RHYMESTERは日本のヒップホップの歴史を作ってきました。その功績すべてをここで紹介することはできないけど、中でもあまり着目されてない点を1つ挙げるなら、それは彼らの繊細な視点と独特な発想力であると思います。当たり前の日常をちょっとわくわくするエンターテインメントに変えてしまうモノの見方、それが彼らの真骨頂なのです。
この連載はあなたの暮らしをちょっとポップにするための読み物です。社会の大きな出来事から日常の些細なもやもやまで、Mummy-Dと一緒に考えてみてはいかがですか?
■Dさん、モンストのCMに出演
ーー「モンスターストライク」のテレビCMに出演されたそうですね。
Mummy-D そうそう。柳沢翔さんという監督から出演オファーをいただいて。まだ30代なのに映像業界でいろんな賞をもらってるすごい人なんだよ。
ーー柳沢翔……。いけ好かないですね。
編集M 大人気ないですね……成功した同世代に対する嫉妬ですか?(笑)
Mummy-D 入りましたね、ジェラシー(笑)。まあそれはいいとして、彼は結構なヒップホップヘッズでいつか俺を起用したいと思っててくれたみたいだったの。最近そういうヒップホップ世代の人たちが仕事の現場で自分の意見を通すことができる立場になってきてるみたいだね。
ーーCMのDさんの髪型、すごく新鮮でカッコ良かったです!
Mummy-D おじちゃんは清潔感が大事だなって思うよ。今回は部活も担当するちょっと怖めの担任の先生役だったの。でも実際に俺が学校の先生になったら、割とグダグダな感じになってたと思うんだよ(笑)。生徒と近い感じっていうかさ。優しさで生徒からの人気を得ようとするタイプ。
マネージャーT 姑息ですね……(笑)。
Mummy-D でもそういう先生いるじゃん、音楽の話とかしてくれがちな(笑)。実際の俺はそういうのを目指していくと思うんだけど、今回は怖い先生の役だったからさ。やる前は「そもそも俺が先生に見えんのかな」っていうのがあって。しかも「怖いかな?」とか。撮影前の状態だと髪が茶色すぎたから黒く染めて、さらに先生っぽく見えるように少し短くしたんだよ。それで現場に行って用意された衣装のワイシャツを着て、ネクタイ締めて、ジャージ着たら、もうあの先生の感じになってたんだよね。しかも全然フレッシュじゃなくて、教頭レベルの貫禄があって(笑)。
マネージャーT 学年主任みたいでした(笑)。
Mummy-D 今まで若者文化にどっぷり浸ってきてたから、俺としてはこういう感じじゃないと思ってたんだ。けど、実際こういうカッコしてみると結構怖えなっていう。
ーー確かに怖かったですね。昭和の悪徳刑事みたいなダークヒーローとか絶対にハマるって思いました。Dさんは俳優のお仕事とか興味あるんですか?
Mummy-D ちょこちょこお話しはいただくんだけどね。いきなりピエール瀧さんとかハマケンくんにはなれないのはわかってるけど、機会があれば色々是非やりたいね。でもドラマとかは大変そう。
ーーそういえば、DさんはKREVAさんの音楽劇「最高はひとつじゃない2016 SAKURA」に出演されてましたね。どんな物語で、Dさんはどんな役だったんですか?
Mummy-D 音楽劇だからミュージカルとも違ってて。お芝居があって、ラップの部分があって、またお芝居があってっていう感じだったの。どんな話かを説明するのは非常に難しい(笑)。神代桜っていう桜があるんだけど、その桜の木を媒介に1人の青年が戦国時代と鎌倉時代と幕末を行ったり来たりしながら成長していく、みたいな。めちゃめちゃ端折って言うとそんな感じ。主人公の青年をジャニーズの内博貴くんって役者さんがやってて。俺は武田信玄役だったんだよ。
ーーどうでした? 信玄役は?
Mummy-D もう演じるのが楽で楽で。
ーー楽だったんですか?
Mummy-D うん。だって武田信玄には映画や小説、ゲームとかで散々触れてきてるから、もう俺の中で完璧な武田信玄像が出来上がってるんだよ。ステレオタイプな武田信玄像もやれるし、俺なりの武田信玄もできる。だからもう演技じゃなくてコスプレよ(笑)。すっごい楽しかった!
ーー劇でDさんが演じた武田信玄は、Dさんなりの信玄だったんですか?
Mummy-D いやかなり一般的な信玄だったね。でもあの劇は脚本に深みがあったので、実は俺なりの信玄に近いところもあったんだ。
ーーDさんなりの信玄ってどんな感じですか?
Mummy-D 一般的な武田信玄って猛虎って感じじゃん。でっぷりとしてて髭も立派で。でも俺なりっていうか、歴史を詳しい人は実は彼が割と繊細な人だったっていうことも知ってるんだよね。……な~んて。
■Dさん、「真田丸」を語る
ーーそういえば、大河ドラマ「真田丸」は観てますか? 武田信玄は直接出てこないけど、物語上非常に重要な存在ですよね。
Mummy-D 毎週観てるよ。硬派な中にもコメディ要素が入っててすごい面白い。
ーーDさん的な見所は?
Mummy-D 俺が「真田丸」の見所を話すの!? まあいいけど……(笑)。今回の「真田丸」は三谷幸喜さんが脚本やってるじゃない? 俺は彼のユーモアセンスが好きで、映画も全部じゃないけど結構観てるんだよ。しかも歴史好きにとっては「そこをこう表現するんだ!」とか「ここはこう端折るのね」とかそういうのが、いちいち納得させられる感じでさ。例えば、「真田丸」では今のところ主人公の名前を真田幸村ではなく真田信繁で通してるじゃない? 幸村って呼び名は江戸時代になってから言われるようになったものだから、戦国時代にはほとんど使われてなかったんだよね。そういうのがわかってる感じもすごく渋いと思う。
ーー真田信繁のお父さん・真田昌幸があんなにキレものだったっていうのも「真田丸」で知りました。
Mummy-D 普通は知らないと思うよ。でも「信長の野望」で真田昌幸をゲットできたらもうガッツポーズよ。「真田丸」は大人向けのヒーローものなわけ。歴史を知らない人にとってはなんでもない人も、実は俺らにとっての大ヒーローで。そういう人たちがものすごい群像劇を繰り広げてる。仮面ライダーとかもいっぱいいると楽しいじゃん。ウータンとかもいっぱいいると面白いじゃん。そういう感覚だよね。しかもNHKの大河ドラマだからすごい演技力ある人が出まくってて。もう面白くないわけがない。
ーー星野源さんとかも出演してて、サブカル好きが取りつくシマもありますよね。
Mummy-D そうそう。堺雅人くんとか藤井隆さんとか割と知ってる人が出てるんだよね。っていうか、俺の解説付き「真田丸」を観たらヤバいよ! ちゃんと日本地図に勢力図とか相関図とか書いて説明するから、4倍は面白くなると思う(笑)。