昨年から、DDTマットで猛威を振るうモノがいる。その名は「こたつ」。暖房器具のこたつである。登場のきっかけは大阪大会。ゲストとして伝説の芸人・越前屋俵太が復帰すると、その小道具として出てきたのがこたつだった。
(睡魔を自在に操り、大家健とトランザム★ヒロシの意識を完全に奪った王者・こたつ)
DDTのタイトルの一つ「アイアンマンヘビーメタル級」は、24時間、いつでもどこでもレフェリーがスリーカウントを数えれば王座が移動するルール。これまでも脚立や額縁などの無機物が選手を下敷きにする形で王者になったことがあり、アイアンマンのベルト自体がチャンピオンだったことすらある。
そんなベルトを、越前屋俵太を抑え込んでこたつが奪取。このことは、DDTに史上屈指の厄介なチャンピオンが生まれたことを意味する。
こたつの特徴の一つは、テーブル部分が人体よりも固いこと。それゆえディフェンス力が並外れている。なおかつ時期は冬。日本で暮らす者なら誰でも経験があることだが、いったんこたつに入ってしまったら、そこから抜け出すのは至難のワザだ。すなわち一級品の関節技にも等しいのである。
そしてこたつに入っているうちに、眠くなってくるのも当然のこと。格闘技の世界では相手を失神させることを「眠らせる」と言ったりするが、こたつと対戦した相手は、文字どおり眠ってしまい、試合続行不可能に陥る。
2月の後楽園ホール大会で石井慧介、アントーニオ本多の挑戦を退けたこたつは、3月20日のさいたまスーパーアリーナ大会にも出場。「祝・DDT旗揚げ20周年記念ドラマティック・ランボー」と題された時間差入場バトルロイヤルに参戦する。
3月11日に行なわれた記者会見では、こたつが意気込みを述べているところにプロレスリングBASARAのトランザム★ヒロシが乱入。アメリカ人を名乗る「BASARA最強外国人」ことヒロシ(本名・福田洋)は「ミスターこたつ。あなたは私が全米をサーキットする中で見たどのレスラーよりも気品と風格がある」と絶賛。歌まで捧げて油断させたところで「しょせんは脳のない無機物よ!」と襲撃。必殺のパーフェクトプレックスを決めるが、スリーカウントは大家健(ガンバレ☆プロレス代表)が阻止する。
大家は、自身が3月18日にインディペンデント・ワールド ジュニアヘビー級タイトルに挑戦することから、「ドラマティック・ランボー」にはこたつ、キング・オブ・ダーク王者の伊橋剛太に続いて「3人のチャンピオンが出場します!こたつ選手、正々堂々やりましょう!」と熱いエール。
さらに大家はこたつを不意打ちしたヒロシに「不意打ちなんて泥棒と一緒だ。お前とは一度じっくり話さなきゃいけないと思ってたんだよ。ここ座れ」と説教モードに入り、2人でこたつへ。話し込むうちに睡魔に襲われた大家とヒロシは熟睡。ときおり「痛風なんです...」(ヒロシ)なとと寝言を言うばかり。
過去の恋愛事情などプライベートな質問には「んなもん答えられるわけないだろうが!」と叫んだ大家だが、その後はまたも熟睡。そのまま会見は終了し、またも「こたつ最強説」が高まる結果となった。
さいたまスーパーアリーナ大会が行なわれる3月20日は、春先とはいえまだまだ冷える時期。こたつの絶対王者としての威厳は、季節が変わるまで揺るぎなさそうだ。
文・橋本宗洋