
『持たず、作らず、持ち込ませず』これが核に対する日本の姿勢です。ところが、核が持ち込まれていた場所があります。戦後、アメリカの統治下にあった沖縄です。
【画像】「米軍にとって都合のいい空間」日常のそばで核の投下訓練…冷戦下の核拠点 なぜ沖縄
いまも残る“核兵器の痕跡”
読谷村に住む仲村渠一俊さん(72)。高校生のとき、巨大な兵器を目にしました。
仲村渠一俊さん
「配備されているときの状態を見たことはないんですけど、撤去されるのを見て」

仲村渠さんが見たのは、のちにアメリカの資料によって、核ミサイル『メースB』だったことがわかりました。
アメリカの公文書館には、ミサイルを組み立てる様子が記録されており、その威力は、広島型の約70倍です。

仲村渠一俊さん
「(Q.異様さは感じた)そういうのはないです。(当時)僕は少年だったし、かっこいいなとしか見てない。近くにジェット機とかが落ちたりする時代ですから、慣れているんでしょうね」
そのメースBを配備していた基地が、いまも形として恩納村に残っています。


今回、特別に許可を得て、その中に入ることができました。
内部は、分厚いコンクリートに閉ざされた空間。足音だけが響く通路。奥へ進むと、その先にあったのが、核の発射ボタンが置かれた制御室です。この制御室を含む基地の中枢は、地下に隠されていました。階段を上ると、ミサイルの発射口へとつながっています。

外から見ると、発射口は全部で8つ。ここから、いつでも核ミサイルが撃てるよう、準備されていたのです。
戦後、沖縄は、メースBにとどまらず、最大で約1300発もの核兵器が配備され、アジア最大の核基地となっていました。
冷戦下の核拠点 なぜ沖縄に
アメリカが、沖縄に核を集中させた背景に、当時の緊迫した国際情勢があります。

1950年、アメリカは朝鮮戦争をめぐり、中国と軍事衝突。さらに、ソ連が大陸間弾道ミサイルの技術を確立し、冷戦下の対立は深刻さを増していました。
この脅威に対抗するため、アメリカが核戦略の拠点として、目を付けたのが沖縄だったと、国際政治学者で、沖縄の核の歴史に詳しい我部政明さん(71)は言います。

琉球大学 我部政明名誉教授
「沖縄の基地は、当時からアメリカにとって、自由に使えるところ。つまり、米軍にとって、都合のいい空間(軍事基地)が沖縄にある。そういうところに、核兵器を配備することが、最も容易な方法であった」
アメリカの資料にも、こうあります。
プライス勧告(1956年)
「ここ(沖縄)では、核兵器を貯蔵、使用する権限に対して、何ら外国政府の制約を受けることはない」

その後、日米安全保障条約の改定の際にも、アメリカが核を持ち込む場合は、日本政府と事前に協議すると決められましたが、日本の外務省の内部文書には『沖縄を含まない』と記されていたのです。
つまり、日本が選んだのは、自国の安全保障のために、核の負担を沖縄に押し付けることでした。
日常のそばで…核の投下訓練
そうした状況下で、“ある訓練”が秘密裏に行われていました。

沖縄本島の北部に位置する伊江島。
ここで、核の投下訓練が繰り返し行われていました。
2年間、沖縄に駐留し、この訓練にも参加したという元米軍パイロットのビル・クリスさん。

ビル・クリスさん
「私たちは、『イエシマ』と呼んでいました。兵器の投下練習ができる唯一の射爆場だったので、いつも使っていました。月に最低20時間は飛ぶようにしていました。(Q.核兵器投下の訓練であると認識していたのか)まさに、そのためのもの。核兵器の投下システムだった」
こうした投下訓練のために、米軍は基地を拡大。伊江島の住民は、土地を奪われ、機銃の薬莢(やっきょう)や不発弾などを集めて、暮らしを支えていました。不発弾の処理中に爆発して、住民が亡くなったという痛ましい記録も残っています。

その後、1972年。
『核抜き・本土並み』を掲げた沖縄の日本復帰に伴い、アメリカの核は撤去されることとなります。

琉球大学 我部政明名誉教授
「核兵器の沖縄に置かなければならない事情がどんどん低下してきた。とりわけ、水中で動く原子力潜水艦に(核兵器を)搭載すれば十分ではないか。沖縄の陸地に、常時、置いておく必要がなくて、むしろ、そのことが、沖縄の人や日本の多くの人が、反米的な感情にならないためには、核兵器を撤去した方がいいという考え」
「核抜き」の裏に“日米密約”

しかし、その裏で、日米トップ2人の署名とともに、密約が交わされていました。
それは、緊急時の際、再び、核兵器を沖縄に持ち込むこと。そして、嘉手納、那覇、辺野古の核弾薬庫を維持し、使えるようにしておくこと。

のちの民主党政権が、この問題を検証し、「広義の密約はあった」と報告しています。
あれから50年以上の時が過ぎ、世界を取り巻く核の問題は、大きく形を変えています。
先月6日には中国が、原子力潜水艦からミサイルの発射訓練を実施。中東では、核開発をめぐり、アメリカとイランが衝突。
いま、世界には、1万発近い核が“抑止力”の名のもとに、存在しています。
