12日、日本外国特派員協会で映画『沈黙 -サイレンス-』(マーティン・スコセッシ監督、21日公開)の記者会見が開かれ、浅野忠信、イッセー尾形、窪塚洋介が海外メディアからの質問に答えた。
同作は、遠藤周作が1966年に発表した、弾圧下にある隠れキリシタンたちと司祭の苦難を通して「信仰」や「神」について訴えかける歴史小説。スコセッシ監督が原作に出会って以来28年のあいだ映画化を夢見てきたと語る意欲作。日本が舞台というだけあって、3人のほか、塚本晋也、笈田ヨシ、小松菜奈、加瀬亮ら、豪華出演者も見どころだ。
作中、何度も悔い改めては踏み絵に応じてしまう隠れキリシタン・キチジローを演じた窪塚は「ずるくて、汚くて、弱くて、醜くて、まさに何度も"転ぶ"。ただ、それは"棄教"することとは違っていて、転んでも起き上がる、起き上がった時にはまた信じている、また転ぶ。わがままで人間臭いなと思います。自分自身の心の中に自然と湧き上がってくるものが大切なのではないか、という僕の役があることで、現代のみんなにも共感してもらいやすくなったらいいな」と語った。
窪塚によると、原作や日本の歴史・文化に敬意を払い、考証にも万全を期して撮影に望むスコセッシ監督の姿が印象的だったという。そんなスコセッシ監督の演出について尋ねられたイッセー尾形は、「こうやりなさい、こういうのはやめようというような否定的な言葉は一回も聞いたことが無い。そうすると、俳優って感性が研ぎ澄まされてきて、アイデアが出てきたり、相手役の醸し出す雰囲気もキャッチできたりしてくる。実際に、予想もしなかったシーンが撮れた。監督はそういう場を作ってくれました」と絶賛。
窪塚も「そこに居てくれるだけで演出になっている。自分が二倍も三倍も素晴らしい役者になったような感覚になれた」と振り返った。そんな偉大な監督に「ニューヨークに来たら家に遊びに来て」と二度も言われたという窪塚だが、「本当にマネージャーにメールしたらスルーされました(笑)」と会場の爆笑を誘った。
作品の魅力については「やはり神が"沈黙"しているということ、自分自身の心の深奥に入っていって答えを見つけなければいけないというところが、一番の大切なところ。スコセッシ監督の力のおかげで、世界中の人に見ていただけるチャンスができた。作品によって、少しでも良い明日がくることを願ってるし、そう信じている」(窪塚)、「日常生活とはかけ離れた世界の過酷な物語です。まるで万力で締め付けられるような、でもこれこそが人間だ、という。見終わった後、清らかなものが残っている、これが一生続く確信がある作品」(イッセー尾形)と力強くPR。アカデミー賞受賞について聞かれた浅野は「選ばれないということがあったら、神様が審査員に余計なことを喋ったのではないかと(笑)」とコメントした。