
初入閣から、わずか27日でした。地元の道路予算をめぐる発言などで問題になっている、簗和生農水大臣が14日夜に辞任しました。高市政権での閣僚の交代は初めてで、総理は「任命責任を重く受け止めている」と述べました。
事実上“更迭”報道から約2週間

辞めるのか、辞めないのか。簗大臣が歩みを進める先は、高市総理の待つ執務室。記者からの問いかけに応じることはありませんでした。高市総理との面会時間は約20分。再び姿を見せた簗大臣は、こう切り出しました。

簗和生農水大臣
「今、総理に辞表を提出したところです。国会審議にご迷惑をこれ以上おかけするわけにもいきませんし、農林水産行政にも集中できない状況が、これ以上続くということは避けなければいけないと考え、自ら決断をいたしました」
その後、記者からの質問には同じ趣旨の話を繰り返しました。

簗和生農水大臣
(Q.辞任の決定打になったのは)
「先ほど申しましたとおり、国会審議、農林水産行政、これ以上迷惑をかけるわけにはいかない」
(Q.辞任が今になった理由は)
「今、総理にお話を、私の方から辞意をお伝えをしたということです」
(Q.4週間での辞任の受け止めは)
「すみません。今、辞意をお伝えをしたということで、こういった形で皆様にお伝えをさせていただければと思います」
(Q.議員辞職はしないのか)
「……」
辞表を受け取った高市総理も多くを語りませんでした。

高市早苗総理大臣
(Q.総理の受け止めを)
「今日辞表を出されたので受け取ったということです」
(Q.辞表を提出されて率直に感じたことは)
「実際、私が任命しました。こうして大臣が辞任する事態に至り、任命責任を重く受け止めています」
(Q.説明責任を果たすことを求めていたが、一転して辞任に至った理由は)
「タイミングとか、この時点でということでしたら、本日の夕方、辞表の提出があったので受け取ったということに尽きます」
「予算カット」発言 簗大臣辞任
簗大臣を信頼してきた高市総理。

高市早苗総理大臣(衆院選・2月)
「簗ちゃんにはずっとずっと、私が分からないこと、特に農政について分からないこと、いつもアドバイスをもらってきた。とにかく私の大事な簗ちゃん。私の知恵袋の簗ちゃん。いなかったら大変。本当に大変です」
ところが。就任間もなく、問題の音声データが明るみに。

簗和生農水大臣(5月24日 自民党支部の会合で)
「那須烏山市と那珂川町の令和8年度道路予算については大幅にカットしました。これくらいのことはやらないと、真面目にやっている人たちが浮かばれないんですよ」
得票が伸びなかった自治体を冷遇する「予算カット」発言。簗大臣は釈明に追われます。

簗和生農水大臣
「地元のために一生懸命取り組んできたという思いと同時に、参加者の気持ちに応えようという思いから、事実と異なる発言をしてしまった。減額を求めた事実はありません」

高市早苗総理大臣
「食料安全保障の強化のためにも人一倍働いてほしい」
高市総理は続投を明言してきましたが、そこに追い打ちをかけたのがシャトルバス問題です。選挙の際、簗大臣の陣営が、有権者を無料で送迎した問題が発覚。ここにきて、答弁のトーンは明らかに変わりました。

高市早苗総理大臣
「仮に違法性があるようなことがあれば、その時に私は躊躇(ちゅうちょ)しません」
そして14日。高市総理は予算委員会で、こんな心情を吐露します。

高市早苗総理大臣
「農業政策に関しては、紙も見ずにしっかりと答える。素晴らしい答弁をしていたと思いますよ。色んなことが今回あって、皆様の納得をいただけない説明しかできていない。今の現状が残念でなりません。本来は大臣として十分な能力を兼ね備えた人です」
しかしこの時、すでに外堀は埋まっていました。連立を組む日本維新の会の吉村代表からは午後、事実上、引導を渡す発言が飛び出します。

日本維新の会 吉村洋文代表
「簗大臣自身、今までの説明や対応で国民の皆さんが納得しているか、胸に手を当ててよく考えて出処進退を判断してほしい」

一方で、野党各党は簗大臣が辞任しない場合、問責決議案を参議院に提出する方針で合意。このままでは高市総理が“悲願”と位置付ける食料品消費税の減税法案の審議にまで影響が及びかねない情勢となっていました。

国民民主党 古川元久国対委員長
「消費税で農林漁業者が大きな影響を受けるので、農林大臣の問題がどうなるかはっきりしないと、消費税関連法案の審議に入れるような状況にはない」
“投票依頼の電話掛け”に報酬か

さらに、新たな疑惑も浮上します。2024年の衆院選で、簗大臣への投票を呼び掛ける電話を、陣営の事務所で掛けていた運動員に対し、報酬を支払っていたという疑惑です。
電話かけをした事務員
(Q.作業として、どのようなことをしたか)
「電話かけとお茶出し。お手伝いしてもらって無償というのは申し訳ないという気持ちで、少しだけでも交通費くらいの気持ちで出していたんじゃないですかね」

それは公職選挙法に抵触しかねない行為。簗大臣が直接、作業を依頼していた場合もあったといいます。ただし、資金の管理をしていた責任者は、報酬を支払っていたことを知らなかったと話しています。

簗陣営の出納責任者
「何台も電話機を連ねて、そこに4人5人6人とかね。そういう状況で次から次へと電話していました。私は当然いわゆるボランティアでね、ボランティアで電話をかけるのを協力してくれていたという認識」
疑惑は国会でも取り上げられましたが…。

簗和生農水大臣
「ご指摘の様々な件につきまして、真摯に受け止めて、説明をしっかりと尽くしてまいりたい」
簗大臣辞任 問われる任命責任
こうした状況の中で辞表を受け取った高市総理。

高市早苗総理大臣
(Q.辞表の提出がなければ続投させていたか)
「14日夕方会って、新たに報道されたこともあったので説明を聞こうと考えていました。特にそれによって、どう判断するか決めていたわけではございません」
(Q.簗大臣の会見や説明が十分だったと考えるか)
「14日も説明、答弁を聞いていたが、まだ私自身も含めて、十分にご理解を得られた内容だとは思っていません。今後、一国会議員として説明責任を果たしてほしいと考えています」
後任の農水大臣は15日に決まる見通しです。
なぜこのタイミング今後は
政治部官邸キャップの千々岩森生記者に聞きます。
(Q.高市総理が、簗大臣の辞任をこのタイミングで認めた理由は)

政治部官邸キャップ 千々岩森生記者
「主に2点だとみています。まず身内の自民党。そもそも強かった批判の矛先が、簗大臣から庇い続ける高市総理に向き始めていた、風が変わってきていたのが1点。もう1つは野党側。結束して問責決議案を提出する構えで、国会運営が行き詰まる可能性があったこと。この2点で追い込まれて、事実上、更迭せざるを得なくなったのが実情だと思います。カレンダーを見ると、13日・14日が衆議院の予算委員会で、16日・19日が参議院の予算委員会。与党側としては、20日から消費税法案の審議に入りたい。14日の辞任であれば、15日に新任の大臣を任命して、この日程感はこのまま見えてきます。ただ、参議院の予算委員会までもつれ込んでからの辞任となると、消費税法案にまで影響が出かねないという見方。スケジュールを維持するには、このタイミングしかなかったとも言えます」
(Q.高市総理はギリギリまで簗大臣を守りたかったということですか)
政治部官邸キャップ 千々岩森生記者
「庇いたい総理と、世間の風の厳しさとの間で、2週間を振り返ると“読みの甘さ”“ちぐはぐな姿”が目についたと言えます。2つの問題のうち、まず“予算カット発言”は、発言自体は謝罪・撤回して乗り切れると総理は判断していた。厳しい反発の中でも突っ切ろうとしたが、世論の感覚とズレていった。シャトルバスの問題も、当初は、会場費の一部で法的に問題ないという答弁ラインで、官邸を含めて乗り切れると考えていた。任命責任と同時に、続投させた責任も問われる形で、自民党内からは『判断に必要以上に時間をかけたダメージと、閣僚が辞任するダメージと、両方を食らうことになる』との声も出ています。結果的に、身内からも総理の危機管理能力に疑問符がつく形で、党内の求心力や内閣支持率への影響も懸念されます」
