日本生まれでタイ国籍のウォン・ウティナンくん(16)。国外退去処分を不服として控訴、現在係争中の彼は、住んでいる山梨県から自由に出ることは出来ない。その判決がきょう言い渡される。
ウティナンくんは2000年、甲府で生まれた。母親は不法滞在のままタイ人男性との間にウティナン君をもうけた。その後、母親がタイ人男性と別れたため、母1人・子1人で生活してきた。小学校にも通えなかったウティナンくんだが、13歳の時、地元の人権団体などの支援により、中学校に編入することができた。しかし、母親の不法滞在を理由に退去強制処分を言い渡されてしまう。
日本はアメリカやブラジルのように、生まれた場所で国籍が決まる「生地主義」ではなく、親の国籍によって子供の国籍が決まる「血統主義」を採用している。そのためウティナンくんは日本で生まれたにも関わらず、日本国籍を持つことができないのだ。
「『君とお母さんはタイに帰りなさい』ときつく言われて、頭の中が真っ白になりました。」
「僕は日本で生まれて育ったので日本のことしか知りません。」
ウティナンくんは一度もタイを訪れたことがなく、タイ語は読み書きさえ出来ない。
去年、母子は処分の取りを求めて提訴するも棄却。しかし判決文には、不法滞在を続けてきた母親がタイに帰国後、親代わりの人物が現れた場合、ウティナンくんの在留特別許可について再検討される可能性があるということが書かれていた。
ことし9月、母子はこの可能性にかけた。母親は息子を残しタイに帰国、そしてウティナンくんは一人で東京高裁に控訴、裁判を続けることを決めたのだ。今、母とは、週に数回LINEなどで連絡を取り合っているという。
「本当ならお母さんも一緒に、僕と一緒に日本で生活していきたいと思っているはずなんですね。でも、その気持ちを抑え僕のために帰ったので、僕はお母さんの分も裁判に勝って、日本にいられるように頑張っていきたいと、改めて心から固く誓いました。」
果たしてウティナンくんが裁判で在留資格を勝ち取ることはできるのか。
外国人の労働問題や入管事件を多く扱う暁法律事務所の指宿昭一氏は「日本の裁判所の名誉のためにも、良い判決を出して欲しい」と話す。しかし法律上、強制退去処分になってしまう可能性もある。ウティナンくんが日本に在留し続けるためには、在留資格を得なくてはならない。
判決はきょう午後1時、東京高裁で言い渡される。
(C)AbemaTV