8月20日、ネバダ州ラスヴェガスで開催される「UFC202」で現在MMA界で名実共に人気ナンバーワンといえるスーパースター、コナー・マクレガーが因縁のネイト・ディアス戦で復帰する。

4月に発表した突発的な引退発表の3日後にはあっさり撤回、その後「UFC200」でメインで決定していた「マクレガーVSディアス2」もキャンセルと散々周囲をかき回した印象のマクレガーだが、そこにはMMAの世界での長きに渡る「マクレガー・ブランド確立」のしたたかな戦略も見え隠れする。

3月の「UFC196」でネイト・ディアスに初の黒星。とはいえ試合直前に対戦相手の変更(当初は当時のライト級王者ハファエル・ドス・アンジョズ戦だった)、ウェルターという2階級上のディアスの対戦と、常識では考えられないカードに挑んだことや、2Rパワーで押し切られリアネイキッドチョークでタップアウトという結果も、1Rは打撃で圧倒した。リング外での舌戦も含め試合を「魅せた」という意味で、マクレガーの価値はさらに高まったというのが一般的な見方だ。

敗れてなお男を上げたマクレガーだが、UFCのデイナ・ホワイト社長は1ヶ月も立たないうちにマクレガーとディアスの対戦を7月の「UFC200」のメインカードに決定。

この決定にはファンの間でも、3ヶ月の短い準備期間での重い階級での再試合、保持しているフェザー級タイトル戦線を無視してのマッチメイクへの疑問の声や、このところの興行面での異常な「マクレガー推し」などへの賛否が巻き起こる。ポスターもネットで公開するなど決定事項でマクレガー当人も逃げるに逃げられない状況で出たのがあの「引退宣言」だ。

あっさりと翻した引退撤回の声明文では、度重なるメディア対応などプロモーションなどでの酷使などの本音も見え隠れしている。

「50回のワールドツアー、200回のプレスへの会見、100万回のインタビュー、200万回の写真撮影。レンズの筒を眺めていると、敗北が迫っているのを感じ、試合へ向けた準備不足ばかりが気になってしまう」、少し前のロンダ・ラウジーがそうであったように興行面でのスター・システムにより、過密スケジュールになる~練習時間が削られる~準備不足で試合に負ける。この負のスパイラルが、やがてはファイターのキャリアをも台無しにしてしまう。ある意味過剰な「マクレガー・フィーバー」への危機感をクールダウンするために、ソーシャルメディアを駆使し引退をほのめかす作戦は成功したといえるだろう。

かくして大博打を打って出て7月の大会を回避。連日よせられる公式動画では十分に試合へ向けての合宿が順調であることも伺える。マクレガーにとっては「あと2ヶ月あればー」という駆け引きに勝利したが、それ以上に声明文での発言が波紋を呼び、プロモーションも極限控えトレーニングに集中出来たという意味でも、彼が手にしたものは大きいだろう。

そんなマクレガーだが自身の出資でソーシャルニュースメディア「The Mac Life.com」を7月に開設、自身のトレーニングをドキュメンタリー風に動画で紹介しつつも自身の広報ツールに飽きたらず、他の注目するMMAファイターの情報や、ポケモンGOやスマートフォンのアプリ、映画の話題など情報は多岐に渡っている。ここらへんの掴みどころの無さも、マクレガーらしいが、このメディア立ち上げも今後彼のファイターとしての立ち位置を有利にするツールとして活かされて行くことは容易に想像できる。

3月の「マクレガーVSディアス1」は、試合前の罵り合いも含め、格闘ファンなら心躍るような極上のエンタメ要素を含んだ試合だった。

だが今度の「パート2」はやや違った空気感が漂っている。加熱するメディア報道を巧みに「回避」したマクレガーに対してネイト・ディアスもTVで「いつも負けることを意識しながら闘っている」と、その心内を告白するなどシリアスな一面を見せている。

興行としての「煽り至上主義」。もちろんファンは喜ぶだろうが、これからは当のファイターたちがエンタテイメントに食いつぶされないような防御策を見出す。いわゆる「世渡りのスキル」が求められる。自身のキャリアにとっても、ひいては興行化が進むMMAの世界で生き残るために不可欠な要素になりそうだ。

UFC 202 | AbemaTV
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UFCファイトナイト・ロドリゲスvsカサレス | AbemaTV
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