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今年のノーベル平和賞にコロンビアのサントス大統領が選ばれたことが物議を醸している。

長年、コロンビアでは反政府の左翼ゲリラ「コロンビア革命軍」との武装闘争が続いていたが、サントス大統領は今年8月、この内戦に終止符を打つ和平合意をまとめ、9月に調印式が行われた。ノーベル委員会は、50年以上続いた内戦を終わらせようとした断固たる努力を評価すると受賞理由を説明。しかし、サントス大統領がようやく取りまとめた和平合意は、実は今月2日に行われた国民投票で反対50.2%と僅差で否決されているのだ。

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■一体何が悪かった? ノーベル平和賞への批判

「ノーベル平和賞」は、これまでにも批判を受けたことがある。

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1973年には、アメリカ国務長官だったキッシンジャーとベトナムの政治家レ・ドク・トがベトナム戦争の停戦に貢献したとしてダブル受賞。しかしレ・ドク・トは「ベトナムに平和は訪れていない」と不満を持ったのか受賞を辞退。唯一、平和賞を辞退した人物となった。

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1994年には中東和平に貢献したとしてパレスチナのアラファト議長、イスラエルのペレス外相、ラビン首相の3人が受賞。中東はいまだ平和ではないというブーイングや平和とは対極の人物だという批判も…

2012年には団体としてEUが受賞。しかし経済危機や、格差の拡大などに不満が集まりその上、イギリスは離脱が決定。

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たとえば、日本人唯一の受賞者である佐藤栄作元総理の場合、「非核三原則」(核をもたず、つくらず、もちこませず)を打ち出したことが評価された。しかし佐藤元総理は、重大な緊急事態に限定しているとはいえ、核の持ち込みについて密約を交わしていたことが明らかになり、ノーベル平和賞委員会内でも議論となったことがある。

AbemaTV『AbemaPrime』では、「非核三原則」にまつわる取材をした、共同通信編集委員の太田昌克氏にSkype中継にて話を聞いた。

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――太田さんは“核”に関する取材を長年続けていらっしゃいますが、これに関する取材もされたそうですね?

太田)実は冷戦が終わって、アメリカで公文書の解禁がどんどん進みました。1999年から2000年、私は留学しているあいだに公文書を調べました。そうしたら佐藤栄作元総理が1969年1月にジョンソン駐日大使と会談しているという資料がありました。アメリカの核の力が必要だと。

佐藤元総理は、もしも戦争になればアメリカが核を使って欲しいという発言もしているんです。「非核三原則」は、国民をなだめるために言っていたものであり、実は佐藤元総理は「非核三原則」はナンセンスなんだよということを言っていたんです。そういった公文書がみつかり、私は2000年の夏、共同通信で記事にしました。その後、ノーベル平和賞委員会もその公文書の存在に気づいたのです。そこで、(委員会でも)佐藤さんにあげたのは間違いだったのではないかという議論がなされました。

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佐藤元総理は、ニクソン大統領(当時)と、沖縄からアメリカの核は撤去するが『アメリカが持ち込むときは日本はイエスと言う』という内容の“核の密約”をしていたのです。現在まで(核は、実際に)持ち込まれてはいないが、アメリカはこの密約はまだ有効だと考えている節があり、今後持ち込まれる可能性がなくなったわけではありません。

成し遂げたものを評価するわけではないという「ノーベル平和賞」の性格について、太田さんは、「ノーベル平和賞は社会科学といいますか、なかなか計量化しにくい、可視化しにくい。政治のロビー活動なんかが入ることがあるわけですよね。評価というものが、時々の“相場”感」と指摘。「場合によっては政治的思惑が入り込みやすい」と話した。

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