
鳥取県の許可を得て、町おこしを目的とし、しめ縄や加工食品などを作るための大麻栽培をおこなっていた大麻関連商品販売会社代表の上野俊彦容疑者が、自宅で乾燥大麻88グラムを隠し持っていた疑いで逮捕された。持っていた乾燥大麻は栽培していた産業用の大麻とは違うものとみられ、麻薬取締部は入手ルートを調べている。
ところで、産業用大麻とはいったい何か。19日にオンエアされた『AbemaPrime』(AbemaTV)では、その疑問について専門家による解説が行われた。
そもそも「大麻」の葉の部分などをあぶった煙に含まれる成分には脳を興奮状態にさせる効果もあるとされる。常習性が強く、覚醒剤など、他の薬物乱用のきっかけとなる場合もあることから、法律で規制されている。
ただし大麻は、古くから人々の生活を支える植物として活躍。縄文時代には、衣服や釣り糸の材料として、実の部分は食用として、多くの地域で栽培された。現在の「産業用大麻」は品種改良され、そうした成分はごくわずかになっているのだ。
今でも神社のしめ縄や、七味の材料など、日本の伝統には欠かせない大麻だが、大麻草の規制は厳しく、都道府県知事の許可がおりた人以外、栽培することはできない。

番組では、植物由来の毒物などに詳しい日本薬科大学・船山信次教授に話を聞いた。
--大麻の栽培を許可された農家が大麻所持で逮捕。所持していたものが「嗜好用」大麻だったということなのでしょうか?

船山教授「せっかく図のように区分していただいたんですけれど、両者の区別はないんです。現在の見解としては、“大麻”っていうのは植物名ではない。植物名は『麻』なんです。(大麻には)カンナビス・サティバという一種類しかない。
ただ、幻覚成分のテトラヒドロカンナビノール(THC)含有量の違いはあります。いわゆる産業用の大麻にもTHCは含まれていて、少ないだけです。
--では、この農家で栽培していた“産業用大麻”を乾かして吸ったりすると逮捕ということになるんですか?
船山教授「そうです。実際に産業用として栽培していようが、薬用と言われているものであろうが、乾燥させて所持していれば、大麻取締法に引っかかります。使い方なんですね。成熟した大麻の『麻』表面の繊維などにはTHCは入っていません。種子にも入っていません。ですから種子は七味唐辛子に使ったり、漢方にも使われます」
--大麻取締法では、「大麻草の成熟した茎およびその製品、並びに大麻草の種子およびその製品」は合法としている。つまり葉の部分などをあぶって煙を吸うと違法になる?
船山教授「葉っぱと、麻には雌株と雄株があって、雌の株の花のところ、これがいちばん(含有量が)多いんですね」
--日本の伝統にも欠かせないが。
船山教授「麻は昔から下駄の鼻緒や神社のしめ縄、和弓の弦などに使われていて、日本の文化に大きな影響を与えている植物でもあるんです。今回の事件は残念ですよね。日本の文化としてちゃんと守って、伝えていかなければなりません。使い方を間違ってはいけないということだと思います」と説明した。
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