6日、サッカーのロシアW杯アジア最終予選2節、日本代表はタイ代表を2対0で下し、通算成績を1勝1敗とした。この日も、テレビ朝日の中継には元日本代表で、監督としてヴェルディ川崎をJリーグ2連覇に導いた松木安太郎氏が解説を務めた。「よーし!」「いけ!」「ナイス!」などと常に日本代表を鼓舞する松木氏の応援スタイルの解説は好評で、ツイッターのトレンドワードには「松木さん」「あれ以来」「オフサイド」と松木氏の発した関連用語が並んだほどだった。

松木氏は1試合で数回、「いいボールだ!」と叫ぶ。この試合でも、96分のうち9回も「いいボールだ!」と大声を出した。だが、実はあまりいいボールではないと思っている視聴者は少なくない。

生島ヒロシ研究家に加え、松木安太郎研究家でもある私は、タイ戦における松木氏の「いいボールだ!」は本当にいいボールなのか検証してみた。

前半3分 「おお、いいボール」長谷部がゴール前の本田にスルーパスも通らず ×

前半14分 「いいボールだ!」 香川のコーナーキックに本田が飛び込むも、キーパーパンチング ×

前半17分 「いいボールだ!」 森重からペナルティエリアの本田へクロスも、DFあっさりクリア ×

前半30分 「いいボールだ!」 酒井宏樹が右サイドからクロス。ファーサイドの原口に何とか届く。原口はトラップからシュートもヒットせず △

前半42分 「よーし! いいボールだ!」 右サイドで山口へのスルーパスが通る ○

後半2分 「よっしゃ、いいボールだ!」 ハーフライン付近からペナルティエリアの香川へ。惜しくも届かず △

後半7分 「いいボールだ!」 本田から原口へのスルーパスが通る ○

後半17分 「いいボールだ!」 山口から本田へのスルーパスが通る ○

後半29分「いいボールだ!」  酒井高徳のクロスに香川がヘディングシュート ○

結果:4勝3敗2分(前半3分は聞きとりづらい)5割7分1厘

結果だけを振り返ると、意外に「本当にいいボール」が上がっていることになる。

「え? 松木がいいボールといった時、いいボールという印象がないんだけど」と思ったあなた。なぜ、そのようなイメージが残るのだろうか。

松木氏が「いいボールだ!」と叫んだ時の状況を細かく分析すると、全く違った結論が導かれる。

実は、松木氏の「いいボールだ!」が本当にいいボールだった時は、ほぼ結果論なのだ。以下を見てほしい。

前半42分 「よーし! いいボールだ!」 右サイドで山口へのスルーパスが通る ○

→ほぼ通るとわかったところでの叫び

後半2分 「よっしゃ、いいボールだ!」 ハーフライン付近からペナルティエリアの香川へ。惜しくも届かず △

→触りそうな瞬間に絶叫

後半7分 「いいボールだ!」 本田から原口へのスルーパスが通る ○

→原口がボールに触った瞬間に一言

後半17分 「いいボールだ!」 山口から本田へのスルーパスが通る ○

→通った後の叫び

後半29分 「いいボールだ!」 酒井高徳のクロスに香川がヘディングシュート ○

→確実に通るとわかった段階での絶叫

実に4勝全てが「結果論いいボール」である。以前の松木氏は結果論で「いいボールだ!」と言うことはほぼなく、蹴った瞬間に「いいボールだ!」と叫んでいた。

だが、昨日の試合を振り返ると、確実な段階で「いいボールだ!」というケースが異様に多くなっているのである。

よく見ると、序盤「いいボールだ!」で3連敗を喫している。それが尾を引いたのか、後半は全て結果論になってしまっている。前半18分、酒井弘樹からのクロスを原口が先制ゴールした時に「いいボールだ!」と発言しなかったことも心理的な影響があったのだろうか。

結果論を除くと、「いいボールだ!」は0勝3敗1分で勝率0割0分0厘になる。

松木氏の大ファンである私としては、「いいボールだ!」は結果論でいってほしくない。あくまで、蹴った瞬間のひらめきで「いいボールだ!」と叫んでほしい。

それが、予言者・松木安太郎のスタイルだと信じている。

そして、テレビ朝日と提携しているAbemaTVで、ぜひ【松木安太郎氏の「いいボールだ!」は、本当にいいボールなのか?】という検証番組を放送してほしい。

文・シエ藤(松木安太郎研究家)

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