
今回の熊本地震で日本製紙の八代工場で煙突が倒壊し、9人が亡くなりました。5日、日本製紙が会見を開き、被害の状況や経緯などを説明しました。さらに、被災地では農業への影響も深刻です。特産品の梨などに被害が出ています。
「閉鎖は現時点で考えていない」
エンジンカッターの音が鳴り響く救助現場。岡山市消防局が撮影した日本製紙八代工場での救助活動です。
岡山市消防局
大森浩章消防司令長
「削岩機を使い、コンクリートを少しずつ砕きながら、最後は手掘り作業で少しずつ少しずつ」
救助活動にあたった隊員が、当時の状況を語ります。
「事務所というところで、デスクがあるところで。座った状態で、天井や煙突の崩落、落下という状態ではさまれていたということが一番多かった」
地震の後に煙突が倒壊し、9人が死亡した日本製紙八代工場。5日、日本製紙の社長らが初めて会見を開きました。
日本製紙 瀬邊明社長
「私ども、この事態を極めて重く受け止めております。深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ありません」
なぜ、9人もの命が失われたのか。被害状況と経緯が分かってきました。
死傷者を出したのが、80メートルの煙突です。地震で倒壊し、目の前にある2階建ての事務所を直撃しました。亡くなった9人のうち、6人はデスクワーク中の社員でした。
倒壊した80メートルの煙突は、1970年に建設された鉄筋コンクリート製です。
日本製紙 八代工場
山邉義貞工場長
「(倒壊した煙突は)2006年、その前1997年に点検しています。(2016年に)熊本地震起きてその後、補強工事をやっています」
街のシンボルでもあった日本製紙の煙突。
「老朽化していたかどうかは、事故調査委員会のほうで調べないと。私どもは今、近づけない状態」
100年以上の歴史を持つ八代工場には、戦前に建てられた事務所が残っているといいます。
瀬邊社長
「閉鎖は現時点で考えていない。本当にこれからどうしていくか、しっかり考えていかないといけない」
5年以上の歳月 多額費用
最大震度7を観測した熊本県氷川町では、名産品に甚大な被害が出ています。
梨農家 迫田祥寛さん
「壊滅的なダメージを受けてて」
辺り一面に落ちているのは、大量のナシです。
「やっぱり(全体の)9割はいってますね。もうなんか、何もしたくないって感じですもんね」
収穫を目前に控えるなか、この梨園では全体の9割にあたる10万個以上のナシが出荷できない状態に。
氷川町のナシは「吉野梨」というブランドで、全国的な知名度を誇ります。
「手塩にかけて、大事に育てて、苦労して」
実がなるまで5年以上の歳月と多額の費用をかけ、家族で大切に育ててきたナシの被害に、言葉が詰まります。
「特に今年はいい実がなってたんで。それが一番ショックですよね 」
多くの被害に遭った梨農家を支援しようとする動きもあります。
避難所にある1台のキッチンカー。
避難住民
「あー、おいしいです」
提供されていたのはナシジュースです。
やつしろサニーサイドファーム
担当者
「(被害に遭ったナシが)そのままだと腐るだけなので、何かできないかなと思って」
多くの農家が被害に遭っていると知り、取引している農園の被害に遭ったナシを回収。ジュースにして無料で避難住民に提供することに。支援の輪を広げようと、現在は各農家から落ちずに残ったナシを買い取り、インターネットで販売しています。
やつしろサニーサイドファーム
桑原健太代表
「ちょっと笑顔が生まれるような形になればいいのかなと」
農業用水路も被害
さらに、こんな被害も。
イチゴやブドウを育てている農園では、土の消毒を行っていたレーンや水を送るパイプなどが、ほぼすべて壊れてしまいました。
イチゴ農家
松本寿雄さん
「(元の状態に)戻すには、お金も1000万円以上。先の生活が難しいですね。頑張らないとしょうがない」
農作物を育てるのに重要な施設も被害に遭いました。壊れたのは「不知火(しらぬい)幹線水路」と呼ばれる農業用水路。この水路から枝分かれした水路を通じて、八代市周辺の広大な農地へ水を送る重要な役割を担っています。
水路を管理する農家
「あれ見られて分かりませんか。まだ(破損が)軽いほうなんです」
「(Q.板が貼ってありますね。後ろのコンクリートが割れている)あれだけ(壁)ずれているでしょ。向こうとこっち側で。(このような場所が)点々とあるんですよ」
「(Q.そこから水が漏れちゃう?)漏れてる」
水路が至る所で壊れたことにより、水漏れが発生。破損箇所の復旧工事を行うため、水をせき止めていたことで、さらに水不足に。
6日から通常の水量の50%を流すといいますが…。
「水がほしいから、皆に行き渡る状態じゃないと思いますね」
干上がる田んぼ ずれた畔
西日本有数のコメどころでもある熊本。不知火幹線水路を使う水田に向かうと…。
コメ農家
「(Q.ひび入っていますけど?)今水張ったところ。普段は」
「(Q.水を張っている時期なんですね?)今から穂をつける時期なんです。ですから水は張っておかないと」
水田には、水は全くありません。脇の水路を流れる水は、ほんのわずかです。
この辺りの水田は干拓地に作られていて、地震で液状化したことで地表に砂が。さらに…。
「畦(田んぼの仕切り)がずれている」
一直線のコンクリートの畦が、断層のずれによって壊され、左に大きくずれているのが分かります。
また、これまで同じ高さだった水田に、高低差もできてしまいました。水路に水が来ないうえに、さらに水がたまりにくい状況です。
「(Q.今水が必要な時期?)一番必要です。一番いい時です。稲に対して一番(水が)ほしい時期です。これがだんだん成長していって、膨れて開花する。それができない」
このまま収穫期を迎えると、コメの品質が悪くなり、収穫量も大きく減ってしまうといいます。
「皆覚悟をしている、今年は」
ボランティア本格化も…
復旧に向けて、動き出していることもあります。
5日から熊本市でボランティアの受け入れが始まり、参加者らは高齢者の住宅を中心に、倒れた家具を元に戻す作業などを手伝いました。
美里町では、4日からボランティアの受け入れが始まっています。
自宅が被災した男性(79)
「私は足があんまり良くないから、(物を)抱えることができない。本当にありがたいです」
一方で、被害の大きかった八代市、氷川町、宇城市などでは、さらに人手が必要なのにもかかわらず、ボランティアを受け入れる態勢が整っていません。
避難所では、人手不足が深刻な状態となっています。
(2026年8月6日放送分より)
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