ゲームクリエイター上田文人(うえだふみと)って誰?
一般には知名度が低いと思いますが、ゲーム好きならタイトルを聞けばピンとくるのが上田文人さん。元々はワープという会社で『エネミー・ゼロ』などのスタッフとして活躍していましたが、その後、ソニー・コンピュータエンタテインメントに入社し、『ICO』と『ワンダと巨像』のゲームデザインとディレクションをやっています。
クリエイターとしての活動期間は20年近いですが、本人のデザインした作品はわずか2タイトルと非常に寡作な人物ですが、その世界観と独特のゲーム性から多くのゲーム好きが支持するクリエイターなのです。
そんな彼の最新作が『人喰いの大鷲トリコ』。前作『ワンダと巨像』(2005年)より11年、2009年の発表から実に6年の期間をかけた期待のタイトルです。
当然注目も高い作品でしたが、今年9月に発売日が10月から12月へ延期するという発表がありました。
多くの上田ファン、ゲームファンが悲しむニュースでしたが、延期はあくまで延期。中止ではありません(実は製作期間中に上田さんがソニーを退社し、中止の噂が囁かれました)。
そこで上田さんの過去作を実況している動画を見ながら、彼の作家性を紹介していこうと思います。
美しくも切ない巨像との闘い『ワンダと巨像』

上田さんの代表作でもっとも有名なのは、やはり『ワンダと巨像』です。
2005年にPS2で発売され、後にHDリマスター版が2011年にPS3で発売されているタイトルで、ダウンロード版も購入できます。
プレイヤーは青年ワンダを操作して各地に存在する巨像たちを倒し、モノという名の少女の魂を蘇らせることが目的です。巨像のデザインや広大な世界、そしてワンダとモノの切ない物語など、すべてが魅力的なゲームになっています。
「FRESH!」で実況しているのはニート平ケンさん、のあチャンネルさんなどです。

一見して無謀な挑戦とも思える巨像との戦いですが、巨像はには大ダメージを受けてしまう弱点が存在します。そこを矢で攻撃するか、巨像の体をよじ登って弱点を剣で攻撃すれば人間でも巨像が倒せます。
難易度MAXのボルダリングをしながら戦闘をしているようなものなので、そのタフさと腕力の重要さから、別名腕力ゲームと呼ばれています。
巨像をよじ登るスリルと、それを倒した爽快感は動画でも十分楽しめます。そして、あれほどの威容を誇った巨像が崩れ去るときのわずかな寂しさもこのゲームの魅力のひとつです。

巨像たちは人型とは限らず、陸にいるとも限りません。装備の更新やスキルの取得などもなく、体力と腕力を強化する以外の成長要素はほぼ皆無です。プレイヤーがいかに弱点を見つけて、そこにたどり着くかに特化した内容と言えるでしょう。
巨大な敵と戦うゲームといえば『モンスターハンター』が思い浮かびますが、あちらが仲間と戦うパーティーゲーム的要素があるのに比べ、こちらのワンダは孤独に巨像と立ち向かう主人公です。美しい世界で孤独に戦うというコンセプトに、クリエイター上田文人氏のセンスが光ります。
少女と手を繋いで冒険する物語『ICO』
上田氏のディレクターデビュー作となるのが2001年発売の『ICO』です。こちらも2011年にPS3用としてHDリマスター版が発売されています。
『ICO』も『ワンダ』同様、余計な要素を排除したシンプルな内容と、どこかもの悲しい世界観を持つ作品です。
物語は村の風習によって霧の城に幽閉された少年イコを主人公にしたアクションアドベンチャーです。城で出会った少女ヨルダを化け物から救うため、彼はヨルダを連れて城からの脱出を計画します。非常にわかりやすくシンプルな筋立てですが上田氏独特のストーリーテリングとゲームデザインによって、ゲームマニアからは神ゲーと呼ばれるほどの奥深い作品となっています。
実況を行っているのは、ジョリーンちゃんねるさんとのあチャンネルさんです。

このようにイコはヨルダの手を繋ぎながら移動することになります。イコ自身はかなりの身体能力を持っているのですが、ヨルダは手を放すと動けなくなるので、彼女をどう誘導するかが攻略のカギとなります。

化け物たちはヨルダを捕らえることを目的にしており、彼女を優先的に狙ってきます。 つまり、ヨルダは完全に足手まといなのですが、そのヨルダをどう守るかを考えて行動するのがゲーム攻略のカギとなります。
そして、そのことでヨルダに愛着がわき、物語世界へと没入することができるのです。こういう構成の見事さが上田作品の魅力のひとつですね。

そして、イコとヨルダたちは霧の城で意外な事実に直面します。『ワンダ』同様に切ない展開に胸が熱くなる人もいるはず、シンプルなゲーム内容と魅力的な世界、そして切ない物語が上田作品の魅力なのです。
そして、『人喰いの大鷲トリコ』

そして、気になる最新作『人喰いの大鷲トリコ』です。
鳥類とも哺乳類とも見える独特の外見をもったトリコ。ゲームはトリコと少年が協力して冒険をしていくという形になります。
『ICO』でイコがヨルダを連れていったような「同行して絆を深める」物語と、『ワンダと巨像』で描かれた「巨大なモノとヒトの対比」が採用され、上田文人氏の集大成ともなりそうな印象です。
ちなみに上田氏はこの作品の完成後はゲームにこだわらない創作活動にも関わっていくとのことです。ゲームファンとしては少し寂しい気もしますが、ゲーム以外での上田作品にも注目です。
最新作への期待は高まりますが、以前の上田作品も『トリコ』に劣らない名作ばかり。実況動画を楽しみつつ、自分の手で遊んで、『トリコ』発売を待つのもいいかもしれません。