8月31日にオンエアされたAbemaTV『AbemaPrime』の木曜コーナー「REINAの知らない世界奇人紀行」に、フォトグラファーのヨシダナギさんが出演。アフリカの少数民族を撮影し続けるヨシダさんの、これまでの軌跡とこれからの思いを聞いた。

ヨシダさんがこれまで出会ってきたアフリカの少数民族は、15か国でおよそ200。アフリカ人のどんなところに惹かれたのかといえば、もう単純に「フォルム」なのだという。5歳のとき、偶然テレビで見たマサイ族に強烈な興味を持ち、
「将来、こうなろうって思ったんです。職業だと思った。ちっちゃい子が仮面ライダーになりたいって言っているような感覚です。ヒーローとかハリウッドスターとか、私にはそれくらい彼らがカッコよく見えた」
という。ただし、フォトグラファーになろうと思ったことはない。
「10歳のとき、いつ肌の色が変わるんだろうと思っていて。そのとき、自分が日本人だということをお母さんから教わって、なれないとわかって…。なれないんだったら、せめて会いたいと。写真は、アフリカ人を、ただ“かっこいい”って言っても誰も賛同してくれず、(むしろ、アフリカは)危ないとかなんとか言われるのが悔しくて、記録として撮っておこうと思ったんです」(ヨシダさん)
彼らを記録するため写真家の道を進んだヨシダさん。2009年に初めて渡ったアフリカでは、「憧れていたまんまの人たちがいた」と振り返る。「アフリカ人の共通として、白い歯をむき出して、歌って踊ってどんなことでもニコニコしているイメージがあって。そこらへんにいる人みんなかっこ良く見えて…」。
■裸族を撮影するときは、自分も裸に


そしてヨシダさんは、ありのままの彼らを撮影するため、裸族を撮るときはなんと、裸になって同じ民族衣装をまとう。
「彼らに受け入れてほしかったんです。好きだ、好きだって言うのはいくらでもできるけど、(その気持ちを)見せてみろっていうときに、私は服を脱げると。脱げるもんなら脱いでみろよっていう感じだったけど、いざパンツを脱ごうとしたらあっちが気を遣って、脱がなくていい。と(笑)。でも脱いだらもう、歌って踊って歓迎してくれて」
ヨシダさんは、ありのままの格好よさを撮るには、彼らに信頼してもらって、彼らと距離を縮める必要がある。同じ格好をすることが、言葉よりも何よりもストレートに伝わる方法だと考える。その行動は、遠く離れた異国人と現地の人たちの心をしっかりと近づけ、そして彼女の前だからこそ見せる表情が現われるのだ。でも、とヨシダさんは笑う。
「行く前は、ひとりでは何もできなくて、英語すらできませんでした。中2で学校をやめて、ずっと家にいた引きこもりだったんです。口を開けば『死にたい』とか言っていて。そのあと21歳で1人暮らしをして少しずつ明るくなって、23歳でアフリカに行ってみたら学ぶ物が多くて、だいぶ(性格が)明るくなりました」
■「アフリカにネガティブなイメージをもっている人にこそ見てほしい」

フォトグラファーになろうと思ったきっかけは、「ブログとか(SNS)にアップしていると、アフリカが好きな人は勝手に伝えてくれるけど、(アフリカに)ネガティブなイメージを持っている人にみてほしいから」という。
「(そこで)普通の写真ではなく、“作品”として撮ったほうが見てもらえるんじゃないかなと思って。2年くらい前から、彼らにポージングしてもらって、撮り始めました」
ポージングは、ヨシダさんが現地で“演技指導”。思い描くのは、やっぱり「なんとかレンジャーみたいな、戦隊、ヒーローもの」だという。
■ヨシダさんQ&A

--危ない目にあったことは?
ヨシダさん:意外とないです。都市部だと格差があって治安が悪いところもある。でも田舎は格差がなくて、みんなおだやかというか。みんなに見守られている状態なので、狙われにくいんです。
--病気や食事事情は…
ヨシダさん:しょっちゅう吐き散らかしてます(笑)。吐き散らかすことは大したことじゃないです。それで終わるんで。
--撮影場所はどうやって選定しているのか
ヨシダさん:最初は(ただ)かっこよく撮れればいいなと思ったんですけど、興味がない人には風景もインパクトがあったほうがいかなと。塩の渓谷など、非現実的に思えるところもあって。
--すんなり撮影に応じてくれるのか

ヨシダさん:観光客と触れている少数民族は、なんでポージングするの?っていう質問をする。それはかっこいいから、かっこいい写真をとりたいと説明する。でもカメラさえ見たことない人もいるので、そういう人には1から思いを話します。白い天然のアフロ男性は、日本でちょんまげの人を探すくらい、レア。12~13回行って、ようやく探し出しました。髪に牛脂を塗っていて、だからちょっとくさいんです。3日に1回新しい牛脂をつけるそうです。
--住みたくはならないのか
ヨシダさん:最初は住みたかったです。でも、行っているうちに、やっぱり私は日本人で、彼らの生活をするのは過酷だと。
--コミュニケーションはどうしているのか
ヨシダさん:英語と、(現地語の)通訳ガイドがつくこともあります。
--通訳との信頼関係がカギになる?
ヨシダさん:かなりそうです。やる気がないと、全然通訳内容を言ってもらえなかったりとか。(通訳からモテモテだった?)基本的にガイドと私が1ヶ月間ずっと行動をともにするので、そういう感情は抱かれやすい。でも、好いてもらえれば交渉もしやすくなる。(アフリカという地で)冷たくすると、どこの僻地に置いて行かれるかわからない。なので、結構命がけなんです。アフリカ人は怒るといじけちゃうんです。そうすると危ないので、ちょっとボディタッチして、『あなたがいないとダメなの』なんて言って、適度な距離感を保つようにしています。
--アフリカ人の困るところは?
ヨシダさん:良くも悪くも、「考えなさすぎ」なところ。撮影中とかもいろいろ問題が起きるんですけど、(解決するのを)放棄しちゃうんです。で、翌日も同じことでもめて、やめて、もうご飯食べようって言い出す。何事もなかったかのように。どんなに怒ってもゲームしようって。で、また翌日同じことで私が怒る。帰らは、ストレスは抱えてもいいことはないと思って、すぐに忘れるんです。
--今後行きたい場所は?
ヨシダさん:今情勢が悪くて入れないけれど、南スーダンとか行ってみたいです。
--情報収集はどのように?
ヨシダさん:情報はネットで得ますが、南スーダンの場合、エチオピアの南部の少数民族から教えてもらいました。現地の人から情報をもらって、旅行会社にそこに行けるかどうかなどと交渉し、手配することも多いです。
そして、少数民族に対する思いについて、ヨシダさんは、
「彼らの文化はずっと続いて欲しい、そのままでいて欲しいとは思うけれど、それは私のエゴ。彼らの生活にとっては、水準があがったほうがいいので、それを止めるのはおかしい。私ができるのは、今の彼らのかっこいい姿を写真で撮って残して、少しでも多くの人に知ってもらうことかなって思ってます」と語った。
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