生きる伝説的ユニット・SCARS(スカーズ)やNORIKIYO率いるSD JUNKSTA、さらにはMSC周りのプロデュースを手がけ、近年ではKOHHやGOKU GREEN、R指定らの作品にも関わるなど常に最前線のヒップホップシーンを支えている日本が誇る最強プロデューサー/トラックメイカーのI-DeA(アイディア)による新連載。
I-DeAがかっこいと思ったものやスタジオセッションを通しての最新情報などを気ままにお届けする新連載『MY EYE-DeA』。第2回となる今回は【サンプリングと現在のヒップホップについて】をアツく語る!某海外アーティストの激ヤバなライブ映像もあるぞ!
さて、気づけば夏も終わり、海や山やBBQや花火とみなさん楽しんだことでしょう。自分はBBQも海も山もどこにも行ってないです…。決してストイックアピールではないですw
人の制作に想像以上に時間割かれちゃって終わったはずの作業を後日また作業させられたりとか全然終わんなくてなかなか外に出れなかったんですねー。自分の制作に時間割けなくて、ストレスばっかたまってお金たまんない…。
まっ、自分で選択してやってしまったので、だったら断われよって話なんで、しょーもない愚痴はこのぐらいにしてw
前回、Anderson Paak.(アンダーソン・パーク.)のことを書いてましたが、ちょうどいいタイミングで来日してたのでライブ見に行ってきました。もちろん自腹でw
音楽って楽しいってことをほんっっっっとに再認識させられたライブでした。やはり才能のある人のショーは金払ってでも見る価値がありますね。
日本ももっともっと音楽の才能がある人に金かけて売ってほしいっすね。
ていうか、そういう方向に持っていかなきゃいけないのも自分のミッションのうちの一つなので信念貫いて頑張らなきゃいけないんですが…大汗。
さて、今回は「サンプリングの現在」について、諸先輩方を差し置いて知識不足な自分があーだこーだ言うのもおこがましいですが、自分なりに思ったことを書こうと思います。
そもそも「サンプリング」って何?って人には簡単に説明すると、既存の音を素材にして新たな曲を作るとでもいいますか……詳しくはネットで検索すれば、もっとわかりやすく書いてると思うので、そこは興味があってディグ精神旺盛な人は調べてみてください。
とにかくこの「サンプリング」っていう手法に僕がのめり込んだきっかけは「楽器が弾けなくても音符がよめなくても曲が作れる」という部分だったんですねー。
「曲を作る=楽器を弾く」ってことだと思ってた自分はこういう手法でヒップホップが作られてることがわかったとき、それはそれは衝撃でした。
実際、今こうやってこのヒップホップ業界にいるので、当時15歳の自分には後の人生を決定づけてしまうほどの衝撃だったわけです。
自分は世代的にDJ PREMIER(プレミア)やPete Rock(ピートロック)など、サンプリングを得意とするトラックメイカーが活躍していた時代で、彼らのサンプリングする箇所のセンスや手法を真似してみたり思いっきり影響を受けてたのですが、サンプリングも時代と共に進化していってて、初期は純粋にドラムブレイクの部分を繋いで曲にしたりだったのが、機材の進化で別々の「上ネタ」と「ドラムブレイク」を重ねるようになり、小説ごとではなく拍数ごとやもっと細かくサンプルを切って再構築したり…。
それまで声が入ってた部分をサンプリングすることがなかったのが声が入った部分も使うようになり、その後33回転の速度のレコードを45回転にして「早回し」にした状態のをサンプリングしたり、さらにテクノロジーの進化によりサンプリングした上ネタにフィルター等のエフェクターかけてみたりと、サンプリングの手法も常にテクノロジーの進化を利用して次々新しい手法が出てきてますね。
ちょうど、ネットにここ20年のおもな曲のサンプリング元と使用した楽曲をまとめたのがあったんで、これ見たら知ってる人はおおっ!ってなるだろうし知らない人は“実はこの曲サンプリングだったんだ!”って新たな発見あるかもです。
気付いた人もいるかと思うのですが、サンプリングの手法のほかに、ここ数年は「サンプリングする曲」にも進化というか変化があって、昔の曲をサンプリングすることが暗黙の了解みたいになってた部分があったんですが、そういうのは固定概念でしかないんでしょうね。最近はどの時代に作られてようが、なんの音だろうがクリエイターが「使える」と思ったら何でもサンプリングしてるイメージがあります。
まー、ビジネス的にもサンプリングの許可取るのに昔の曲だと原盤の権利を持ってる人探すのが困難だったり、ヒット曲で使用料が高かったり、そもそもオリジナルのアーティストがヒップホップみたいな汚い言葉を使う音楽に自分の大事な曲は使わせないw とかあるし、最近のアーティストの方がヒップホップやサンプリングに対して理解があるので許可取りやすかったりするのもあるんでしょうね、勝手な想像なんで一概には言えないですが。
あと、Drake(ドレイク)の「Started From The Bottom」とか自分最初聴いたときは、普通に「弾き」だと思ってたんですが後日「ネタ」だって知って“マジかっ!”ってしてやられた感じにくらったり、DJ PREMIERやJust Blaze(ジャスト・ブレイズ)、RZA(レザ)あたりの作る音は、どういうサンプルでも自分のグルーヴにしてくるし、音を聴いただけでその人のサウンドだってわかる凄さとか、元ネタ聞いてからそれをサンプリングした曲聞くと凄さが倍増しますネ。個人的にはかっこいいと思うと同時に悔しさもありますがw
前回、Beyonce(ビヨンセ)とKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)の曲のこと軽く触れましたが、ちょうどGeniusのYouTubeアカウントにBeyonceのアルバム『LEMONADE』で使われてたサンプルをまとめてた動画があったのでこれも興味深いです。
The Best Samples From Beyoncé's 'LEMONADE'
楽曲だけでなくフレーズも映像もサンプリングしてたり、いまや“サンプリング”は楽曲をつくる手法として向こうではヒップホップ以外でも普通に認知されてますね。
原曲をリスペクトしつつ、自分のカラーに、現代に蘇らせるべく再構築するというところに、かの有名なSHINGO☆西成のフレーズ「パクりちゃう、サンプリングや」ってとこの美学を感じますw
自分は、サンプリングする過程でジャズにハマって、そこからいろんなジャンルをディグりはじめたわけですが、数人の先輩方に本当にいろんな曲を教えてもらって、それが自分の「ヒップホップIQ」の向上に繋がったわけですが、次回はサンプリングの延長で「ドラムブレイク」についてまた書いてこうと思ってます。
では!