14日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に、介護士でありお笑い芸人の“ももち”こと柏崎桃子が出演。軽度知的障害をもつ19歳の息子のシングルマザーである柏崎が、リアルな育児トークを全開で“発達障害”について語った。

「月曜から夜ふかし」(日本テレビ系)の街頭インタビューに答えたことから話題になり、一気に人気者になったが、その人生は波乱万丈だ。
柏崎は高校2年生、17歳のときに子供ができ、高校3年生で出産。結婚もしたが、24歳で離婚している。子供は5歳のときに病院で「遅れがみられる」と診断され、発達障害がわかったという。1歳の頃から(言葉が遅かったり手が不器用だったりといった)兆候はあり、診断をうけて「確信」になったと振り返る。


■息子が「発達障害」と診断されたとき
番組では、そんな柏崎の生活に密着した。彼女は現在、家賃は4万5千円のアパートにひとり暮らし。芸人をしながら、介護士も続けている理由は「最終的に介護施設をつくるのが夢」なのだとか。介護施設だけでなく、障害者や児童館、保育園なども網羅したような施設を思い描いているという。
息子は今、実家の栃木で祖父母と一緒に暮らしている。介護士として働くなか、柏崎に“お母さんとラインしてないなーと思って”というだけのLINEを送ってくるなど、心優しい息子だ。その息子を18歳で産むとき、そして発達障害と診断されたときの気持ちを、柏崎はこう語る。
「産みたいという思いしかなかった。でも、産んでからのほうが不安は大きかったかもしれないですね。産まれるまでは、普通に育つと信じてわくわくして過ごしてきたので、産まれてから、あれができない、これができない、ってなったときに、『あれ?』って。辛かったです」
「子供って、普通に育つのが普通じゃないんだって改めて言われた感じ。生まれたことは奇跡だっていうけど、本当だ! って」
――具体的なあらわれというのは…
柏崎:息子の場合、字をかくのが苦手だったり、距離の概念がわかりづらいということがありました。距離はどう教えてもわからなくって。字は、泣きながら何回も練習させました。つきっきりで。
――発達障害とわかったときの周囲の反応は…
柏崎:理解してくれる人はしてくれるけど、してくれない人はまったくしてくれない、
見た目は全く普通の子なんです。でも遊ぶときにできないことがあると、(子供の間で)いじめが始まるわけですね。そして教育段階になると、今度は『お宅のお子さん、○○ができませんよね』というようなことを常に言われます。鬱になりますよね。
――そんななかで、気持ちをどう明るくもってきたのでしょうか。
柏崎:離婚してから、泣いてばかりの子育てをしていたんです。そうすると、結果的に子供にあたってしまう。でもある日、テレビで、誰かタレントさんが“今悩むんじゃなくて、何かあったときに悩めばいい”って言っているのを聞いたときに、これだ! と。そのクセをつけなきゃいけないと。“今は楽しいんだから、笑いましょ”ってクセをつけたら、こんなになっちゃんですよ! ハハハハハ!

■「発達障害」とは何なのか
現在日本で規定されている発達障害は、
主に自閉症やアスペルガー症候群を含む「広汎性(こうはんせい)発達障害」
ADHDといわれる「注意欠陥多動(ちゅういけっかんたどう)性(せい)障害」
LDといわれる「学習障害」
などにわけられ、それぞれでも個人差がとても大きいものだ。
昔は「発達障害」という概念自体がなく、2004年に「発達障がい者支援法」が作られた。そのため、最近よく言われているのが「大人の発達障害」だ。
発達協会の湯汲英史常務理事によると、そもそも法律ができる前までは、これらの症状は「欠点」「短所」といわれていた。子供の頃にこうした「発達障害」の概念がなく、目に見えない障害であったことから、自覚がないまま大人になり、社会に出て職場でコミュニケーションがとれないなどの問題を抱えてしまったりすることが「大人の発達障害」と言われている。現在でもわからない部分が多いため、未だ議論が交わされているテーマでもある。

■発達障害を抱えながら、実際に企業で活躍されている西上建設・石橋尋志さんが番組に登場
西上建設で営業職に就いている石橋さんは、現在37歳。27歳のときにADHDと診断をうけたという。
――どうしてわかったのでしょうか。
石橋:会社員になって、できると思ったことがいろいろできなくて。これはちょっとおかしいぞと思ったときに、母親が「これちゃうか?」と発達障害の本をみせてくれて、それを読んで、病院に行きましたね。
――今、発達障害で悩んでいる大人の方たちに伝えたいことはありますか。
石橋:(自分は)いろいろ一人で工夫したり改善したりしてもあんまり効果がなかったので、一人で悩まずに誰かとつながってほしいなと思います。
――27歳まで気が付かずに…、具体的な症状というのは?
石橋:私の場合注意欠陥なので、車を運転中に信号や標識を見落とすとか、書類をつくったら見積書を一桁間違っているとか。1つずつみると、皆(誰でも)ある(ミス)という話なんですけど、数や頻度が半端ないんです。
こうして(皆と)同じように話していると、ふつうに電話の応対も出来ると思いこまれて…。私の場合コミュニケーション(そのもの)は問題ないけど、それ以外でできないことがあって、そのギャップが障害になります。外からみてわからないので…。
――今の会社の人たちは?
石橋:サポートしてくれています。理解は、半分くらいですかね。どちらかというと、“発達障害だから助けてあげよう”じゃなくて、“石橋くんは頑張ってるから助けたろ”という感じですね。めちゃくちゃありがたいですし、生かされてるなあと思いますね。
石橋さんの話を聞いた柏崎は、「ちょっと子供の将来を、安心しました。理解してくれる人がまわりにいるって、どれだけ安心か。症状もわからないまま、ただダメじゃんってつらい。“どうすればできるようになるのか”と話し合える場が会社にあって。(人を)分けるんじゃなくて受け入れる、日本全体がそうなってほしい」とコメントした。

▪︎ももちが介護士をしながら、芸人の世界に飛び込んだ理由
「私以外にも悩んでいる人がたくさんいて、世の中に何か発信できる人になれないかなと。原点は子供です、発達障害とかなかったらここにはいなかったです」
という柏崎。「見た目でお笑いにいっちゃったんですよね! お笑い芸人見習いのブロガーと思ってもらえれば! アハハハハハ!」「最近ゆるキャラみたいになっちゃって!」とやや自虐ネタを含めつつ豪快に笑う。
そして自分と同じように悩む母親には、
「悩まないで。なるようになるから、諦めないで! 相談する窓口はこれから絶対増えてくはずだから。頑張りましょうね!」
と呼びかけた。ブログ名には「スラムダンク」の名言、安西先生の「諦めたら試合終了だよ!」をつけている柏崎。その言葉、その姿勢には、確かな強さがある。
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