大友啓史監督による衝撃スリラー『ミュージアム』に小栗旬が主演した。家庭をかえりみない刑事役で、そのことが遠因で謎のカエル男に狙われてしまう主人公像について、「もう少し(自分の)子どもが大きくなっていたら、手を出すことを嫌がったかもしれないですね」と語る小栗。映画『ミュージアム』を経て、父親像にも影響があったという彼に聞く。
――この『ミュージアム』は相当ショッキングな物語でしたが、最初にストーリーを知った時の印象はいかがだったでしょうか?
最初は原作を読みましたが、正直ちょっとキツいなって思いました。そして、演じるとなると、いろいろなことを制限しないと難しいな、と。もしかすると、もう少し(自分の)子どもが大きくなっていたら、手を出すことを嫌がったかもしれないですね。
――なるほど。確かに主人公の沢村刑事は、今の世の中が是とする理想の父親像とは、ちょっと遠かったかもしれません。
僕の娘は、まだ、大人のようにコミュニケーションが取れる状況ではないのですが、その環境下での役だったから演じられたのかもしれないですね。お話をいただいた時は、そこ(父親像)に対するとてつもないリアリティーみたいなものが、ちょっと薄かったと思います。
――実際に撮影を終えた今、沢村刑事役を演じていかがでしたか?
いざやってみたら、本当にしんどかったですよ(笑)。でも、すごくいい経験でした。僕は完成した映画『ミュージアム』を観た時に、世のお父さんたちの応援歌にもなっていたらいいなと、ちょっと感じてもいたので。
――激しい肉弾戦もありましたが、どういう準備を演じる上でしたのですか?
動ける体を作ることを多少はしましたが、後はどうやさぐれていこうかな、と考えたくらいでした。でも映画を観た時に、俺ってこういう顔するんだって思いましたね。自分でも出会ったことがない表情が見えたことは、俳優にとって財産になるなって思いました。
――カエル男を演じる妻夫木聡さんとの対決シーンは、肉体的にも精神的にも追い込まれたと思いますが、共演の感想はいかがですか?
妻夫木さんは、すごくフラットな状態で現場にいらっしゃったんです。もともと、いろいろなアプローチで攻めてくるタイプの方なので、今回はどういう風に攻めるかなと思っていましたが、彼がそうなら自分もそうしようという感じで、自然体でいました。
――よく俳優さん同士が敵対関係になっている場合、一定の距離を置くなどという話も耳にはいたしますが。
いえ、尾野真千子さんも含めて、待ち時間は普通におしゃべりもしていました。妻夫木さんとは新潟ではほぼ毎日、ふたりで飲んでいましたね。新潟と大阪での撮影時は、(沢村が)カエル男にものすごく追い詰められていくまだ手前だったので、飲んでいても大丈夫かなと(笑)。
――今回の映画『ミュージアム』との出会いを経て、一番感じたことは何でしょうか?
仮に自分が沢村と同じ立場になったら、刑事じゃない自分が犯人にたどりつけるかとか、たどりついたとして彼のように勇気を出して対峙できるかとか、いろいろ考えました。先ほども言いましたが、その意味で世のお父さん方の応援歌でもあるのかなって思います(笑)。
映画『ミュージアム』は、大ヒット上映中
(C) 巴亮介/講談社 (C) 2016映画「ミュージアム」製作委員会