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 1997年度の過去最高益を頂点に、長年業績不振が続いたソニー。2011年度には4567億円という過去最大の赤字を計上し、文字通り“どん底”からのスタートとなった平井一夫社長は、就任した2012年度から「ソニー改革」を掲げてきた。2015年度、エレクトロニクス事業が5期ぶりに黒字化。それ以降、メディアでは「ソニー復活」の文字が踊る。

 そんな中、3月10日から19日まで米国・テキサス州オースティンで開催されるクリエイティブの祭典「SXSW2017(サウス・バイ・サウスウエスト)」に、ソニーは大々的に出展する。過去、社内のプロジェクト単位で(小さく)出展してきたが、今回は各部署のアイディアを集結させ、“ワンソニー”として会期中の12日~14日の3日間に展示を行うという。

 SXSWは、1987年にスタートした音楽、映画、そしてデジタル・インタラクティブなど分野毎に開催される、世界最大級かつ最先端のクリエイティブの祭典。なお、今回ソニーが出展するインタラクティブ部門は、Twitterが2007年にSXSWウェブアワードの大賞受賞で一気にブレイクしたことで、「新しいものを世界に広める力を持ったイベント」として知られるようになった。

 それにしても、なぜソニーはこのタイミングで、しかも社を挙げて参加することにしたのだろうか。同社ブランド戦略部統括部長の森繁樹氏に話を聞いた。

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(ソニーブランド戦略部統括部長の森繁樹氏)

 「SXSWには毎年、『これからの未来、一体どのようなことが起こるのだろう』という探究心のある一般人、企業、投資家、メディア、そして研究開発者がやってきます。そこに出展することで、今ソニー内部で次々と生まれている新規事業開発を実際に見て、体験していただき、多様なチャレンジを感じ取っていただけるのではと考えました。また従来のプロジェクト単位でなく、“ワンソニー”として次の成長のために仕込んでいるたくさんの姿をまとめてお見せすることで、今は分かりにくくなっているソニーのキャラクターをお示しできるだろうと」(ブランド戦略部統括部長・森繁樹氏)

 ソニーが出展を予定しているプロジェクトは、ほとんどのものが研究開発段階ものだ。一般的なショーでは、すでに販路のイメージまで固まった完成品が披露されるものだが、今回展示するプロジェクトの中には、事業化の検討すら行われていないものもある。森氏は「今の時代、イノベーションは中に閉じ込めていては生まれない」とオープンイノベーションの必要性を説く。

◆ソニーが考える感動体験を、より多くの人にシェアしてもらいたい

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(今回、出展する「Xperia Touch」。プロジェクターで映し出したスクリーンに直接触れて操作することで、楽しみながらコミュニケーションをとれる空間を提供)

 そんな同社が今年のSXSWに掲げたテーマは「THE WOW FACTORY」。込められた思いは驚きと感動。古くはトランジスタラジオやウォークマン、そしてプレイステーションやAIBOまで、その発想力と技術力が集結されたプロダクトで世界中を驚かせ、感動させた“工場”を、今再び蘇らせようというのだ。

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(SXSWに掲げたテーマは「THE WOW FACTORY」)

 「エレクトロニクス、ネットワーク、コンテンツと、ソニーにはいろいろな事業がありますが、弊社の強みは、本当にお客さんの近いところに寄り添うことができる点にある。平井はそれを『ラスト・ワン・インチ』という言葉で説明していますが、どれだけテクノロジーが進化しても、最後に我々人間が感動するのは手にとって分かる軽さや質感、間近で見たときに感じるイメージ。

 それはネットワークやクラウドでは得られないものです。ソニーが人の感性に寄り添えるものをつくり続けたいと考える理由も、そこにあります。今回SXSWでは、我々の展示のほとんどが体験できるものとなっているのも、そうした『WOW』という感動をご自身の体で感じてもらいたいからです。研究者たちも、自分たちの技術を駆使してどんな感動が届けられるのか、今から非常に楽しみにしています」(同)

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(新感覚のイヤホン/スピーカー。耳を塞ぐことなく、ハンズフリーで音楽や音声による情報をインタラクティブに楽しめる)

 2012年からの3年間で「痛みを伴う構造改革」を断行し、2015年度からは成長と投資にギアチェンジ、今まさにその成長のスピードを急速に上げているソニー。SXSWへの出展で、社内で萌芽するアイディアをオープンにし、ソニーが考える感動体験をひとりでも多くの来場者にシェアすることで、その勢いに追い風が吹くはずだと森氏は期待を寄せる。

 「設立趣意書に書かれてある『自由闊達にして愉快なる理想工場の建設』の通り、ソニーにはもともと常識にとらわれない新しいアイディアが生まれるDNAが存在します。そして、まさに今、ソニーではそのDNAに火がついて、『もっと面白いものが作れるのではないか』『もっとこんなことに挑戦できるのではないか』という社員も増えてきている。SXSWは、そんな彼らのハングリーなチャレンジ精神に最適なステージになるはずです」(同)

 かつて世界中に「WOW」を与え続けていたソニー。SXSWという世界最大のクリエイティブの“見本市”で、世界中の目利きに驚きを与えることができるのだろうか。

文/AbemaTIMES編集部


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