2017年1月4日の新日本プロレス「戦国炎舞 -KIZNA- Presents WRESTLE KINGDOM 11 in 東京ドーム」で、タイガーマスクWのデビュー2戦目となる対タイガーザダーク戦が決定した。
今回の新しい「タイガーマスク」。デビュー戦となった10月両国国技館の「第0試合」は、客が3分の1程埋まらない、見方によれば盛り上がりのやや欠ける船出となった。時代の影響か「謎のマスクマン」というミステリアス性を売りにしたプロモーションは陰を薄め余興的に受け取ったファンも多いかもしれないし、初代タイガーマスクがデビューした35年前とは時代が違う。ネット上では体の特徴やそのファイトスタイルから、ファンの間でも正体に目星はついていると思うが、ここでの「正体暴き」は野暮というものだろう。
元々「タイガーマスク」は、プロレスとアニメのコラボレーションで成立したタイアップ・レスラーだ。「企画もの」といってしまうと軽薄なイメージもあるが、新日本プロレスのリングでは、まったく違う意味を持っている。それは初代タイガーマスクが、1981年の春に放送されたアニメ、タイガーマスク二世を遥かに超える国民的ヒーローとなり、1989年のアニメ「獣神ライガー」から出てきた、獣神サンダー・ライガーが、その後「ジュニアの象徴」と言われレジェンドとして今なお活躍していることからも明白だ。
加えてタイガーマスクは日本プロレス界の遺産(レガシー)といえるブランドだ。
初代タイガーマスク、佐山聡、様々なリング界の大人の事情をへて全日本プロレスのリングで生まれた2代目、三沢光晴。3代目の金本浩二、そして現行の4代目まで、タイガーを受け継ぐレスラーは抜群のフィジカルからの空中殺法や、技を継承しつつ「タイガーマスク像」を守り続けて来た。プロレス界に置いて、タイガーマスクという名にはそれほど重みがあるわけだ。
「タイガーマスクW」も例にもれず新日本とテレビ朝日のアニメーションのタイアップという形で誕生したレスラーだ。もっか拡大路線をめざす新日が、新たなキッズ層、もしくはかつてのタイガーマスク世代へのプロレス回帰を促すためのツールという意味合いも当然あるが、10月の両国大会でのレッドデスマスク戦、「第0試合」という表現どおりエキシビション的な意味合いが強かったが、「タイガーマスク」というブランドへのオマージュ的仕掛けが満載だった。
まず歪ともいえるマスクのフォルム。アニメを忠実に再現し鼻が飛び出し見るからに通気性の悪そうなマスクはどうみても激しいプロレスの試合には不釣り合いだ。
しかし、これは初代タイガーマスクが日本デビュー2戦目以降に使用した通称「縫いぐるみ」の現代版ともいえるもので、当時の加工技術で再現できなかったマスクが35年後に理想的な形なった一種ロマンのようなものを感じさせてくれた。
試合序盤の攻防でも、フライングクロスチョップ、ミサイルキック、カンガルーキック、ローリング・ソバット、ムーンサルトドロップ、高角度から美しいブリッジを描くジャーマンと、初代タイガーマスクを再現したような技を次々と繰り出し、三沢光晴のタイガー・ドライバーをフィニッシュ・ムーブに選んだ当たりも、ファンには感涙ものだろう。
ある意味徹底的な様式美を再現した試合の中で「タイガーマスクW」を主張したシーンも幾つかあった、場外へのラ・ケブラーダ、そして「何かみたことがあるな」と思わず実況が言ってしまう見覚えのある打撃攻撃、観客もまだ埋まっていない会場で行われたデビューマッチには、様々なメッセージが込められていた。
1月4日の東京ドームで、タイガーマスクWは、アニメに登場するタイガーザダークと対戦する。前回同様エキシビション的な要素になるのか?もしくは、「二頭目の虎」タイガーザダークのデビュー戦の意味合いが強いのかもしれない。色々なエンタメ要素が期待されるが、それ以上に興味があるのはタイガーマスクの系譜に新たに加えられたレスラーたちが、今後どのような形でに新日本プロレスのマットに関わっていくかにある。
これまでの歴史を考えると、アニメ放送期間中のスピンオフ企画のような扱いで終わるとは到底思えないが、今後の動向に注目したいところだ。