テレビ朝日政治部・総理官邸担当の吉野真太郎氏が解説
安倍晋三総理大臣は5日夜、今月26日・27日にハワイを訪問しバラク・オバマ大統領と首脳会談を行い、合わせて真珠湾を訪問することを発表した。
今月8日に真珠湾攻撃から75年を迎えるが、現職の総理大臣が現地を訪れ、犠牲者を慰霊するのは初めてとなる。今回の決定の裏側を、テレビ朝日政治部・総理官邸担当の吉野真太郎氏が解説した。
ーー突然とも言えるこの発表は、なぜこのタイミングで行われたのか?
吉野:安倍総理が会見でも言っていたとおり、前から考えていたことで、取材する中でも、この2ヶ月くらいで動きが本格化しているのでは、という感触があった。そして、その発表が5日となった。
ーー安倍総理がなぜ今、真珠湾に訪問しようとしたのか?
吉野:本当は早く行ってもいいのかなという気はするが、戦った相手なので双方に時間が経たないと生々しいというところもある。戦後70年という時が経つ中で、そろそろ行ってもいいのではという空気もできてきた。
そして、オバマ大統領も日本に来て、安倍総理自身も『戦後の総決算』というものを強く意識した 総理大臣だと感じている。 さらに、それを後押しする環境が、今整って来たというのがある。
——今年の夏にオバマ大統領が広島を訪問したことと、どこかでリンクしているのか?
吉野:100%リンクしていないかといえばそうではないが、お互いに条件をつけるのはよそうというのはあったようだ。だから日本政府としても、あくまで自発的に真珠湾を訪問するんだ、と。もちろん、オバマ大統領の広島訪問が日本として行きやすい雰囲気になったかもしれないが、そこが交換条件だったということはない。
ーー今、戦後の総決算をする意味とは?
吉野:今の大統領に対し、日本として敬意を表するということは次の大統領の対しても敬意を表する。アメリカに対して日本はちゃんと敬意を持って接しているということを表現することができる、ということだ。
——アメリカ国内の世論を考えても大変意義深いことだと言えるが…
吉野:日本にとっても象徴的な場所だと言えるが、アメリカにとっても歴史上で忘れてはならない場所。そこに初めて行くことはアメリカにとって大きいことで、退任を間近に控えたオバマ大統領にとっても一つの大きな成果と言えるのではないか。
ーードナルド・トランプ次期大統領に対する牽制もあるのか?
吉野:これに関しては、トランプ氏にとっても悪い話ではないと思う。牽制というよりは、むしろ歓迎してくれるかもしれない。
ーー安倍昭恵夫人が今年8月にハワイの真珠湾を一人で訪問した。菅官房長官はこの訪問について「私的なものだ」としていたが、安倍総理の真珠湾訪問と関係があるか。
吉野:それに関して夫婦間で話はしたかもしれないが、必ずしも昭恵夫人は、安倍総理の思った通りの事ばかりをやる方ではない。時として安倍総理に真っ向から反対している人と交流しているため、安倍家で話し合ってそういう方向を打ち出したということではないだろう。
ーー靖国神社と真珠湾の問題は、アジアでも議題として根強く残っているが、この訪問がアジアの中でも解消されるきっかけになるのか?
吉野:靖国神社への訪問は場合によっては対立を深めることになりかねないと思うが、真珠湾への訪問は『仲良くしましょう』というメッセージになる。東南アジアにとっても、東アジアで日本とアメリカがいい関係を作っていくということであれば、それはもしかすると、紛争の火種を予防できるかもしれない。
ーー今回の訪問に対する、分かりやすいメリットとは?
吉野:悪い話ではないため、訪問することによって政治的なメリットはあると思うが、少なくともこれで支持率が下がるということはない。ただ、安倍総理として得たいものは、戦後の総決算を重視しているため、それを自らの手で成し遂げたということで、歴史に名を残せるというのはあるかもしれない。
会見で「二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない、その未来に向けた決意を示したいと思います。」と語った安倍総理。歴代総理で初の真珠湾慰霊に注目が集まる。
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