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 古くからの習慣・制度・考え方などを尊重し、急激な改革には反対する立場のことを指す「保守」。かつての革新・保守という対立もなくなった今、「保守」自体が多様化し、意見の違いも目立つようになった。直近のトピックをテーマに、3人の保守論客が討論、排外主義や好戦的といった「右翼」「保守」のステレオタイプとは異なる冷静な姿が浮き彫りになった。

■保守とは「生き方の問題」

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 伝統や文化について、どの時代をベースに置くのか、という問いに対し、文筆家の古谷経衡氏は「僕が括弧つきで「保守」と呼んでいる人たちの中には、戦時中の皇国史観を基準にしている。しかし、そもそも保守とは、反理性主義というか、フランス革命の後、なんでも改革していくやり方に対して距離を置いて、ちょっと待ってよ、そこまで急激に変えるのはやめない?経験や歴史に基づいてやらない?というものだった。だから、アメリカが好きか嫌いかというような問題は本来関係がない。生き方の問題」と話す。

 「一水会」元最高顧問の鈴木邦男氏は、「お歯黒が日本の文化かと言えば、それは終わったものですよ。ちょんまげや切腹が主流だった時代もあるが、復活させようとは思わない」と指摘。「ある特定の時代が良い、ということは言えない思う」とした。

 また、評論家の竹田恒泰氏は「伝統とはどんどん変わっていくもの。天皇陛下の「お田植え」だって何百年も前からやっているように思えるが、2000年前からの"五穀豊穣を祈る"という中で昭和天皇が始められたもの。伝統は新しく創造される、非常にクリエイティブなもの」とした。

■「親米」?「反米」?「安倍政権のやりかたの方が大人ではないか」

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 トランプ新政権が誕生し、各国がアメリカとの距離を置きつつある中、保守営でもさらに日米の友好関係を深化させるべきという意見と、距離を置きつつ、日本の独自の国家体制を構築・維持すべきだとする意見がぶつかっている。

 古谷氏は、日米関係について「大きく分けて、親米保守と反米保守があり、親米保守が主流」だと話し、「かつての敵国であるアメリカと日米同盟を結び、従属的になっている。日米首脳会談は情けない。トランプ氏は日本に対して無知で厳しいことを言っていた。いわゆる保守と呼ばれる人たち、トランプ氏が勝った途端に"本当は良い人だから"と言い出した。これを奴隷根性と言わずして、何というのか。今こそ"あなたの言っていることは間違っている"と言った方がいい」と主張。

 鈴木氏は「親米保守の中にも、基地問題も含めアメリカとの関係を見直すべきだという人たちもいる」とし、「あの戦争は正義の戦争だった。ルーズベルトに陥れられたのだ、東京裁判史観を覆せという人もいるが、それならアメリカともう一回戦争をしなくちゃいけない。今の安倍政権のやりかたの方が大人ではないか」とした。

 竹田氏は「日本は汚い方法で戦争に引きずり込まれたという側面もあるが、開戦を避けるタイミングはいくつもあったのに、それを流してしまった。昭和天皇だけはちゃんと物事を見ていらしたが軍人や政治家に世界の情勢を観る力が欠落していた。反省しないといけない」とした。

 一方、「日本はアジア諸国に対し、アメリカの原爆投下同様、加害の責任があると思う」という古谷氏に対し、竹田氏が「欧米が各国にやった植民地支配と、当時の日本とでは背景も質も違う。日本に植民地支配という考え方は無かった」と猛批判。鈴木氏が「日本はきちんと反省して、その上で西洋を撃つ、ということしかないのではないか」と割って入る場面も見られた。

■「沖縄に対して、皆が"やましさ"を持っているか」

 そんな日米関係を議論する上で避けられないのが、米軍基地問題をめぐる問題だ。

 鈴木氏は「沖縄に対して、皆が"やましさ"を持っているかどうか。それがないんじゃないか。いろんな問題を沖縄だけに押し付けているのではないかと思っている。沖縄の基地は全て無くして、そして防衛は自衛隊がやるべき」と主張した。

 古谷氏も鈴木氏の意見に賛同、「本土の人間は、本土決戦があるから時間稼ぎをするからと沖縄の人たちに言ったのに、そうではなかった。これは戦後に生きる我々の原罪だ。しかも1972年まで日本から切り離して、復帰した後に残ったのは米軍支配と米兵の犯罪じゃないですか。これを恥だと考えるのが保守だ」と訴えた。

 一方、竹田氏は米軍基地をすべて撤退させれば防衛費が3~4倍になることに触れ「いつまでもアメリカにおんぶに抱っこでいいとは思っていない、できれば自主防衛の方がいいが、むこう5~10年での自主防衛は現実的ではない。米軍がいつでも介入する可能性があるという状況が中国にとっても北朝鮮にとっても大きな脅威になる。今は現状維持するべきではないか」とした。これを受け鈴木氏も「私は反米保守ですけど、何も今すぐにアメリカを敵に回す必要はない」と述べた。

■"条文には書けない"天皇陛下の退位問題

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 天皇陛下の生前退位問題をめぐっても、保守同士での激しい論争が繰り広げられている。現在、政府は特例法によって、一代限りで天皇陛下の退位を認める方向で調整しているが、野党の多くは皇室典範の改正を主張。

 昨年、NHKによる第一報が出た直後から一貫して"一代限りの特別措置"を訴え続けている竹田氏は「陛下のお言葉が素晴らしいから感動した、というのと、陛下がおっしゃったのだから正しい、というは違う。天皇陛下といえども間違われることはある。感動しても、その上で考えて、忌憚なく慎重に議論して判断すべき」とし、「そもそも生前退位は、今まで130年間に議論され続け、やっぱりやめようと却下され続けた重たい問題。基本的にはナシだと思う」との見解を示した。

 古谷氏は「伝統は変わっていくものとおっしゃったのに、この130年の議論だけを重視するのか。それも変わるのではないか」と竹田氏に反論。「政府の方針は仕方ないとも思うが、基本的には皇室典範の改正まで踏み込み、女系天皇・女性天皇も認めるべきではないか。周りの人々が忖度して、天皇陛下の"あるべき姿"に持っていこうとするのは違うと思う」とした。

 鈴木氏も「周りの人たちが押し付けるのは不愉快。天皇陛下のお気持ちを一番にすべきで、そのためには皇室典範そのものも必要ないだろう。天皇陛下がこうしたいとおっしゃるなら、そのようにしたらいいじゃないか。政治的発言も力もないんだから、いらっしゃるだけでありがたいということで、あとは自由にしていただいていい」。さらに「戦時中も、昭和天皇のご意思、ご意見が当たっていた事の方が多かった。今上天皇の、憲法を誰よりも真面目に守ろうとする姿勢に国民がそれで選択しているわけだから」とした。

 しかし竹田氏は「両氏の意見はずれている」と反論。憲法4条で「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」と定められているとして「もし天皇のご意志を譲位の条件とすれば、譲位の決定を天皇自ら下すことになり、憲法違反になる」と指摘。「もしご意思を条件としたら、天皇自らが決定する事になる。かといって、ご意思を確認しないと強制になるから、そういうわけにもいかない。聞くわけにもいかないし聞かないわけにもいかない。条文には書けないもの」と、憲法上の難しさも指摘した。

■憲法改正はすべきなのか?

 では、現行憲法は改正すべきなのだろうか。

 「すべきだと思うが、難しいんであれば現状のままでもいい」(古谷氏)、「今のままで良いと思う。学生運動やっていたときは変えるべきだと思っていたが、今は改正しようとする人たちの意見が非常に危ない。若者たちがだらしないから徴兵制だとか、核を持てだとか、全て憲法に頼り、憲法さえ変えれば全部良くなると思っていて危険」(鈴木氏)という意見に、竹田氏が「逆もそうで、革新派は憲法を守れば日本は安全だと言ってきた。お互い極端になってきた」と危機感を示すと、鈴木氏も「きちんとした、冷静な議論ができない」と同意した。(AbemaTV/AbemaPrimeより)

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