく持ち運び型も浮上しているが、持ち運び型では「置き忘れた」などの言い訳が可能となり、実効性が担保できない懸念が指摘されている。また、装着対象者についても全員ではなく、命令違反の回数や過去の暴力歴、凶器の有無といった客観的な要件に基づき、悪質性・危険性が高い加害者に限定する方向で議論が進められている。日本では警察や国家公安委員会が判断に関与する形が想定されている。
さらに、常に位置情報を捕捉することによるプライバシー侵害や、罪を償った後の二重処罰に当たらないかといった人権上の懸念も国会等で議論になる見込みである。そのため、運用開始当初はごく一部の対象者に限定した形からスタートする可能性が高いとみられる。あわせて政府は、加害者の執着心を軽減させるため、専門機関でのカウンセリングや医療機関での治療受診を義務化する制度も併せて検討している。
今後のスケジュールについて奥住記者は、政府は有識者会議での議論などを経て、2027年の通常国会への法案提出を目指して調整を進めていると解説した。法案提出から実際の施行・運用まではさらに時間がかかる見通しだが、政府内にはGPS装着という制度が存在すること自体が抑止力として機能することへの期待もある。重大事件を防ぐための被害者保護と、加害者の人権や運用の厳格さとのバランスをどう取るか、慎重な検討が続けられている。
(ニュース企画/ABEMA)

