
6年前に福島県の猪苗代湖で3人が死傷したボート事故で業務上過失致死傷の罪に問われた元会社役員の裁判で最高裁は無罪とした2審判決を破棄しました。実刑判決が確定することになります。
【画像】「破棄しなければ正義に…」猪苗代湖ボート事故 最高裁で“逆転有罪”
これまでの経緯をまとめています。
◆ボートが遊泳中の2家族4人巻きこみ 8歳男児死亡

2020年9月6日、警察などによりますと、福島県会津若松市にある猪苗代湖の中田浜の沖合で、湖を走行していたボートが泳いでいた2家族の4人を巻き込みました。
この事故で豊田瑛大くん(8)の死亡がその場で確認され、母親が足を切断するなど2人が重傷を負いました。
(2020年9月)
◆運輸安全委員会による調査報告

国の運輸安全委員会が調査報告書を公表しました。
【原因の指摘】 ※ 運輸安全委員会のHPより
ボート側が他船を追い越すために加速した際、ブイ付近に浮遊していた被害者らに気づかず衝突したとされました。また、現場海域において水上レジャーの区域分け(ゾーニング)やルールの周知が不足しており、ボートと泳ぐ人が混在して航行する環境になっていたことも要因に挙げられています。
(2022年8月)
◆ボート操縦の被告に禁錮2年の実刑判決

この事故で、ボートを操縦していた佐藤剛被告が業務上過失致死傷の罪に問われています。
1審の福島地裁は「一時的に停泊した地点で同乗者が撮影した画像や動画には複数の浮遊物が写っている」「この浮遊物は被害者らであると推認することができ、佐藤被告は被害者らを視認できた」などと指摘し、「安全を確認しながら航行すべき業務上の注意義務を怠った」として、佐藤被告に禁錮2年の実刑判決を言い渡しました。
(2023年3月)
◆控訴審で一審判決を破棄し”逆転無罪”判決
2審の仙台高裁は「画像や動画と佐藤被告の肉眼での見え方との同質性が立証されていない」などとと指摘し、「佐藤被告の過失を認めるには合理的な疑いが残る」として1審判決を破棄し、無罪を言い渡しました。佐藤被告は禁錮2年の1審判決を不服として控訴していました。
(2024年12月)
◆遺族 4億円余りの賠償求め提訴
刑事裁判と並行し、亡くなった男の子の遺族がボートを運転していた男性や県などに対して4億円余りの賠償を求める民事訴訟を起こしました。
訴えを起こしたのは2020年9月に猪苗代湖の中田浜の沖合でボートに巻き込まれて亡くなった男の子(当時8)の両親です。
訴状ではボートを操縦していた男性が法律で定められた運転中の見張り義務を怠ったと主張し、県が作成した湖の利用ルールなどについてまとめたマップにも誤りがあったなどとして、男性や県などに対して約4億1223万円の損害賠償を求めています。
(2025年12月24日)
◆「湖に浮かぶ被害者を発見できたか」 最高裁で弁論

これまでの裁判では過失の有無が主な争点で、「佐藤被告が衝突回避可能な地点までに被害者らを人として発見することができたか」などが争われました。
9月18日に最高裁で開かれた弁論で、検察側は「2審判決はスマートフォンのカメラ機能で撮影した場合の画像・動画などについて、広角系レンズで撮影された画像よりも肉眼の方が対象物をより大きく近くに見えるという科学的な論理則経験則に明らかに反する証拠評価に基づく誤った認定である」「判例に相反している」としたうえで2審判決を破棄すべきと主張しました。
弁護側は「写真はことごとく拡大されて不当だと証拠評価を争ったのに、検察官はきょうにいたるまで写真を何倍に拡大したか明らかにしない」などと述べ、上告を退けるよう求めました。
最高裁の弁論は、判決を変更するのに必要な手続きで、2審の無罪判決が見直される可能性があります。
(2026年9月18日)
◆2審の無罪判決を破棄 「著しく正義に反する」

6年前に福島県の猪苗代湖で3人が死傷したボート事故で業務上過失致死傷の罪に問われた元会社役員の裁判で最高裁は無罪とした2審判決を破棄しました。実刑判決が確定することになります。
16日の判決で最高裁は2審判決は佐藤剛被告(49)が被害者らを視認できたとする1審判決の判断構造を正しく解釈しておらず、「1審判決の認定が不合理であることを具体的に示していない」と指摘しました。
そのうえで「破棄しなければ著しく正義に反する」として、2審の無罪判決を破棄し、1審の禁錮2年の実刑判決が確定することになりました。
判決を受けて、豊田瑛大くんの父親は「逆転無罪があったので、期待できないと思っていましたが、ようやく分かってくれる人が出てきてくれたことがありがたい」と話しました。
(2026年10月16日)
