「今後とも、誠実な答弁に努め、誠心誠意、職務にあたっていきたいと考えております」。
野党から「どこが誠実だ！」などのヤジが飛ぶなか、稲田防衛大臣が答弁を撤回した。
それまで森友学園との関わりを強く否定、「（籠池氏に）１０年ほど前から私はまったくお会いもしていませんし関係は絶ってるんです。ご夫妻が私に法律相談をしていただいたとか、顧問をやってもらったとか、全くのそれは虚偽であります」と発言していた稲田大臣。ところがその後、裁判の出廷記録の存在が明らかになった。
裁判は、2004年12月に森友学園が起こした民事訴訟。訴状の「原告代理人」には「稲田朋美」の名前があった。稲田大臣は「担当の夫の都合がつかずに、代わりに出廷したことがあるのではないかと、私は今推測はいたしております」「私の記憶に基づいた答弁であって、虚偽の答弁をしたという認識ではありません。」などと釈明したが、歯切れは悪かった。
野党は大臣辞任に値すると強く批判。民進党の升田世喜男議員は衆院本会議で「言うまでもなく、言うまでもなく！国会で虚偽答弁を続けるような人物が閣僚の座に留まっていてはいけない！信無くば立たず。稲田大臣には即刻辞任を求めます！！」と激しく糾弾。稲田大臣は「訂正し、お詫びいたします」と、訂正とお詫びに追われた。
ただ、稲田大臣はこの件で辞任する考えはないと強調、菅官房長官も職務続行について「まったく問題ないと思っています」と擁護したが、民進党などは「PKOなど、今までの答弁の信ぴょう性も問われる」として辞任要求も含め、徹底追及していく方針だ。
今回の問題について評論家の竹田恒泰氏は「誤認と虚偽は別」と指摘。「国有地売却の８億円値引きといった不当なものに関わっていたとしたら大問題だが、12年前に何らかの事件で受任していたことは、だからなんだという話で、野党の揚げ足取りにしか見えない。政治の中身をちゃんと指摘してほしい。国政から外れたしょうもない話をうだうだとやらないでほしい」とコメント。
一方、コラムニスト河崎環氏は「誤認だったとしても、それを平気で垂れ流してしまう。日本の"ポスト・トゥルース"の代表格だ」と厳しく批判する。
稲田大臣の政界入りは2005年。
保守系弁護士として活動していた稲田大臣に今の安倍総理が目をつけ、2005年の郵政選挙に「刺客」として初出馬した。2014年には異例の若さで自民党政調会長に抜擢され、2012年に第２次安倍内閣で初入閣。昨年８月、防衛相に引き立てられた。まさに政界の"シンデレラ街道"を歩んできた。
テレビ朝日政治部・与党キャップの中丸徹記者は「小泉チルドレンとして出てきたと思われているが、見つけたのは安倍さん。南京大虐殺に関する自民党内の勉強会で話しをする稲田弁護士を見て出馬を薦めた。見出して議員にしたという意味で、まさに安倍さんが生みの親であり、育ての親。特段目をかけているのは間違いない」と話す。
稲田大臣のトレードマークは眼鏡に網タイツ。河崎氏は「キャリアの作り方、外見の作り方の受けがとても良い。すごく物腰が柔らかくて、しかも"メガネっ娘"で、足元もセクシー。受け入れられやすい女性像。ただ実はすごく男性的な考え方の持ち主で、彼女の考え方に100%賛同する女性では少ないのではないか。女性的な殻をかぶった男性。今、そういう人材は特に保守の中で生きていきやすい、キャリアを築いていきやすい」と指摘した。
小池都知事、野田聖子氏、蓮舫氏、丸川珠代氏などとともに、"女性初の総理候補"とも目されてきた稲田大臣。
中丸キャップは「"ポスト安倍"がいない中、安倍さんはあえて稲田さんを防衛大臣にして、期待していたと思う。後継にするためには、実際、ある程度のポストに付けて、なんとなくムードをつくっていかないと行けない。その中で、稲田さんはかなりいいポジションにいた。ただ、最近ちょっと厳しくなってきたという感じがする」と話す。
さらに「早く抜擢されたので目立つし、嫉妬もされやすい。やっかみもあると思うが、自民党内でも"少し早かったのではないか"との見方が出ている。とりあえず今回は謝りましたし、あとは何もない、ということを答弁しながら証明するしか無い。本当に誤認だったのか、それとも籠池の氏側と深い繋がりがあって、それに付いて何かが思われたくないから隠したのか、それがこれから問われる」とした。（AbemaTV/AbemaPrimeより）
