「外食業」で受け入れ停止 激化する外国人“引き抜き合戦”と地方の人手不足の実態

「外食業」で受け入れ停止 激化する外国人“引き抜き合戦”と地方の人手不足の実態
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「外国人との共生」を考えるシリーズの第三弾。今回は、いま地方で起きている“想定外の事態”を考えます。訪日観光客が増加する一方、各地で深刻化する「人手不足」。働き手を確保するための、外国人労働者の“獲得競争”が、激しさを増しています。(9月5日OA「サタデーステーション」)

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“東京並みの家賃”働き手確保が課題

野生のウミガメ
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地方では今、働き手を確保するためにどんな工夫をしているのでしょうか?サタデーステーションが向かったのは、沖縄県の宮古島。観光シーズンの真っただ中、賑わいを見せていたのが、野生のウミガメに出会うことができる、シュノーケリングツアーです。ガイドをサポートしていたのは、東京出身の、あのんさん。3か月前から、時給1200円のリゾートバイトとして働いています。

東京出身のリゾートバイト あのんさん(20)
「カメさんはいつ見ても可愛いです。性格もみんな違うんですよ。東京ではこんな景色見られないので、本当に毎日、今でも感動しています」

この仕事を選んだ理由の一つが、手厚い待遇です。ガイド資格の取得費用負担や往復航空券代の補助、さらに、島の中心部にある寮は、光熱費込みで、月に1万円からです。

東京出身のリゾートバイト あのんさん(20)
「寮がなかったら、ちょっと生活できません」

これほどの好待遇には、理由があります。宮古島ではここ数年、家賃をはじめとする生活コストの上昇が際立っているのです。

あのんさんのバイト先「宮古島マリンSUGAR3」 小林瑠唯代表
「一人暮らしするってなったら、8万~10万円くらい家賃がかかるので、東京と変わらないくらい家賃も上がってきているのかなって。ガソリンに関しては1リットル190円前後(7月地点)なので、かなり高い」

アスパラ
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島内のスーパーをのぞいてみると、アスパラが500円。キノコ類は180円。離島ならではの物流コストなども重なり、宮古島では、物価高がより深刻になっています。一方で、沖縄の賃金は、全国で最も低い水準です。その結果、飲食店やホテルなどでは、深刻な人手不足に悩まされていました。

「外食業」の外国人“受け入れ停止”で深刻な影響

報告・朝倉有香ディレクター
「こちらの民謡居酒屋では、外国人の方がキッチンで働いています」

2年前にネパールから来日した、タラビルさん。外食業で最大5年間働くことができる在留資格、「特定技能1号」を持っています。

居酒屋「郷屋」 奥平幸司代表
「宮古島って今、世界中に向けられた観光地になっているので、ホテルも飲食も欠かせない中での人手不足。特定技能の外国人にも頼らないといけない部分はある」

ところが、店は“想定外の事態”に直面していました。本来、この夏は、7人の外国人スタッフが働く予定でしたが、現在、在籍しているのは3人だけ…。

ネパール出身 タラビルさん(32)
「最近、社員が少なくて、いつもより頑張りすぎになっています。でも大丈夫。ネパールから働くためにきましたから」

政府の発表
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きっかけは、外食業界に激震を走らせた、政府の発表でした。今年4月、政府は、タラビルさんも持つ「特定技能1号(外食業)」について、新規の受け入れを停止。「特定技能1号」は19の分野に分かれ、それぞれ受け入れ人数の上限が設定されていますが、その中で「外食業」だけが、上限の5万人に達する見込みとなったためです。新たな人材を海外から呼ぶことが難しくなり、この店では、6月から働く予定だった4人の来日も遅れ、今後の人材確保が見通せなくなっています。

居酒屋「郷屋」 奥平幸司代表
「寮もできてる。みんなペンキ頑張って塗った。もういつでも来い、来たら一緒に頑張ろうなって感じだけど、なかなか来ないので困った」

沖縄→東京で時給1.5倍も

もともと、賃金の低さから、人材流出も課題となっている沖縄。では、なぜ、タラビルさんは宮古島を選んだのでしょうか?

ネパール出身 タラビルさん(32)
「ネパールでは田舎に住んでいました。だから静かな町は好き」

しかし、こうしたケースは相当珍しい、と語るのは、離島の採用支援を行う企業です。

離島の採用支援「島の人事部」 千田泰平代表
「お金を稼ぐ目的で来ている外国人からしてみれば、海がきれいって関係ないので、よほどのことがないと沖縄に定着しづらい。(宮古島は)給料が低いけど物価が高いから、手元に残るお金がどうしても少なくなってしまう。給料でも家賃でも絶対この島は勝てないので(外国人の)引き抜き合戦になってしまうことが大きいリスクかなと」

限られた働き手を巡る“引き抜き合戦”が激化すれば、有利なのは、大都市です。深夜割増で稼げる仕事も多く、実際、東京で働く外国人に時給を聞いてみると…

ミャンマー出身 留学生
「午後10時以降なら1850円。お金(時給)が高い、あと時間も調整できるし」

沖縄から東京に拠点を移したことで、時給が1.5倍以上になった、という人もいました。

ネパール出身 留学生
「東京は時給が高いし、いろいろな良い仕事も見つかるから、東京の方が良いです」

東京を選ぶ理由は、賃金だけではありません。

インドネシア出身・特定技能1号(介護)
「家賃は無料です、会社からもらったから。 東京だから嬉しい、助かります」

地方の人手不足どう解消? 外国人材の“地域偏在”課題

今後、新たな外国人材の受け入れが難しくなることで、地域格差がさらに広がる懸念もあります。沖縄本島のホテルでは、“引き抜き”の加速に警戒を強めていました。このホテルでは、特定技能1号などを含む、およそ150人の外国人を雇用。海外の日本語学校と提携するなど、採用や教育に力を入れてきました。しかし…

ホテル運営会社「かりゆし」 人財本部 當眞梓本部長
「一定程度せっかく育てても、県外とか、より待遇の良い所へ移ってしまうことがあったので、より良い待遇を当社としても見直していった」

特に力を入れてきたのは、国籍を問わず、無料で入居できる社員寮です。ホテルのすぐ近くにあり、1人部屋で1日2食付き。さらに、ジムや買い物バスまで完備しています。また、毎年継続して外国人スタッフを採用することで、先輩が後輩を支える関係も生まれ、生活面でも育成面でも、メリットがあったといいます。しかし、今回の措置で、この好循環もストップ。ホテル側は、受け入れ停止の撤回などを求める要望書を国や県に提出する予定です。

ホテル運営会社「かりゆし」 人財本部 當眞梓本部長
「採用競争が激しくなるだろうと思っています。宿泊業界はやりがいと給与のバランスが悪いという話も聞きますし、そのイメージの払拭は、業界全体で取り組んで行く必要がある」

高島彩キャスター:
「沖縄では、外国人に限らず、そもそも、働く人が足りていないようですね」

求人倍率
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桝田沙也香アナウンサー:
「沖縄県の7月の求人倍率を見てみると、接客業では1人に対して店からの募集が約2.7倍、調理の仕事でも約1.8倍と人手不足が続いています。こうした状況に対応するため、外食業や農業、建設、介護など特定の分野で外国人が働けるようにしたのが“特定技能”という在留資格ですが、宮古島の飲食店からは『外食業の受け入れ上限5万人を、もっと増やしてほしい』という切実な声も上がっています。ただ、外国人政策に詳しい日本総合研究所の石川智久さんは『事情は理解できるが、外食業の上限5万人という数字は、日本人の雇用を守るために設定されているのも事実。安易に上限を上げると、欧米のような分断が起きる懸念もある』と指摘しています」

ジャーナリスト・柳澤秀夫氏:
「少しでも多く賃金が欲しいのは誰でも同じ。給料が高い都市部に、“特定技能”の外国人が集まってしまうという問題はあるかも知れませんよね」

桝田沙也香アナウンサー:
「石川さんは『法律上の権利や人権に留意したうえで、地域の状況に合わせて“〇〇県で働くこと”を条件にするような、思い切った制度変更を検討してもよいのではないか』とのことでした」

高島彩キャスター:
「思い切った制度変更ということですが、働く地域を限定することで外国人の方にとって日本で働く魅力が薄れてしまうという、という心配は無いんでしょうか?」

桝田沙也香アナウンサー:
「例えば、お給料でいうとネパールでは時給100円。沖縄の最低時給と比べてもおよそ10倍の差があります。また12月には最低賃金の引き上げも予定されていて、地方でも日本の賃金はまだ魅力的だと言うことです。さらに、石川さんによると、『欧米諸国が、外国人労働者の受け入れを制限する方向にシフトしていることで、相対的に“日本に行きたい”という人が増えている』ということでした」

ジャーナリスト・柳澤秀夫氏:
「こうして見ると、都市部と地方の賃金格差という問題が背景にあるんだと分かるんですが、そうなると、どうしても地方の人手不足を解決しにくい。その部分を外国の人たちに何とか頼ろうと思ってるけど、(賃金の問題で)都市部に行ってしまうということになるとすれば、大枠で外国人の受け入れ枠を今は決めてますが、地域の実情に則した形で受け入れ枠を決めていく。そういう考え方があってもいいかもしれませんね」

高島彩キャスター:
「地域、外国人、双方にとって納得できる形を模索したいですし、人手不足を補うだけでなく、安心して暮らせる街づくり、そして持続可能な制度にして頂きたいと思います」

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