様々な団体を股にかけて活躍する木高イサミが代表を務めるプロレスリングBASARAは、そのコンセプトが“男子校の運動部”というだけあって自由で、時にバカバカしささえ感じさせる楽しいリングだ。
(3月13日の練馬大会ではBASARA代表の木高イサミとジュニアの大物・田中稔がハイレベルな攻防を展開、イサミがフォール勝ち)
現在、団体の頂点であるユニオンMAX王座を保持しているのはFUMA。ヘヴィメタルを布教するためのユニット『アイアン・プリースト』を率いるこの男(ヘビメタという略し方は許さない)はメロイックサインで相手を攻撃し、対戦相手の坊主頭を見ては「全盛期パンテラのフィル・アンセルモみたいだ!」と叫んで観客を置いてけぼりにする。
いわば万人に分かりやすいことよりも、自分が好きなことを追求するという姿勢だ。チャンピオンがこうなのだから他の選手も推して知るべしで、トップ選手の一人は自分がアメリカ人だと主張し、全身星条旗柄のコスチュームを身にまとうトランザム★ヒロシ。選手たちはまさに“女子が見てないから伸び伸びバカなことやってる男子校生”のようで、そこが逆に女性ファンにもウケているようだ。BASARAでは、ホームリング以上に楽しそうな他団体の選手も少なくない。
(王者・FUMAと個性派にして実力派のトランザム★ヒロシ。練馬大会ではなぜか腕相撲でも張り合った)
その一方で凶器の使用が認められるハードコアマッチや、他団体・フリーの大物ベテラン選手との激闘もあり、幅の広さも魅力となっている。
旗揚げイヤーの昨年は12月に“聖地”後楽園ホールに初進出。今年は4月29日、10月1日と2度の後楽園大会が開催される。
そんなBASARAの新機軸となるのが『酒場プロレス』だ。これは運営母体であるDDTグループ独自の興行形態で、4月からはBASARAの新木場1stリング大会すべてがこの酒場スタイルとなる。
酒場プロレスとは、お酒を飲みながらプロレスを楽しむ大会。もちろん後楽園などでもアルコールの販売は行われているが、酒場プロレスは一律4000円のチケットで飲み放題付き(自由席)なのがポイントだ。4000円はプロレスのチケットとしてもそう高くない部類。飲めば飲むほどプロレスの料金が安くなる、とも言える。
といって試合のレベルも“割安”なのかというとそんなことはなく、(BASARA体制に切り替わる前だが)3月23日の酒場プロレス新木場大会ではBASARAのユニオンMAX王者・FUMAが“アメリカ人軍団”トランザム軍のトランザム★リュウイチ(大日本プロレスの河上隆一に酷似)の挑戦を受けるタイトルマッチが行なわれる。
BASARA新木場大会を酒場プロレス形式にすることについて「飲みながらプロレス見れるなら行ってみようっていうことでも、きっかけになればいい。BASARAの面白さは、とにかく見てもらえれば伝わるはずなので。そのために間口を広くしていけたら」と語ったのは代表のイサミ。
実際、BASARAの自由奔放な雰囲気は肩肘張らず、お酒を飲みながら見るくらいでちょうどいいのかもしれない。試合そのものに酩酊感を覚える可能性もあるため飲みすぎには注意したいところだが、“飲み放題プロレス”は新規ファン開拓にもつながりそうだ。
文・橋本宗洋