
アメリカの中間選挙まで2週間。暮らしに物価高が重くのしかかる中、選挙の結果を左右するとも言われる「宗教票」に今、異変が起きているという。これまでトランプ大統領を支えてきた「キリスト教・福音派」内で今“トランプ離れ”が起きているという。一方で、トランプ大統領の支持層の中で影響力を強める、“もう1つのMAGA”とは?
【画像】アメリカ国民の約4人に1人「福音派」 どのように味方に?
鍵を握る宗教票とは?
まずは宗教票について、アメリカで各宗教の信者がどれくらいいるのか見ていく。
民間の調査機関「ピュー・リサーチ・センター」が2025年2月に発表した調査によると、成人したアメリカ国民のうち、キリスト教徒が62%、無宗教が29%、その他の宗教が7%となっている。
さらに詳しく見ていくと、キリスト教徒の中でも最も多いのが「福音派」で23%、成人したアメリカ国民のおよそ4人に1人が福音派だという。
福音派は英語で「Evangelical(エバンジェリカル)」といい、聖書を神が人類に示した「教え」だとして、その「教え」を信じ、人々に広く伝えていくことで救われると考える人たちのことだ。
どのように福音派を味方に?
トランプ大統領は福音派が望む政策を次々と打ち出してきた。トランプ大統領がどのように福音派を味方に付けてきたのか、見ていく。
福音派を取り込むためか、トランプ氏は2016年の大統領選で、中絶に反対の立場を取る人物を最高裁判事に任命するという公約を掲げ、福音派が“宗教的自由”として求める「自分たちの信仰に反する行為は行わない自由」を擁護する姿勢も示している。
その具体的な例を見ていく。ロイター通信などによると、2012年に福音派のケーキ職人が、同性婚用のウェディングケーキ作りを拒否した。このことに対して、拒否されたカップルが差別を申し立てて、州の裁判所がこれは差別だと認定し、カップル側が勝訴した。
こうした中、2017年にトランプ政権がこのケーキ職人側を支持する意見書を連邦最高裁に提出した。すると2018年、連邦最高裁は“宗教的自由”を支持するとしてケーキ職人が逆転勝訴するということがあった。
また、トランプ大統領は第2次政権でも福音派の要求を実現させている。
去年1月「性別は男性と女性の2つのみ」とするなどいくつかの大統領令で性の多様性を否定し、性的少数者の権利を制限したほか、その翌月にはホワイトハウス内に「信仰局」を設置し、宗教団体と連携して保守派の価値観を広めるとしている。
福音派の一部にトランプ離れ?
このように福音派が求める政策を推進するトランプ大統領だが、ここへ来て福音派の中で“トランプ離れ”が起きているという。
13日に発表されたピュー・リサーチ・センターの調査では、白人「福音派」有権者のおよそ73%が共和党の候補に投票すると回答したというが、一方で、そうした白人の福音派有権者のトランプ大統領個人への支持率を見ると、大統領に就任した去年1月時点では78%だったが、今月には58%と下落しているのが分かる。
“もう1つのMAGA”とは
トランプ大統領を支持する人たちの中で、影響力を強める“もう1つのMAGA”と呼ばれる運動を見ていく。
トランプ大統領が掲げる「MAGA」は本来「Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)」という意味の政治運動だが、朝日新聞によると、このMAGAを「もう1つのMAGA」が支え突き動かしているという。そのもう1つのMAGAというのが「Make America Godly(アメリカを再び神の国に)」を掲げる人たち。この人たちは、アメリカの国家や社会をキリスト教的な価値観に基づいて再編しようと考える「キリスト教国家主義」と呼ばれる勢力だという。
さらに、この「キリスト教国家主義」の中に、アメリカの政界に強い影響を及ぼす信者のネットワークがあるという。それが「新使徒運動」と呼ばれるもの。現代にも神の意思などを伝えるため遣わされた「使徒」がいると信じて、現代の使徒の預言を強く重視する人たちだといい、先鋭化した福音派などが参加しているという。
この新使徒運動は、民主党や左派勢力との政争を「悪魔との霊的な戦い」と捉えていて、ある信徒は「トランプは神がアメリカをこれまでの状況から抜け出させるために公職に就かせた人間だ」と語ったという。
新使徒運動の指導者は?
トランプ政権と深く結びついている、新使徒運動の指導者の素顔について見ていく。
この写真は、2024年、1カ月後に大統領選の投開票が迫ったトランプ氏のもとに多くの牧師が集まり復権を目指すトランプ氏に祈りを捧げたシーンを捉えたもの。トランプ大統領の後ろに立ち、肩に手を置いて、うつむいているのが新使徒運動の中心的指導者の1人であるチェ・アン氏(70)だ。
朝日新聞によると、アン氏は父が日本統治下の平壌で生まれ、父は朝鮮戦争の休戦後、韓国に脱出。韓国でアン氏が生まれてその後アメリカに渡ったという。アン氏は大学院卒業後、牧師となった。そして、1代でこの巨大な「使徒ネットワーク」を築き上げたという。
そんなアン氏とトランプ政権は深く結び付いているといい、そこで重要な役割を果たした1人が、テレビで「教え」を説教する“テレビ伝道師”という職業をしていたポーラ・ホワイト氏。ホワイト氏はホワイトハウスの「信仰局」の上級顧問を務め、スピリチュアル・アドバイザーとしてトランプ氏に直接助言する立場にあり、新使徒運動と政権をつなぐ要の人物とされている。
(2026年10月21日放送分より)
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