「いろんな人が来れるような変わった美容室を作りたかった。そんな夢への第一歩として思い立つままに旅に出た。」
そう話したのは、現在東京の高円寺で奥様と一緒に美容室「UPTOYOU」を経営している美容師の桑原淳氏だ。彼は自分の思いの向くままに、2014年4月から1年2ヶ月の時間をかけて世界を周り、1000人もの髪を切った。言葉、宗教が違えばヘアカットも違う。そんな中で多くの国を訪れた彼が見た世界とは?インタビューにより紐解いていく。

――いつから世界に出たいと思い始めたのですか?
「ふと、思い立って旅に出た。」と先ほど述べたのですが、昔から一人旅が好きで、美容師見習いをしていた22歳の時に訪れた熊本で、世界の絶景の写真を売っている大学生と出会い、それがきっかけで海外に興味をもちました。
――世界一周を決めたときの周りの反応は?
わりと反対されましたね。「何言ってんの?」という顔をされました。
――旅を初めて最初の頃の海外の人々の反応はどうでしいたか?
初めは出会った人々に「髪を切りたいんだ。」と伝えると床屋を紹介されてしまい、なかなか自分のアイデアが周りに理解されず、説明が大変でした。ダンボールにその国の現地の言葉と英語で「私は日本人の美容師で、1000人の髪を切りたいです」と書いて、お客さんを集めました。特にインドの人たちは興味を示してくれましたね。
――コミュニケーションはどのようにとっていたのですか?
基本は英語だったんですけど、通じない人にはジェスチャーなどで必死に伝えましたね。
通じる人とは、当たり障りのない会話をしていました。
――どのくらいの料金で切ってたんですか?
最初は無料で切ってたんですが、途中から「おまかせ」という形でお金じゃなくても何でもいいようにしました。ベトナムのビーチで髪を切ったときはみんなビールをくれたり、ぬいぐるみをもらったりもしましたね。
――髪を切って文句を言われたことは?
あまりなかったですね。喜んでもらえたことのほうが多かったです。
――苦労したことは?
そうですね…。トラブルも特になく、基本的には楽しく過ごせました。苦労したことはずぼらなので宿を決めずに次の国に行って、宿が見つからず探し回ることくらいですかね。
――旅に出て何か変わりましたか?
はい、旅に出て世界を見たからこそ、日本の良いところや悪いところに気付くことができました。いろいろな人と出会い、頑張ろうと思いましたし、世界にでなければ知ることのなかった様々な価値観にも触れることができました。ここで終わらず将来的には、世界をまたにかけていろいろなところで美容師をやっていきたいですね。
桑原氏の経営する美容室の名前は「UPTOYOU」(あなたしだい)、これは気軽に来ることができる自由な美容室を目指す想いと、旅に出ていたころに髪を切ったお客さんに言っていた言葉からつけたそう。フランスのエッフェル塔やマチュピチュ、ウユニ塩湖で現地の人の髪を切ったときのことを楽しそうに話した桑原氏の夢は、まだまだ続いていく。
