組織的な重大犯罪を計画・準備した段階で処罰の対象とする「テロ等準備罪」。30日、その法案に対する政府の方針が大きく変わった。これまで対象となる犯罪の数を減らすことに消極的だった外務省が考えを一転させ、国会では民進党が金田勝年法相に現行法では対応できないケースを具体的に説明するよう迫る場面もあった。

 テロ等準備罪の処罰の対象は、重大犯罪について具体的・現実的な計画を立て、実行の準備行為を行っている「組織的犯罪集団」だ。また、4年以上の懲役・禁固刑が定められている犯罪を対象にしており、600を超える犯罪が対象になると指摘されてきた。対象となる犯罪を減らすことについて、岸田外務大臣は30日の答弁で「一般の方々が処罰の対象にならないことを明確化するべき」「新たな考え方に基づいてこの条約の担保法として必要最低限どこまで求められるのか検討する」と説明した。

 法案の意義について安倍総理は、このままでは国連が採択した「国際組織犯罪防止条約」に加盟できず、東京オリンピックの開催にも影響があるとし、「不足の事態に備えるため、法案の成立は不可欠」と訴えてきた。

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 しかし、なぜ政府は方針を転換し、減らす意向を示したのか。自民党の平沢勝栄・衆議院議員は「国際条約の中では4年以上(の懲役・禁固の刑)とされていたため、600以上となっていたが、一般人も対象になるなど誤解が生まれたため、答弁が修正された。今までの説明が荒すぎた、反省しなければならない」と話す。

 その上で、諸外国ではテロという合理的な疑いがある場合は令状なしに捜索・差し押さえ・身柄の拘束ができ、「他国では、日本では考えられないような権限が当局に与えられている。日本では、そういったことは絶対にできないが、外国と協調して犯罪を防ぐ、最大限のことをやろうということ」と、法案の必要性を説いた。

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 一方、日弁連共謀罪法案対策本部の海渡雄一弁護士は「法律を作らなくても(国際組織犯罪防止条約には)批准できると考えている」と指摘する。海渡弁護士は「日本はすでに国連のテロ対策の条約を批准しており、爆弾についてもハイジャックについても、すべて共謀罪もしくは予備罪がある。新たに作る必要はない」「テロ団体が行いそうな犯罪の中で予備段階が取り締まれないものがあるのか、議論するべき」と主張する。

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 また、小泉政権時代から3度にわたり国会に提出され、廃案となった「共謀罪」がベースとなっていることから、かつての「治安維持法」を彷彿とさせるという専門家の声もある。立正大学名誉教授の金子勝氏は「実はテロは"隠れ蓑"であって、労働組合を含む団体と政党を捕まえられるという狙いがある。特定秘密保護法を作り、刑事訴訟法を改定して、盗聴をいっぱいできるようにする。そして団体を取り締まるテロ等準備罪を作る。戦前のように、権力が目を付ければ個人でも団体でもみんな処罰することができる」と、かつての治安維持法を引き合いに、懸念を示している。

 海渡雄一弁護士も、「治安維持法を作った1925年の国会で、政府は"共産主義者だけに適用する"といったが、実際は関係のない団体やジャーナリストにまで及んだ。歴史を知る我々は、乱用の恐れがないように法律を整備する必要がある」し、議論を慎重に進める必要があるとの認識を示した。

 テロ等準備罪がかつての悪法と同じ轍を踏む危険はないのか。平沢議員は「防犯カメラが普及したら、プライバシーが侵害される、悪用される、役に立たない、と批判されたが、今や普及し設置を求める声が多い。日本は治安が良いと言われているが、いつ崩れるか分からない。国際化が進む中、日本での犯罪を防ぐためにもテロ等準備罪は必要だ」と訴えた。(AbemaTV/AbemaNewsより)

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