
マンションの大規模修繕工事を巡って工事業者が部屋を購入し、住民として修繕の会議へ潜入するケースが相次いで発覚しています。東京湾岸エリアのタワーマンションでも同様の事態が起きていて、内部情報のリークを受けた業界大手の工事業者が57億円の修繕工事を受注していたことが番組の取材で明らかになりました。
国の有識者会議が初会合
公正取引委員会が先月、認定したマンションの大規模修繕工事を巡る業者間の“談合”。
国土交通省住宅局 佐々木俊一局長
「発注者の管理組合の信頼を裏切り、利益を害する談合はあってはならない」
19日、国土交通省は初の有識者会議を開き、工事の適正な発注に向けた検討が始まりました。
委員として参加した横浜市の担当者は、業者が住民に「なりすました」事例などがあるとして、適正な工事費用を算出できるシミュレーターを提供し始めたと紹介しました。
「なりすまし住民」書類送検
なりすまし住民
「やめてください」
関係者
「待ってください」
「こら、待て、止まれ」
横浜市のマンションへの潜入が発覚した「なりすまし住民」。去年5月、男2人が住居侵入の疑いで逮捕されました。
男の1人は、住人の女性に商品券30万円分を渡し、女性の夫の名前をかたって大規模修繕の会議に潜入していました。
男2人は修繕工事を専門とする「テイエム技建」の営業部の社員。社長を含む3人が偽計業務妨害などの疑いで書類送検されました。
テイエム技建 社長
「偽名で行っていることを認知していなくて、当然本人の名前で参加していると思っていた」
社員を潜入させた背景について、社長はマンションの管理会社が工事の発注先を決めるうえで主導権を握っていると主張。自分たちが工事を受注することで工事費用を安く抑えることができた事例もあると説明します。
テイエム技建 社長
「管理会社の言うままではいけないという声をあげてもらい、フラットな土俵を作ってもらえれば新規参入していけるというのがことの走り」
情報リークで57億円受注
湾岸エリアに建つ、2千数百世帯が暮らす都内有数の超高層タワーマンション。このマンションでは、関西の大規模修繕の工事業者「M&Hリライアンス」が部屋を所有していました。
問題を指摘した人
「知人と居住者の方々の調査によって、M&Hリライアンスの社長が理事と修繕委員に就任していると分かりました」
総額57億円もの大規模修繕を受注し、2024年から工事を始めたのは、業界の大手「長谷工リフォーム」でした。
6月、長谷工リフォームが住民側に説明した音声です。
長谷工リフォーム側
「テイエム技建自体が建設会社としてトップに立ってコミットできる状態ではない。グループ会社に建設の技術者をすべて移されて。関西で2020年ごろは『テイエム技建』というより『M&Hリライアンス』と取引をしておりました」
住民の会議にいたM&Hリライアンスの社長。その関係会社がテイエム技建だといいます。
長谷工リフォーム側
「関西の長谷工リフォームの関係者がどのように情報を得られるかってテイエム技建の関係者に話を聞いた。テイエム技建が受注を取りたいというマンションの一室を購入し、修繕委員や理事に立候補し、内部の情報を受注が取れるように得ている。過去、大阪での取引がこのパターン」
長谷工リフォームによると、公募締め切りの10日前、テイエム技建から1本の電話がかかってきました。
長谷工リフォーム側
「テイエム技建から連絡があり、いわゆる内部情報の類だと思います。うちも関与したいから、長谷工リフォーム元請けで入れないかという電話」
この電話の後、長谷工リフォームは、最安値を提示していた工事業者と同じ「57億円」を提示し、工事を勝ち取っていました。
塗装の不備 ずさんな工事
企業の信用調査情報によりますと、テイエム技建は少なくとも2016年から“不適切会計”が常態化。2020年4月期に29億円余りの特別損失を計上し、当時、債務超過に転落しました。
長谷工リフォームは、直接の取引はできないと判断。しかし、関係は続いていました。
長谷工リフォーム側
「テイエム技建やM&Hリライアンスが2次請け3次請けに入る話がセットでされていた」
ところが、実際の工事では。
マンション住民
「通路にある扉の金具に塗料がはみ出たままになっていました。これで完成だとは思えない出来でした。細かい部分ではありますが一事が万事だと思います」
長谷工リフォーム側
「塗っていないところがあるとか、下地の処理をせずに上から塗ってしまうという明らかにダメと分かる工事レベルだった」
きちんと「塗装」されなければ、建物の劣化が早まります。
スマート修繕 修繕・管理コンサルタント
別所毅謙氏
「塗りムラがあるということは保護機能を果たせない状況。塗装がしっかりと行われていないと、将来的に長い年月で考えると建物の寿命には影響を与えてきます」
なぜ、ずさんな工事が行われたのでしょうか。
長谷工リフォーム側
「テイエム技建が(工事に)来る=M&Hリライアンスが来ると思っていた。3次に出している金額が(他の下請け)会社に出している金額より安いことが分かった」
下請け工事で入っていたテイエム技建に関係する会社が、塗装工事をさらに下請けの会社に相場よりも安い価格で発注していたことが分かりました。
長谷工リフォーム側
「手直し工事も何回もする現実を見て、我々も報道でなりすましの件など、付き合ってはいけない相手だと。協力会社を差配する力量があればこんな結果にならなかったと思う。テイエム技建を排除しなければ工事自体も順調に進まない。これ以上御社とはお付き合いできないと退場いただいた」
塗装の不備について、長谷工リフォームはすべてやり直すことを住民に約束しました。
長谷工リフォームはテレビ朝日の取材に対して、「個別の事案についての回答は差し控えます」とコメントしています。
テイエム技建にこのマンションでの事実関係を確認しましたが、回答は得られていません。
対策の必要性を指摘
M&Hリライアンスの社長は去年、住民に対してこう釈明しました。
「疑わしい利益相反だと思ってそれダメだと皆様から言われるならそれは仕方ないと思う。僕がいることで皆様に迷惑がかかるなら、みんなに決めてもらって」
国交省の会議に参加する専門家は対策の必要性を指摘します。
マンション管理センター 小滝晃理事長
「住民の方々の期待とは全然違う方向の動きだと思う。こういう動きを簡単にできなくする抑止力がいる。管理組合側の立場で、公正中立な立場から専門家がついて知恵袋を持つことが一番分かりやすくて、いろいろな事態に弾力的に対応できる方法」
(「グッド!モーニング」2026年10月23日放送分より)
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