
私たちの生活を守る重要な施設「ダム」。雄大な景観だけでなく、迫力ある放流や内部の環境を生かした意外な取り組みなど、多彩な魅力があります。今回は、800以上のダムを訪れたダムマニア&ダムライターの宮島咲さんに案内してもらいます。
【画像】ニンニクやショウガなど7種類のスパイスを使ったこだわりの宮ヶ瀬ダム放流カレー
高さ156mの宮ヶ瀬ダム
最初にやって来たのは、神奈川県にある首都圏最大級の宮ヶ瀬ダムです。
佐藤ちひろアナウンサー
「かなり大きいですね」
宮島さん
「ダムはコンクリート部分をダムっていうんです。水をせき止める部分をダムといいまして、こっちは貯水池とかダム湖とかそういう名前です」
2000年に完成した宮ヶ瀬ダムは、神奈川県で最も広い面積のダム湖を持つ、まさに神奈川の水がめです。
「下に降りられますので、乗り物に乗っていってみましょう」
ケーブルカー「宮ヶ瀬インクライン」に乗って、ダムの下へ向かいます。
佐藤アナ
「結構傾いてますね」
宮島さん
「昔は、ここにダンプカーを積んで上がり下がりしていたんですよ」
インクラインは、ダンプカーに積んだコンクリートを降ろさず、ダムの上まで運べます。また、工事用道路を造るために山を削る範囲を最小限にできることから、宮ヶ瀬ダムで、世界で初めて導入されました。
約4分でダムの下に到着。そこには圧巻の眺めが広がっていました。
佐藤アナ
「下から見ると圧巻ですね」
宮島さん
「すごい迫力でしょう。高さが156メートルです。使ってるコンクリートの量が日本一です」
名物イベント「観光放流」
宮ヶ瀬ダムでは、観光客にも大人気の名物イベントがあります。その瞬間までダムの前で雑談していると、勢いよく水が流れ出しました。
宮島さん
「6分間、放流ショーをやります」
佐藤アナ
「こんな勢いよく出るんですね」
宮島さん
「毎秒30トン。大体、ビール瓶6万本が1秒間にガーッと来ている感じです」
佐藤アナ
「ビールの泡に見えてきますね。おお、風がすごい」
ここでは通常の放流は地中で行われ、2つの発電所を通って最大2万5400キロワットの電力を生み出してから、河川へ流れていきます。
ダム内部でチーズを熟成
宮島さんが見せてくれたのは、愛用の名刺入れです。記されたアルファベット「F.N.A.W.I.P.」は、ダムの「役割」を表しています。役割は水道用水や発電のほか、洪水調節、農業用水など全部で6つ。
ダムカードにも記載されていて、宮ヶ瀬ダムは洪水調節、河川維持用水、上水道用水、発電を担う多目的ダムです。
さらに、ダムの内部では面白い取り組みが行われています。
佐藤アナ
「なんかひんやりしてますね」
宮島さん
「EL157.5メートル。標高157.5メートルですね」
佐藤アナ
「標高のことなんですね。さらに寒くなってきていますね」
宮ヶ瀬ダム周辺振興財団 下嶋岳志さん
「年間を通じて10℃から15℃くらいの間で推移している」
このダム内部特有の環境を生かしているのが、チーズの熟成です。去年2月から、近隣の服部牧場と協力してチーズを熟成させています。
下嶋さん
「冷蔵庫だと開け閉めで温度が変わります。ダム内は年中ほぼ同じ温度・湿度なので、環境的により良い場所だと言っていいと思います。せっかくですので、ご用意しました」
佐藤アナ
「おいしいです。すごくコクがあります」
宮島さん
「すごくうまい。僕も貯蔵してもらいたいです」
このチーズは毎月第一日曜日に服部牧場で販売されています。また、宮ヶ瀬ダムで熟成した酒も2019年10月から一般販売が始まっていて、現在はコーヒー豆の熟成にも挑戦中だといいます。
宮ヶ瀬ダムを訪れたら、ぜひ体験してほしいと宮島さんが勧めるダムグルメもあります。
名物カレーで「放流」も
登場したのは、ダム観光の定番「ダムカレー」です。
佐藤アナ
「いただきます」
宮島さん
「ちょっと待ってください。普通に食べないほうが楽しめます」
野菜をご飯の上に移動させ、奥から少し顔を出したウィンナーを引き抜くと、カレーが流れ出します。
宮島さん
「無事、合流開始しました」
佐藤アナ
「うれしいですね」
楽しめるだけでなく、ニンニクやショウガなど7種類のスパイスを使った、こだわりの宮ヶ瀬ダム放流カレーです。
佐藤アナ
「おいしいですね。結構体が温かくなるような、ほんとスパイスが結構入ってますね」
宮島さん
「ダムカレーの中でも1、2を争うおいしさですね」
建設に19年、小河内ダム
続いては、都心から車で約2時間、東京・奥多摩にある小河内ダムへ向かいます。
宮島さん
「小河内ダムっていう東京都にあるダムで、高さが149メートル、長さ353メートル、湖にたまってる量が大体2億トンです」
佐藤アナ
「大きすぎてもう分からないですね」
小河内ダムの水源は丹波川、小菅川、峰谷川で、東京都の水道用水の約2割を供給しています。残りの8割には、荒川や利根川の水が利用されています。
1957年に完成し、来年で70周年を迎えるこのダムの建設は、東京の人口増加に合わせた国の一大プロジェクトでした。戦争による約5年間の休止を含め、完成までにかかった期間は19年。完成後には、昭和天皇と香淳皇后も視察されました。
宮島さん
「ダム好き的には、こっち側(貯水池側)よりあっち側(反対側)を見たいんです。こっち側(反対側)がダムの顔です。学術的には貯水池側になります」
無料で入れる展望塔に上ると、ダムを見下ろす景色が広がります。
佐藤アナ
「高いですね。足がすくんでしまいますね」
宮島さん
「高さといい、コンクリート感がものすごくかっこいいですよね。そして、そこのプールみたいなのがありますね。プールの先、白く出たあの水、多摩川に生まれ変わった水ですね」
佐藤アナ
「ここから多摩川がスタートなんですね」
宮島さん
「そこから多摩川ですね、リメイクされて多摩川になった」
多摩川が始まる手前にある白い建物は発電所です。配管はダム側だけでなく、山側からも伸びています。
「実はぐるっと山を回って、あそこの高台から取っています」
ダムの周囲を通る配管のルートは、冷水対策施設として1992年に造られました。当初造られたダム側の取水管では冷たい水が河川に流れ、魚や川のレジャーに影響するため、温かい表層部分から取水し、川へ流れる水の温度を調節しています。
ダムを支えた人々の歴史
この日は雨が少ない影響で、水位が低下し、普段は見えないものが姿を現していました。
宮島さん
「色が変わっている部分が分かりますね。あそこまで大体水があるんですけど、水位が低いので見えちゃいけないものというか、普段見えないものが見えています」
佐藤アナ
「結構階段とかもしっかり見えてますもんね」
宮島さん
「足場みたいなものが昔のコンクリート工場だったらしいですね」
建設当時は効率化のため、山から削り出した骨材と、専用列車で運ばれた砂やセメントを混ぜ、この場所でコンクリートを作っていました。そのコンクリートは、1杯6立方メートルのバケツで運ばれました。ダムの体積は約168万立方メートルで、その回数は単純計算で約28万回に及び、昼夜を問わず作業が行われたといいます。
宮島さん
「ダム見学で忘れてはいけないことがあるんです。このダムは87名の殉職者がいらっしゃるそうです。建設に携わった人がいたから、普通に電気が使えますし、水が飲めます」
佐藤アナ
「本当に感謝を忘れちゃいけないですね」
(2026年7月23日放送分より)
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