17歳のラッパー・Lick-Gが1stミニアルバム『Trainspotting』を完成させた。クオリティには徹底的にこだわりつつも、あくまで自分の好きなことだけを詰め込んだという本作。USヒップホップでトレンドになっているフロウ(ラップの歌い方)が早くも取り入れられている。日本語では乗りづらいと言われているビートに対してLick-Gが出した回答とは? 「高校生RAP選手権」から頭角を現した新世代のラッパーに、アルバムの話を訊いた。 

『歌詞ありきの音楽は絶対につまらない』

Lick-Gインタビュー「日本人はヒップホップがボーダレスだと気づいてない」(前編)

ーー「Trainspotting」というアルバムタイトルはどういう意味なんですか? 

Lick-G:「道を外れてしまった」みたいな意味ですね。あと自分はイギリス人とのハーフなので、ルーツをタイトルに盛り込みたかった。映画「トレインスポッティング」とのダブルミーニングですね。ネットで検索したんですけど、海外のラッパーも「Trainspotting」というタイトルのアルバムは作ってなかったんで、これに決めました。

ーーバイリンガルなんですか? 

Lick-G:母がイギリス人で、父は日本人なんです。だから英語は昔から身近にありました。日常的に英語を使っているわけではなくて、日本語の会話の中でたまに英語が混じってくるような感じかな。英語は話せるし、理解もできますよ。でも自分からバイリンガルとは言いたくないんですよ。変な色眼鏡で見られたくないから。 

ーーいま17歳ということは高校在学中? 

Lick-G:そうです。 

ーー学校生活に馴染みずらいそうですが。

Lick-G:そうですね。ハーフということもあるのかもしれないけど、学校生活では自分が異質であると感じさせられることは多かったです。例えば、小学生の時に合唱大会があったんですけど、僕は音符とかが全然覚えられなくて、みんなのペースについていけなかったんですよ。そしたら、僕を合唱大会に出演させるか否かが、学級会の議題になっちゃって。担任の先生と僕以外のクラス全員が、僕の出演について議論してるっていう(笑)。 

ーーでも今は普通にライブしてますよね。 

Lick-G:うん、ちゃんと歌詞も覚えて(笑)。全国のクラブでライブしてるんで、今となっては全然関係ないって感じですよ。 

ーーラップを始めて学生生活は変わりましたか? 

Lick-G:「かっこいいじゃん」とか寄ってくる人は多かったです。でも僕は思ってることを口にしちゃうからすぐヘイトの対象にされちゃって、意味不明な陰口言われたりしました。このアルバムにはそういう自分のストラグルが込められています。 

ーー今回のアルバムでは17歳とは思えない大人びたメッセージもさることながら、Lick-Gさんのラップスキルに圧倒されました。 

Lick-G:それを感じてもらえたのは嬉しいですね。僕はスキルがメッセージと同じくらい重要だと思っています。ヒップホップでは歌ってる人の背景やストーリーがやたらと重視されるけど、僕はそれをスキルに昇華して表現しないと音楽とは言えないと考えていて。「I’m Already Dead」の「韻を踏むことで言いてえことを言う」ってラインはまさにそういう意味です。アルバムでは学校とかで疎外された時の悔しさを歌っているけど、プロフィールにだけ共感して応援されるのは絶対に嫌だ。 

ーー「Do Your Things」の「論よりスキル」ってパンチラインもそういうこと? 

Lick-G:そうですね。日本人はアメリカのヒップホップを聴きますよね。でもほとんどの人は英語の歌詞なんて理解してない。じゃあなんで聴いてるのかと言えば、それは純粋に音楽としてかっこいいからだと思うんです。僕には、言葉がわからない人にでもヤバいと思えるスキルやフロウを使わないとダメ、という前提があるんですよ。歌詞ありきの音楽は絶対につまらない。僕だってパンチラインに反応するけど、それは結局はフロウのかっこよさが前提になってる。 

『ストレートにやりつつも遊びを込めることはできる』

Lick-Gインタビュー「日本人はヒップホップがボーダレスだと気づいてない」(前編)

ーーじゃあ、今回の「Trainspotting」は練りに練って制作されたんですか? 

Lick-G:いや、いろいろ言ってるけど僕は結構フィーリングで動くタイプなんです(笑)。音楽の基礎知識がないから、BPMとか拍子とかそういうことも全然知らない。三連譜って言葉も最近ようやく覚えたくらい。僕は自分が気持ちいいと思うラップをやってるだけです。 

ーートラックはどうやって選んだんですか? 

Lick-G:普通にトラックメイカーの家に行って、ストックから選ばせてもらいました。でも実は最初からこういうアルバムを作るつもりはなかったんですよ。KEN THE 390さんからアルバムを作ろうと声をかけてもらった時は、売れるんだったらポップな作品でもいいと思ってた。「自分はたくさんフロウを持ってるから好きに調理してください」みたいな。でもそういうトラックだと歌詞が全然出てこない。それで自分がやりたいことをやろうと決めて、トラップのトラックメイカーとコンタクトしたんです。 

ーーリリックの内容はどうやって決めたんですか? 

Lick-G:本当にフィーリングですね。トラックを聴いて大体この曲はこんな感じ、みたいな。「Mellow Akira」なんかもすぐにテーマが出てきたし。 

ーーちなみに「Mellow Akira」ってどういう意味ですか? 

Lick-G:えっ、わかりませんか? フック(サビ)で「お前じゃ絶対できないんだ」ってもろに歌ってるじゃないですか! よく歌詞カード見てください(笑)。「Mellow Akira Mellow Akira」って繰り返してますよね? そこに意味があるんですよ。 

ーー……? 

Lick-G:「メロウアキラ メロウアキラ」。つまり「アキラ メロウ」。「アキラメロウ」「諦めろ」って意味なんですよ(笑)。 

ーー「Mellow Akira」って言葉のインパクトが強すぎて、全然わかりませんでした(笑)。 

Lick-G:まだまだですね(笑)。でも実はそれを狙ってたんですよ。「Mellow Akira」って人の名前みたいな変な感じがするでしょ? 

ーーこういう言葉遊びは楽しいですね。最近の日本語ラップではあまりないから、今すごく新鮮な気持ちです。 

Lick-G:僕自身が今日本語ラップにハマってるわけじゃないから、偉そうなことは一概に言えないけど「ストレートやるほうがカッコイイ」みたいな風潮はあると思う。でもストレートにやりつつもダブルミーニングを込めることはできる。「アキラ メロウ」なんて超ストレートでしょ(笑)。 

(後編に続く)

Lick-Gインタビュー「日本人はヒップホップがボーダレスだと気づいてない」(前編)

TRACK LIST : 

1. I’m Already Dead 

2 . Trainspotting 

3. Hollyview 

4. Choose Life (Interlude) 

5. Mellow Akira 

6. Oasobi 

7. Do Your Things 

8. This Is Ma Way 

9. Positive State of Mind 

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