4月の大統領選に向け選挙キャンペーンが本格化するフランス。「極右の女王」とも言われ、世界中から注目を集めている候補者が、右翼政党『国民戦線』のマリーヌ・ルペン党首(48)だ。
『国民戦線』の創始者で初代党首のジャンマリー・ルペン氏を父にもち、弁護士から政治家に転身、2011年には党首に就任した人物だ。
ルペン氏はSNSでも精力的な情報発信を行っており、Twitterのフォロワーは127万人以上にのぼる。Tweetの内容は「集会で会いましょう」「国を愛する全ての人は我々に加わって下さい」といったもののほか、「フランス人が決断を下せず自由ではないのはEUのせいだ」「EUと対決できるのは私だけだ」と、欧州連合(EU)からの離脱も訴えるものもある。
また、移民についても投稿。「フランスは年間30万人の移民を受け入れることはできない。ここには600万人の失業者がいるのだ」「移民吸い上げ機を廃止して不法移民を送還する」。
現在、EUは加盟国に対し、移民・難民の受け入れを要請しているが、それにより一部の都市では失業者が増加し治安も悪化しているのだ。ルペン氏も移民・難民がフランス国内に混乱をもたらしていると考え、EUを離脱し、彼らを追放することで国内の安定を図る狙いがある。また、昨年11月には「私の愛国心はフランス国民を第一に考えることであり、他の国民ではない」と投稿するなど、フランス国内優先政策を主張し続けている。
このように、ルペン氏の主張はトランプ米大統領と酷似しているとも言われ、比較されることも多い。トランプ氏が大統領選に勝利した際には祝福メッセージを贈るなど、トランプ氏に対して好意的だ。
■“打倒ルペン“を目指す候補者は
そんな「極右の女王」にフランス国民の支持が集まりつつある中で、“打倒ルペン“を目指すのは最大野党・共和党のフランソワ・フィヨン氏(62)と、前経済大臣のエマニュエル・マクロン氏(39)だ。
フィヨン氏は首相を務めた経歴も持ち、昨年の予備選ではおよそ70%の得票率を集め圧勝した人物だ。ルペン氏をけん制していたフィヨン氏だが、大統領選に向け本格始動した今年1月下旬、不祥事が浮上した。勤務実態のない家族に対し公金から1億円以上も支払うという不正給与疑惑が発覚したのだ。
これに対しルペン氏は「フィヨン氏は不祥事の前から非常にもろかった。なぜなら彼の政策は乱暴だったから」「この不祥事は信用問題だ」と批判。フィヨン氏は「皆様の前で妻を愛していると言いたい。そして私たちをこのような状況に追い込んだ者を絶対に許さない」とコメントしたものの、劣勢に立たされることとなった。
一方、マクロン氏はEUの結束強化を呼びかけ、ルペン氏とは相反する主張を展開。「マリーヌ・ルペンが決選投票の場に立つことは避けられないことではない」とし、決選投票前にルペン氏を敗北させることも可能だと訴えている。これについてルペン氏は「独立していない。彼の背後には巨大な金融勢力とグローバル主義者がいる」とマクロン氏を批判している。
紛争や内戦で移民・難民が多く先進国に押し寄せる中、多くの先進国でトランプ大統領やルペン氏のような自国第一主義が叫ばれるようになってきている。
ジャーナリストの堀潤氏は「格差の広がりは、世界中の先進国の課題。一部の人に富が集中する経済の仕組みが出来上がっている。次の再分配の仕組みを考えないと不満は募る一方だと思う」と指摘する。またシリアやISの問題を挙げ「先進国が搾取しすぎた。産業革命を起こして以来、いろんなところから富を吸い寄せてきた。そろそろその富を分かち合おうという雰囲気が先進国の中でも盛り上がってきているのではないか」と話した。
大統領選の決選投票に関する投票予想では、マクロン氏が65%、ルペン氏は35%、とマクロン氏が濃厚という予想だ。果たして、“極右の女王“ルペン氏がフランス大統領に当選することはあるのか。フランス大統領選の行方から目が離せない。(AbemaTV/AbemaPrimeより)