インタビュー・テキスト:武田砂鉄

写真:オカダマコト

 「アイドルとして活動後、サイバーエージェントに勤務」なんて、明らかにあちこちからやんや言われそうな経歴だけど、そういう人に限って謙虚で正しい感じで来るのだろうと思ったら、謙虚で正しく楽しい感じなのでした。不遇のアイドル時代をしっかり振り返りつつ、偏愛のテレビ番組を語りつつ、菅田将暉の画像を見ながら寝落ちする現在を語る様子が清々しいのでした。

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 今回登場するサイバーエージェント女子は奥田綾乃さん(29)。2009年 に入社するやいなや社長室に配属。社長アシスタントとして携帯ゲームの企画を経験し、2010年からはゲームのプロデューサーに。その後、今年10月に新設された株式会社QualiArtsにて広報を担当し、AbemaTVで放送されている『AbemaPrime』(毎週月~金曜日 21:00~23:00)にも出演。小学生の頃より子役として活躍しており、パフォーマンスグループ「PRECOCI(プレコシ)」に所属。2001年に、シングル「キミがいるから」の発売をきっかけにソロでも活躍する。似ていると言われる芸能人は、TKOの木下隆行と篠崎愛。好きなテレビ番組は『ザ・ノンフィクション』。 

 

『THE 夜もヒッパレ』に出たことだけが誇りです

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――この10月に設立された、スマートフォンゲームを開発・運営する会社にいらっしゃるとのことなんですが、「QualiArts」って何て読むんですか。

奥田 「クオリアーツ」です。アメーバのゲーム事業本部が、そのまま子会社になりました。私自身は2009年に入社して、初年は社長室に配属されたんですが、2年目からはずっとゲーム事業ですね。

――ご自身の希望だったんですか。

奥田 最初は希望していたわけではありませんでした。特にゲームの知識もありませんでしたし。配属当時は自分名義のmixiを使って「絵師さん募集」みたいなコミュニティで描き手を探して、池袋のカフェに会いに行ったりしてましたね。

――入社前はタレントをやられていたんですよね。

奥田 大学生までやってましたね。小学校3年生ぐらいから始めることになりました。

――「お姉ちゃんが応募した」的なアレですか。

奥田 友達の親に勧められたんです。まず妹が芸能活動を始めました。ちなみに、その妹も今、同じ部署にいるんです。藤田(社長の藤田晋氏)に「友達の親に勧められて入った」って言ったら、「大体、みんな自分でやったって言いたくないから、そういう理由つけるよね」って言われました。 

――賛同します。大体、ウソですからね。よく「お姉ちゃんが勝手に応募した」って聞きますけど、冷静に考えたらなかなか非道ですよね。そんなことが発覚したら、高校生だったら部活辞めさせられたり、下手すりゃ退学させられることもある。

奥田 でも本当なんです。最初のうちは、再現ドラマとかホラー映画とかVシネマみたいな作品に出ていました。

――Vシネの子役の使いどころってどこですか。

奥田 幼少期のトラウマの回想シーン(笑)。2年ぐらいやって、その後はグループで活動してました。歌って踊ってみたいな。

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――どんなアイドルグループだったんですか。

奥田 あっ、当時はアイドルではなく、アーティストだと思っていました。

――痛々しいですね。 

奥田 アーティストだ、と育てられたんです。どっちかというと、ちっちゃい子たちが本格的に歌って踊る、Folder的なテイストですね。

――流行ったんですか。

奥田 『THE 夜もヒッパレ』は出ました。

――おっ、時代を感じさせるフレーズ。

奥田 3回出たんですが、印象に残っているのは、華原朋美さんが復活してすぐの曲「Never Say Never」を歌った時のこと。華原さんとたまたま出演日が一緒で、「今日、歌わせていただきます!」って楽屋にあいさつしに行ったら抱き締めてくださったのが嬉しかった。あとは、センチメンタル・バスの「Sunny Day Sunday」とL'Arc-en-Cielの「Driver’s High」を歌いましたね。

――選曲がガチャガチャですね。「この曲、歌う人が決まらないから、彼女たちに歌わせておくか」みたいな感じもしますが……でも、あの頃の『夜もヒッパレ』って、そういうアイドルたちが何でも歌いこなす戦場でしたよね。山田優さんがいたy’z factoryとか。

奥田 y’z factory、めっちゃ出てました。

――15年ぶりぐらいに「y’z factory」と口にしました(笑)。


奥田 15年ぶりに聞きました(笑)。『THE 夜もヒッパレ』に出たことだけが誇りです。


――十分です。そのあとソロデビューして、これがなぜかパパイヤ鈴木さんプロデュースだったとか。


奥田 なかなか大雑把な決まり方で、中学時代の友達がパパイヤ鈴木さんのめいっ子で。それをきっかけに私のマネージャーとパパイヤさんのマネージャーが仲良くなって、コラボしちゃいましょうって。

――随分とイケイケな決まり方。

奥田 フィンガー5「恋のダイヤル6700」をカバーして、パパイヤさんがミックスして踊りもつけて。PVはウルフルズを担当されている方が監督だったんですけど、ソロ作なのに半分ぐらいパパイヤさんが出てくる(笑)。

で、間奏に私が、回しゼリフを入れるんです。「もしもし、奥田綾乃です。先輩、私のこと覚えてますか……」みたいなコメントを。それがすっごい恥ずかしくて。

――友達に聞かれたくなかったのでは。

奥田 もちろん。でも、地元の新星堂が「奥田綾乃フェア」を組んでくださって、友達にはそこで聞かれてしまいました。

――どうして芸能活動をやめちゃったんですか。


奥田 先が見えないから。

――でも、グループから1人でソロになったってことは、その中では突出していたんでしょうね。


奥田 精力的に活動はしてたんですけど、向いてないなとはずっと思ってましたね。

菅田将暉画像を見ながら寝落ち

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――芸能界を目指す人って「テレビを見て、誰それにみたいになりたい、って思った」みたいなきっかけがありますよね。そういう経験ってありますか。

奥田 優等生タイプだったんで、求められてることを言わなきゃっていう気持ちが強かったんです。小学生の卒業式の日、将来の夢をみんなの前で1人ずつ言ったんですが、私は「ジャネット・ジャクソンさんのような世界的なアーティストになりたいです」と言いました。

――「奥田、あいつ大丈夫か」みたいな空気にならなかったですか。


奥田 いやむしろ、私、そのレベルを求められてるって思っていて(笑)。

――他のみんなが「警察官になりたい!」などと言っているなかで出た「奥田綾乃、ジャネット・ジャクソン発言」。奥田さんがジャネット・ジャクソンって言ったことで、誰かの夢を潰しているかもしれませんよ(笑)。奥田の「お」の後にも大半の生徒が続いたはずで、そこではもう「モーニング娘。みたいなアイドルに」なんて言えないじゃないですか。


奥田 その視点、今日初めて学びました(笑)。

――実際の芸能活動は、ジャネットから下方修正しないと臨めないですよね。その時の目標となった人っていたんですか。


奥田 リアルなところだと、松たか子さんはずっと憧れでしたね。いや全然リアルじゃないですけど。とにかく松さんの歌が好きでしたし、あの媚びていない感じも素敵でした。

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――今でもアイドル時代の歌は歌うんですか。


奥田 カラオケ店によっては、ソロになって1曲目の「Twinkle Trick」ってタイトルのアニソンが入っていて、それを友達が勝手に入れてくると歌います。

――献身的ですね。 

奥田 サービス精神です。でも、ノリで入れた人は、私が歌うころになると醒めているんです。それでも必死に盛り上げます。

――ご自分がテレビを観て好きになったアイドルとなると誰なんですか。


奥田 小学校4年生ぐらいの時にタッキー(滝沢秀明)が大好きになりましたね。ドラマの『ニュースの女』『魔女の条件』『木曜の怪談』あたりを見て。あとはw-inds.が好きでしたね。

――真ん中の人、急に背が伸びましたよね。


奥田 見るたびに背が伸びていましたね。今、追いかけているのは菅田将暉さんです。……全然好きじゃないはずなのに好きなんですよ。


――おっ、なんだかちょっと偉そうな見解ですが。


奥田 私、目がぱっちりしてくりくりしたかわいい系の顔が好きなんです。小池徹平さんとか、今だったら千葉雄大さんとか。なんで菅田将暉さんに引かれるのかって。ギッザギザのナイフのような触れたら切れちゃいそうな感じ…………。


――それでいて、ちょっとふにゃふにゃしてる感じもありますね。


奥田 急に手を噛まれそう。サイコパスっぽくもある。ドラマの最後でちっちゃい子犬を助けてそのまま死んじゃう悪者みたいな感じ。間違いなく過去にすごいトラウマを背負って……。

――大丈夫ですか。まさかVシネの子役時代の思い出が……。


奥田 わざわざ画像検索して見るほど好きになった人は久しぶりです。見ながら寝落ちしています。

――画像保存してフォルダ分けしてたらヤバいですが。


奥田 今のところ、そこまではいってないです。でも、周りに聞いても、ここまでキテる人は珍しいですね。

――使う側もたくさん使ってますもんね。「どうだ、菅田が出るぞ!」って感じで。


奥田 いるだけでいい。

顔が爆乳顔なんです

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――そういえば、過去に似ていると言われた芸能人は、TKOの木下さんっていう情報が。


奥田 結構言われますね。

――すごい下げてきましたね。


奥田 いやでも、木下さんの宣材写真に似てるって言われるんです。……これです。(写真を見せる)

――確かにそう言われると、ちょっと似てるかもしれない。


奥田 鼻が丸くて口がぷくっとしたところとか似てて。昔は深キョンとか言われたんですけど、「似てないよ」って言われそうなので、リスクを考えてTKOの木下さん。

――低リスク高リターン。


奥田 どうなんでしょう、もしかして逆に狙ってるって思われますかね。あと、篠崎愛さんとか、相澤仁美さんとか、巨乳どころか爆乳みたいな人に顔が似てるって。体ではなく顔が爆乳顔なんですよ。

――顔が爆乳顔って、新しい(笑)。ところで、好きなテレビ番組は『ザ・ノンフィクション』だそうですね。私も大好きなんです。


奥田 大好きです。寿司職人を目指す仁君を追った「上京物語」。夜逃げを繰り返している「漂流家族」。あとは、ネットカフェに住み着いてる親子ぐらい年の離れた夫婦の話とか。

――どれも痺れますね。普通、ヒューマンドキュメンタリーって前向きに終わりますが、『ザ・ノンフィクション』は夢が叶わずにそのまま終わったりしますから。


奥田 寿司屋で働く仁君なんて、いきなりアニソンDJに生きがいを感じ始めて、危うく仕事を辞めそうになりましたもんね。

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(『ザ・ノンフィクション』を取り上げた新聞の切り抜きに熱中する奥田さん)

――そういう人間くさいものは堪能するけれど、普通の連続ドラマは見ないそうですね。


奥田 毎週引き伸ばされるのが嫌なんです。単発なら見ますね。スペシャルドラマとかは好きです。ドラマも最終話だけ見て泣いたりしますね。最後って、よく知らないサブキャラとかもどんどん出てくるじゃないですか。

――ラスト15分くらいで、一気にまとめて片付けに来ます。


奥田 恋敵だった人がすごいいい友達になったりとか。CMの間にあらすじをばーっと読んで、「あー、それは感動するわ」って泣く。なので、CMの時間も惜しくない。

――嫌な視聴者ですね。


奥田 こんな人がAbemaのサイトでテレビの話をしていいのか(笑)。

――お笑いも、いわゆるキャラ系で突っ走るのが好きではなかったそうで。

奥田 ちょっとませていたのかもしれません。芸人さんを「かっこいい!」みたいに言うブームもあったけど、「は?」って思ってましたから。

――こないだある芸人さんと話していたら、ソーシャルゲームに課金をたくさんしていて、ランキングを見たら、知り合いの芸人らしき人が何人か含まれていた、と。待ち時間が長い仕事だからかもしれませんが、そういう芸人さんたちは御社の優良顧客かもしれません。

奥田 『ブーシュカ』って、弊社初のソーシャルゲームがあるんですが、とても流行っていたころ、毎回イベントの上位にあべ静江さんが入っていて、スタッフブログにコメントしてくださるんですよ。たまに「今回のイベントには反対です」みたいな苦言も。でも、「ネットゲームは お互いに 助けられたり 助けたり… 沢山のブーシュカの中から ある日チョイ っとつまみ上げたのが この[ぷにゅトン]」とか、ブログに書いてくださったのが嬉しくて。『ブーシュカ』のプロデューサーを一時期やっていたので。


――ジャネット・ジャクソンになると豪語した女性は、パパイヤ鈴木にプロデュースされた後、あべ静江に愛されるゲームに携わることになった……今日は、社会の荒波ってものを具体的に知ることができた気がします。ありがとうございました。


奥田 ありがとうございました!

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武田砂鉄 | フリーライター武田砂鉄 | フリーライター – フリーライター
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