シリーズ13年ぶりの完全新作となる『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』が、全国で劇場公開中だ。総監督の新房昭之氏、キャラクター原案の蒼樹うめ氏、脚本の虚淵玄氏といったオリジナルコアスタッフが再集結して、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』から続く物語が描かれる。
『ワルプルギスの廻天』の音楽は歴代シリーズ同様に梶浦由記氏が担当。劇伴と主題歌「彼方」にて、『魔法少女まどか☆マギカ』の世界観を彩っている。本記事では、梶浦氏にインタビューを行い、音楽制作においてどのようなことを考えていたのか、主題歌「彼方」に込めた想いなどを伺った。
——『ワルプルギスの廻天』の音楽制作ですが、こういう方向性の音楽がほしいという全体的なオーダーはあったのでしょうか?
梶浦由記氏(以下、梶浦):音楽打ち合わせを主要スタッフの方々と行って、みなさんの作品に対する想いを伺いつつ、私が悩んだところについてはどうしましょうかと相談して。あとはお任せいただいたような形ですね。
本作はフィルムスコアリング(※)で音楽を作っていったので、お任せとは言っても鶴岡(陽太)音響監督が音楽を入れるシーンをすべて指定してくださっていたんです。
※映像に合わせて音楽を制作していく手法。
——『まどか☆マギカ』は映像の情報量が多い作品ですが、どのように解釈されていったのでしょうか?
梶浦:ここで音楽が入るということは——音楽がない無音のシーンと比べて——こういう感情なのだと、位置の指定自体が半分くらい説明してくれているんですね。そこから私が解釈をして、すごく迷うところは相談して。踊っているように戦うバトルシーンは、セリフも少なくて絵と音楽にシーンを任せてくださっていると思うと、すごく作り甲斐はありましたね。音楽自体がすごく長いものもありますが、無音のシーンも長くて。
——『まどか☆マギカ』らしさのある音楽が印象的でした。
梶浦:作ったときの印象としては、前半に関しては(見ている人に対して)『まどか☆マギカ』におかえりなさいと言うような、『まどか☆マギカ』らしい音楽をとにかく付けようと思っていました。
やっぱり(『まどか☆マギカ』と言えば)「こういう映像でこういう世界観でこういう音楽でしょ?」という。難しかったのは、本作は群像劇のようになっているので、誰かに絞って寄り添うような作り方ができないことと、後半になるに従って、見ている方の印象で受け取り方が違うシーンが増えてきて。
——そうですね。考察しがいのあるポイントも多くて。
梶浦:音楽が説明しすぎてしまうと見ている方をミスリードしてしまうので、そういうところには美しくて音圧はあるけれど、ここが感動的なのか悲しいのか説明しない音楽というものをつけることに注力しました。
後半の謎が深まっていくところは、私自身あまり深く解釈をしすぎないよう気をつけました。解釈を迷うような場所は、迷うまま音楽を作ろうと。そうしないと見ている人を引っ張ってしまうなと思ったんです。
すごく美しい映像になっているので、「綺麗で感動する音楽を描きたい!」となってしまうのですが、それをやってはダメだと(笑)。
音楽に引っ張られてしまうと、シーンの難解さも伝わらなくなってしまう。光は光だけでしか描かないというか、光の中にカッコよさを勝手に作らないようにしたシーンがいくつかあって。そういうシーンがいちばん印象に残っているかもしれません。音楽を音楽にしすぎてはいけないみたいな。
——たしかに映像において音楽の占める割合は大きいので、非常に興味深いお話です。
梶浦:みんな違うことを考えて解釈していいからこそ、音楽がそれを邪魔したくないんですよね。その自由さをちゃんと残したいという思いが強かったです。それでも悩んだシーンについては、打ち合わせで相談しながら。
梶浦氏が悩んだシーンは?
