2016年の格闘技界におけるMVPは誰か。おそらく世界中ほとんどのファン、関係者がコナー・マクレガーと答えるのではないか。それくらい、マクレガーの活躍ぶりは素晴らしいものだった。
1988年、アイルランドはダブリン生まれ。2013年にUFC参戦を果たすと、強烈な打撃を武器に勝ち上がっていく。負傷により長期欠場を余儀なくされた時期もあったが、2015年にはフェザー級の暫定王座を獲得。相手はレスリングの強さで知られるチャド・メンデスだったが、寝技での苦戦をものともせずにKOしてしまった。
さらにこの年、王座統一戦では正王者のジョゼ・アルドをもKO。無敵を誇っていたアルドを倒しただけでもインパクト充分なのに、試合時間はなんと13秒。UFCのタイトルマッチで最も短いタイムだったという。
そして2016年、マクレガーはさらなる激動のファイター生活を送ることになる。世界中のファンは、ますます彼から目が離せなくなった。
まずは3月、2階級制覇をかけライト級タイトルに挑戦予定だったものの、王者が欠場。急きょネイト・ディアスとウェルター級で対戦することに。マクレガーはフェザー級(65.8kg)のチャンピオンで、ウェルター級は77.1kgだからかなりの違いだ。
この試合、序盤は打撃で優位だったマクレガーだが、逆転の一本負け。屈辱を味わったが、再戦では壮絶な激闘を制してみせた。選手としての評価も、人気も、そしてファイトマネーも上がる一方。1試合300万ドル(プラス各種ボーナス)を稼ぐようになった、つまりUFC史上最高のスターとなったマクレガーは、11月12日のニューヨーク大会にも主役として登場した。
会場のマディソン・スクエア・ガーデンはボクシングのビッグマッチが行なわれてきた場所としても有名。またニューヨーク自体、あらゆるスポーツ、エンターテインメントの中心地と言える。UFCにとっても、ニューヨーク進出は悲願だったと言えるだろう。
そんな重要な大会で、マクレガーはエディ・アルバレスのライト級王座に挑戦。圧巻のKOで2階級制覇を達成した。段階を踏んでの2冠ではなく、フェザー級との同時獲得だから快挙中の快挙だ。
最大の武器は、長いリーチから繰り出すパンチ。しかもただ振り回すだけでなくカウンターの感覚も抜群だ。そしてファイターとしてだけでなく、エンターテイナーとしての能力も高い。試合が決まれば対戦相手と凄まじい舌戦を展開。発言が物議を醸すことは、いまや普通の光景になった。
またボクシングライセンスも所持しており、MMA(総合格闘技)だけでなくボクシングの試合をするという話もある。相手はなんと、5階級制覇のフロイド・メイウェザー。すでに引退しているメイウェザーだが、マクレガーと闘う場合のファイトマネーにも言及している。そんな中、アジアの英雄マニー・パッキャオが「ボクシングルールなら闘ってもいい」と発言。話題はさらに盛り上がることに。
メイウェザーやパッキャオすら巻き込んで巨大化する“マクレガー現象”。次に誰と闘うのか。何を話し、どんな行動をするのか。すべてがニュースになるのである。