度重なる噴火で形作られた火山島で、屋久島から1日1便のフェリーしか移動手段がない口永良部島。現在の島民はわずか88人という絶海の孤島で、2人は2歳の娘と3人で暮らしている。夫婦が営む「港のとと屋」は2年前にオープンし、現在は予約制で日替わり弁当などを販売しているが、島には他に飲食店がなく、給食のない時期には学校の先生も頼りにする大切な存在である。営業後、夫は素潜り漁師に変身し、険しい岩場を越えて水中銃で魚を仕留め、その魚は弁当のおかずとしても活用されている。
実は夫婦ともに島外からの移住者である。東京出身の夫は仕事につまずき、地域おこし協力隊への応募をきっかけに6年前に移住。群馬出身の妻も新潟でデザイナーとして働く中で人間関係に悩み、「人が少なくて海が近いところ」を求めて5年前にやって来た。
人口88人の島では若い女性の移住はすぐに噂になり、夫は妻が到着する日に港へ足を運んで姿を確認していた。後日、港で1人釣りをしていた妻に夫が「魚釣れてますか?」と声をかけたのが最初の会話となった。その後、夫は獲れた魚を持って「一緒に夕飯食べませんか?」と誘うようになり、訪問頻度は週1回から毎日へと増加。気づけば半同棲状態となった。
しかし、付き合っていない状態にもかかわらず、夫から出た言葉は「ちょっと距離を置こう」という衝撃の一言であった。夫は「付き合うなら結婚前提じゃないと無理」と言う一方で「まだ他の女性とも知り合いたい」と本音を吐露し、妻は「マジ、クソな男なんですよ」と激怒して距離を置くこととなった。
ところが1週間後、夫が軽トラで妻のもとに届けに来たのはまさかの“茄子の揚げ浸し”。「ご飯はちゃんと食べてほしいから」という夫に対し、MCの藤井隆も「せめて魚やろ!」と猛ツッコミを入れたが、妻は「来てくれた」ことがうれしく、2人の距離は再び縮まっていった。
転機となったのは、夫が杉の伐採作業中に滑落して右肩を脱臼した事故だ。身の回りの世話をした妻の存在の大きさに気づいた夫は、半同棲から約1年半を経てついに告白し、正式交際へ発展した。
交際開始から約2ヵ月後、自宅であっさりしたプロポーズをした夫だったが、実はサプライズを用意していた。地域おこし協力隊として出演していた地元ラジオの放送時、海が見える港へ妻を連れ出した夫は、福山雅治の「家族になろうよ」をリクエスト。番組内で妻への感謝とプロポーズの決意を語り、曲の後に改めて「これまで一緒にいてくれてありがとう。これからもずっと一緒にいてほしい。結婚してください」と真正面からプロポーズした。思わぬサプライズに妻は「こんな素敵なことって起こるんだ」と感激して涙し、紆余曲折を経て結ばれた2人は、現在も口永良部島の豊かな自然の中で幸せに暮らしている。
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