
突如2つの大国のトップが合意した、ロシア産軽油の世界市場への供給。制裁を緩和してまで踏み切ったその決断は、私たちの暮らしに影響するのでしょうか。(サタデーステーション10月10日OA)
なぜ今「軽油」?“ロシア産軽油”を世界供給へ
アメリカ・トランプ大統領(9日)
「我が国に大量の石油が入ってくることになる。正直なところ、プーチン大統領に感謝したい。しかも、我々が求めていた軽油(ディーゼル)だ。本当にありがとう」
9日、アメリカのトランプ大統領とロシアのプーチン大統領は電話会談で、ロシアが直ちに30万トン以上の軽油をアメリカなどの世界市場に供給し、11月以降も増やすことで合意しました。アメリカ財務省はロシア産軽油への経済制裁を来年4月まで、緩和すると発表しました。なぜ今、軽油なのでしょうか?
エネルギー経済社会研究所 松尾豪代表
「(軽油を含む)石油製品の価格上昇は、支持率にも影響をしかねない、選挙の争点になりかねない、こういう背景がある」
アメリカでは、軽油価格が今年に入り2倍近くに高騰しています。政権の審判となる中間選挙を控えた今、“中東情勢の混乱で高騰した燃料価格”への不満が高まっています。そしてもう一つ大きな理由があります。
エネルギー経済社会研究所 松尾豪代表
「10月の上旬これから農業の本格的な収穫時期です。収穫にトラクターなどがディーゼルの燃料(軽油)を大量に使う。収穫した農作物をトラックでこれもディーゼル(軽油)車両で運ぶということになってきます。ここでディーゼル(軽油)燃料価格を抑えられなければ食料品価格の上昇というような問題にもなります」
トランプ大統領は「軽油の価格は急速に下落する」とし、プーチン大統領は「世界経済全体にプラスの影響を与える」と主張しています。日本への影響は?
エネルギー経済社会研究所 松尾豪代表
「日本国内の国民生活への影響も、“少し緩和される傾向”にはなると思います」
しかし、今回ロシアが供給する量では、大きな影響は期待できないといいます。
高島彩キャスター
「ロシア産の軽油について制裁が緩和されましたが、今後、対ロシア制裁はどうなっていくのでしょうか?」
板倉朋希アナウンサー
「明海大学の小谷哲男教授によりますと、『現在アメリカはロシアに対して原油や天然ガスなどエネルギーの輸入禁止、金融資産の凍結、軍事転用可能な製品の輸出禁止といった制裁を科している』ということです。また小谷教授によると『トランプ大統領は“軽油の価格が高いのはアメリカによるイラン攻撃のせいではなく、ウクライナによるロシアの製油所攻撃が原因だ”と主張していてゼレンスキー氏に石油施設への攻撃をやめるよう伝えてきた。しかし、聞き入れられなかったため、今回の緩和についてはウクライナ側には伝えなかった。今後ウクライナが攻撃を続ければ、ガソリンなどにも制裁緩和が広がる可能性もある。さらに足元を見たロシア側が金融制裁の緩和などを要求してくることも考えられる』と話しています」
高島彩キャスター
「柳澤さん、このアメリカとロシアの動きどうご覧になっていますか?」
ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「小谷さんの話にはありましたが、ロシアの石油施設への攻撃をやめろとトランプ大統領はゼレンスキー大統領に言ってきたけれども、それに応じなかったということで、形の上で見るとゼレンスキー大統領に対する圧力という側面も指摘できると思う」
高島彩キャスター
「一方でアメリカ国内ではトランプ大統領の支持率が非常に厳しい状況だと報じられていますが、その辺りも背景にあるんでしょうか?」
ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「最近の支持率で見ると約30%まで落ち込んできてるんです。中間選挙まで1か月を切ったところで、なんとか支持率を回復させたい。そのためには軽油の値段を下げることでその道筋をつけたい、というのがトランプ大統領の思惑だと思うんです。ただこれで事実上、ロシアに対する経済制裁が緩和されるということになれば、ウクライナは強く反発していますし、それ以外の国からも批判が出てくることは間違いないと思う。一方で軽油の価格が下がることによって、値段が上がって困っている国の中からは、『正直ほっとした』という声も聞こえてくるということで、受け止め方は非常に複雑と言わざるを得ないと思います」
