日本語ラップの記念碑的イベントとして語り継がれ、後のシーンにも多大なる影響を与えた『さんピンCAMP』が、その開催から20年を迎える7月10日(日)、同じ日比谷野外音楽堂の舞台で『さんピンCAMP20』として復活を果たす。昨今のフリースタイルバトル人気と相まって、ヒップホップにさらなる注目が集まる中、わずか1日にしてチケットがソールドアウトとなるなど期待を集める同イベントの開催を前に、イベントに裏方として関わったRYUZOと、当日の出演が決まっているD.Oに話を聞いた。
全員集合イベントみたいな感じやった。(RYUZO)
——『さんピンCAMP』が開催された頃、お2人はどうしてました?
RYUZO こないだその話をRINO君としてたんですけど、さんピンの後に、京都に寄ったRINO君に話しかけてるんすよ。京都歩いてたらいきなり憧れとるスーパースターのRINOが登場して、「RINOやんな?」って声かけたら「てめえ誰だよ?」って(笑)。
D.O それが’96年すか?
RYUZO そん時ちゃうかな。なんか来てたんすよね。
——D.Oさんも『さんピンCAMP』を現場では観てないんですよね?
D.O 僕らはいろんな違う「証言」してたじゃないけど、裁判行ってたり、少年院行ってたりする奴らがいっぱいいて、全員が全員生でこの感動は手に入れられなかったんですけど、後でビデオで観て知らない奴いないっしょっていう。僕らが求めてたヒップホップの根っこみたいなのがここにあるじゃん!みたいにみんながなったし、たぶん『さんピンCAMP』の映像でいろんなラッパーがラップしてる姿やステージを観て、日本のヒップホップのシーンのことを知ったぐらいすごかったと思うんですよね。
RYUZO なんかおまとめセットみたいな感じで。こん時ってそんな(音源)出えへんし、今みたいに誰でも出せないじゃないですか。だから、当時の日本語ラップファンは出たら全部聴いて、曲みんな憶えるぐらいのテンションの中の全員集合イベントみたいな感じやったっていう(笑)。
D.O しかも自分達が聴きたいゾーンの人達のってやつですよね。
——当時のヒップホップシーンの盛り上がりの一端を映像として残した意味は大きいですよね。映像を通じた影響力もすごかっただろうし。
俺ら全然足りなかったっていう領域に連れてってくれた(D.O)
RYUZO いろんな偶然が重なって、すごいもんになった。日本中が盛り上がったんちゃうっすかね。関西でもボスり狂ってましたね。衝撃的やったもんな、人間的にもオリジナルすぎて。俺らも「ブッ飛んでんな」とか「キテるな」とか言われるけど、全然ヤバいっすよ。ものすごかったから。
D.O そういう話になってきちゃうんですよ、ホントに。なんか、もう安心させてもらったっすよね。自分達が振り切っちゃってんのかなとかって感じかと思ったら、それどころか俺ら全然足りなかったっていう領域に連れてってくれちゃったんで。
RYUZO 映像に残したん初めてじゃないですか、この時代の人らを……RINO君登場がカッコよすぎるんすけどね。
D.O あれとかも全部後に裏話聞くんですけど、ホントは前が終わったらすぐ入ってってRINO君が『夕陽のタンガンマン』をやる予定だったのに、音が来ない、シーンとなってると。それでいきなり口笛してみよっかなってそこでポピポピポーッてやり始めたっていう(爆笑)。
RYUZO (笑)。
D.O それ終わって(DJ)YAS君が音出すタイミングも全部が神がかって今も語り継がれる級の形にしてしまってて。ホント全部がマジ、ハンパないんですよね。これがヒップホップだろって。それで、この当時を知ってる人達が今ヒップホップ知ってる大人になって、ヒップホップをCMで起用したり何かしたりする時代に今なってきてて。
RYUZO そういうたらそうやね。TVの人らもそうなんやろうな、結構。
D.O そういう全部の最初を作ってくれた偉大なるイベントですよね。
RYUZO 今は『フリースタイルダンジョン』とかテレビであれだけ騒がれてKOHH君なんかパリコレでランウェイ歩いてライヴまでしてるんすよ。ANARCHYは入れ墨だらけでドラマ出てるし。先輩達や俺達も失敗何回も繰り返して、それで学んで学んで....色んなラッパーの屍の上に今のシーンがあるから。
D.O いろんなものが20年周期で一周するような感じなのかもしんないですよね。それが前以上の形になって確実に訪れるタイミングが近づいてますよ。
——そこで今回『さんピンCAMP20』の開催となるわけですが、そもそも企画自体は2年越しで、RYUZOさんは当初から関わったんですよね?
RYUZO avexが『さんピン』の20周年やるやらへんってなってて、それやったら元々やった人に話通さなあかんやろっていうので石田(ECD)さんとかその頃カッティングエッジ立ち上げはった人とかに会いに行って、どう思いますか?って言ったら、仕切ってくれんのやったらやってほしい、その代わり、新しい今の奴らでやってほしいってなって。だから実行委員会を立ち上げて、そん中に俺もいるっていう。まあそこからはほとんどなんもしてないんすけど、しゃべらなあかんところにはしゃべりに行ったり。
普通に「出てえ」って言っても出れねえから。(D.O)
——チケットは一日でソールドアウトになったとのことで、イベントへの期待も大きいですが。
RYUZO 他にもここに出てほしい人がいっぱいいるんすけど、スケジュールの都合で出れへん人もいるし、断られたりもした中でこれがベスト(のラインナップ)。
D.O 普通に「出てえ」って言っても出れねえから。この最高峰のラインナップには意味があるし、出るにふさわしい奴のみここに並べてもらってると思う。これもまた、RYUZO君のヒストリーとムーヴが全部詰まってると思うっす。音楽はもちろんなんすけど、スタイルと経験値、スキルもろもろ全部含めて伝授してもらってまた回していって、その時代に合った形でメイクするのはすごいヒップホップとして理に適ってるなと思いますね。
全国の前線のプレイヤーを集めた最高のヒップホップ・パーティ(D.O)
——引き継ぐものは引き継ぎながら、今の形でイベントとして提示するということですか。
D.O しがらみじゃないけど、そういう関係がものすごくあるわけですよね。全国の前線のプレイヤーを集めた最高のヒップホップ・パーティなんですけど、イカレた人達の思いをまた呪いのように受け継ぐと(笑)。
RYUZO そうじゃないゲームをやってる人もいるけど、俺らはそっちのゲームをやってますってことじゃない? 俺らは完全にあの人達にかけられた呪いを背負ったゲームやねん(笑)。DARTH(REIDER)見てくださいよ。あいつ東大行ってたんですよ。呪いの極地。
D.O 僕がKAMINARIの先輩達と仕事さしてもらうようになった時に既にDARTHはKAMINARIの周りでいろいろ仕事してたし、俺も20代はすべて完全に捧げてますからね。
RYUZO D.Oは全力で捧げてたもんな。それが’98、9年ぐらいからだから……。
D.O 軽く懲役15年みたいな(笑)。
RYUZO それ級の(笑)。引っ越しから何から何まで全部やってくれる後輩出現(笑)。
D.O RINOの全てを請け負うっていう(笑)。
ここまで来たらもうこのゲームやれるとこまでやり続けるしかない。(RYUZO)
——今回の『さんピンCAMP20』への思いも当然強くなりますよね。
RYUZO そんな簡単にはできないですよ。やっぱやり続けてる奴しかできない。マジ受け継いで行ってるから。昨日もしゃべったんすけど、30越えてヒップホップやって、ここまで残ってる奴はホンマ、みんな仲間で、みんな闘ってきたでしょみたいなのはある。無茶苦茶言いよんなこいつらっていうのを何回も乗り越えて、この立ち位置まで来て、育ってきてますからね後輩も。で、またうまいこと後輩同士がツルんで曲やったりしだすとか無限ループ入ってるんすよね。イズムはやっぱ継承されていくっていうか。
D.O 西日本一帯の今のプレイヤーなんて、ほぼRYUZO君経由でこのイズムをゲットしてて、シーンの最前線で立ち回ってる奴らはホントに全員つながっちゃってんですよね。
RYUZO そこもホント枝分かれなんですよ。さんピンにいた人らに衝撃受けた枝分かれからいろんなことが出てきて訳わからんことなり始めてるんすよね。
D.O 日本中の各土地に猛者がいて、それがアジアにも世界にもあるわけで、チェケラッチョの時代からは大きく変わって、ヒップホップ全てを責任ある形で受け継いだなと思いますね。
RYUZO やめるにやめられないし、ここまで来たらもうこのゲームやれるとこまでやり続けるしかない。また誰かがやりよるでしょ。そういうボスになっていくんですよ、BAD HOPとかの世代が。
爪痕を残して、また語られるようになればラッパー冥利に尽きる。(RYUZO)
——20周年となった今回の開催も、言ったらその精神の再確認というか。
D.O RYUZO君はがっつりと仕掛ける側の立ち位置ならではの視点があるだろうすけど、僕は混ぜてもらう立ち位置で話させてもらうと、前の『さんピンCAMP』を知らずに今回初めて観て、これが『さんピンCAMP』だと思うであろうお客さんで溢れるわけですよね。なんで、昔の伝説はもちろんなんですけど、これが伝説になるわけで、今のシーンの奴らにとって。これが日本の最高峰のヒップホップだよっていうのをもっかい僕らが受け継いでメイクさせていただくってことで、マジなやつですよと。
RYUZO D.Oも失敗してるし、俺らも何回も失敗してるし、その失敗を繰り返さないようにこうやらなあかん、このタイミングでこうしなあかん、っていうのが繋がっていってシーンがもっと大きくなっていけばそれがヒップホップやし、そん時に俺らも名前忘れてもらへんような爪痕を残して、あん時の『さんピンCAMP』があったからこうやったなって言われるようになっていければラッパー冥利に尽きるじゃないですか。
D.O 現にフロントラインにラインナップしてもらえるような立ち位置につかせてもらってることが、恥ずかしくないようにちゃんと引き継がせてもらってますっていう証明になってると思いたいですよね。一緒にセッションしたり曲出したりすることからイベント、ライヴまでビジネスとして全部を継承させてもらってるし、誰に対しても恥ずかしくない筋の通ったヒップホップの流れをちゃんと僕らが作ってきて、その道を歩いてきて、その上でデカいムーヴで証明さしてもらってるわけで、さんピンあって僕らがあるのは間違いないすけど、僕らがあってこのシーンがある、僕らがヒップホップだって言っていいと思う。
革命起きますよいよいよ。(D.O)
——イベント当日にはAbemaTVで生放送も予定されてますが、そちらで観るファンにも一言もらえますか?
RYUZO チケットが速攻売り切れてしまったので、もっと多くの人に観てもらえるほうがいいと思って。フリースタイルもやばいけどショーケースもやばいんだぞ、ヒップホップっていうところを観てもらえれば。AbemaTVも、この映像のクオリティでスマホで観れるって ヤバくない?
D.O 絶対に超面白いと思います。フリースタイルの今の流れも風営法どうのこうのもそうだし、もちろんANARCHYのドラマの流れとかもすげえぜついし、若い人達の新しいムーヴメントもそうだし、すごいから今ヒップホップって。それを観て確かめて欲しい。革命起きますよいよいよ。